967 弱気 [sage] 2009/09/10(木) 22:46:14 ID:eiuxgKaQ Be:
パソコンを前に私は頭を抱えた。
もうすぐ始まる団体戦。勝算がまったく見出せない。
「加治木先輩っ!」
「モモ、まだ残っていたのか?」
「はい。団体戦…やっぱり難しいっすか?」
気が付けば傍らにモモが立っていた。心配そうに私の顔を覗きこんでいる。
「正直…勝てる気がしないな。」
「先輩…」
「いや、すまない。少し弱気になっていた。」
私が弱気になってどうする?自嘲する私をそっと温もりが包みこんだ。
「弱気になってもいいっすよ。」
トクンと心臓が跳ねた。
鶴賀は弱小校。部の存続すら危うい状況で弱音を吐くなんて事は許されなかった。
「弱気になっても…いいっすよ。」
私の頭を抱えた手に少しだけ力を入れ、モモは繰り返した。
「先輩だって人間っす。苦しかったり辛かったりしたら言ってもいいっすよ?」
不覚にも涙が出そうだった。押さえ込んでいたものが溢れ出てしまいそうだった。
「大丈夫っす!どこが相手でも私がみんな倒しますからっ!」
モモは守ってあげなければ枯れてしまいそうな、まるで屋内の花のようだと思っていた。
しかし、それは私の思い違いだったようだ。
私を見つめるモモの目には何にも負けない強い思いが見えた。
「そうだな、いまの鶴賀にはおまえがいる。」
「せ、せせせせせ先輩っっ!?」
モモの背に腕を回すとモモは少し可哀想なぐらい動揺した。
年上の威厳は取り戻せたようだ。
「先輩、私は…先輩と一緒に…全国に行きたいっす。」
トクンと胸の奥で何かが跳ねた。
「ああ、一緒に全国へ行こう。」
パソコンに向かい直した。もう弱音を吐いてはいられない。
勝つんだ。勝って全国へ…
一緒に行こう。
終
最終更新:2009年09月15日 16:34