===注意書き===

一x透華
エロメインっぽいので苦手な人は注意

===注意書き===





『ブランデーは控えめに』

「んふふ…とーかぁ…」
「ちょ、くっつきすぎですわ、はじめ」

寝室の豪奢なベッドの上でメイド服の国広一にぴったりとくっつかれ、
顔を赤くしてるのはこの部屋の主である ―― 龍門淵透華
ネグリジェの薄い生地越しにその薄い胸を腕に押し付けるはじめの顔もまた赤い。
だがそれは透華の顔を赤く染めているのとはまた違う、別の理由によるものだった。

(まさかはじめがこんなにお酒に弱かったなんてっ!聞いてませんわ!!)

クスクスと笑いながらまとわりつく黒髪の少女を微妙に腕でブロックしながら
透華はそもそもの原因となったブランデー入りの紅茶を恨めしげに眺めた。

***

月の輝く夜、先ほどまで衣と卓を囲んでいた透華は流石に憔悴したような表情で部屋へと戻る。
そう、彼女は先ほどまで衣と麻雀で「遊んで」いた。
麻雀をしようと嬉しそうにねだる衣。
県予選以来、かつてのような打ち方は身を潜め、麻雀を純粋に楽もうとするそんな衣の願いを透華は断れるはずもなく。

「ふぅ、流石に疲れますわね」

シャワーを浴びて、寝巻きに着替えた透華はそう一人ごちる。
学校から帰ってきてすぐに衣の相手を夜まで続けるのは流石の透華といえどきつい。
だが、衣の変化は彼女にとって歓迎すべきもので、そんな生活もそれほど苦ではない。
むしろ心地よい疲労に達成感さえも感じていた。

ふと楽しそうな衣の様子を思い浮かべて暖かい感情が胸に広がり、透華の顔に笑みが浮かんだ。

(さて……久々に就寝前のブランデー入り紅茶でも飲もうかしら?)

全身を浸す疲労の中、透華は先ほどまでの熱戦で高ぶった自分を落ち着けるための就寝前のブランデー入り紅茶を検討する。
紅茶に数滴ブランデーを落とした紅茶は、今のように気分が高ぶったときに透華が好む飲み物だった。
もちろん、父親に知れれば文句のひとつやふたつは言われるのであろうが、彼女につけられた執事のハギヨシは今のところ告げ口のような裏切り行為は働いてはいない。

このままだと目がさえて眠れそうもない、と結論付け気を落ち着けるためのアルコール入りの暖かい紅茶を飲もうと彼女が優秀な執事を呼ぼうとしたとき。
コンコン、とドアをノックする音が響いた。
要求を口にするより早い登場に少し違和感を感じながらも透華はいつものように要望をそっけなく口にする。

「いつものティーセットとブランデーを」

それに答えるようにギィ、と扉を軋ませて現れたのは。

「あ、え、とー…透華お嬢様、ただいまお持ちします」

先ほどまで一緒に麻雀を打っていたメイド姿の国広一だった。





二人分のティーセットに満たされた紅い液体。それを口に運びながら透華はあきれたようにはじめを見る。
はじめの手首にはめられた拘束具の鎖が、彼女自身のティーカップに紅茶を注ぐ時にチャラリとかすかな音を立てた。

「確かに拘束具をはずし忘れたのは悪かったですけど…」
「酷いよ、とーか…服脱ぐときとか結構不便なんだよ、これ」

いつも帰ってきてからはじめの拘束具を外すのは透華の役目だった。
まるで何かの儀式のように、はじめは頑なにこれを透華にしてもらうことに拘る。
いや、これは彼女にとって本当に儀式なのかもしれない。透華と自分の絆を確認するための。

(う…)

そこに思いが至った瞬間、透華の顔に朱がさす。
県予選決勝での出来事。自分と、はじめの絆。
優秀な打ち手としてのはじめに惚れ込み、あんな状態でいるよりもと強引に彼女を自分付のメイドにして二年目。
もちろん、仲間として友人として…彼女の存在は透華にとっても大きなものになっていた。
だが、それだけではない、あの決勝の時の告白めいた…

「ああ、もう!とにかくその拘束具を外しますわよ、はじ…め?」

顔に上った血を冷やすかのごとく頭を振って勢いをつけた透華が見たものは、
紅茶に入れたブランデーで真っ赤になって目をとろんとさせたはじめだった。

***

「とーかの髪、綺麗だね…」
「そ、そそそそうですかしら?」

自分を見つめる濡れた瞳から目をそらし、聞いたこともない声音で自分を褒めるはじめに上の空で疑問を投げかける。
透華にぴったりとくっついたはじめは、彼女の見事な金髪をひと房すくい上げるとゆっくりとその細い器用な指を通す。

「うん、綺麗だよ…とーかの髪、梳かしてるときいつも思ってたんだ。綺麗だなって」
「あ…ぅ…」

いつもの自信に満ちた自分はどこへ行ってしまったのか。
自分よりも小柄なはじめに成すがままにされながらその言葉に透華は呻くことしかできない。
はじめの指が透華の髪の毛を梳くたびに、なにかチリチリとしたものが身体にたまってゆく。

ふと、彼女の耳にすんすん、と何かを嗅ぐような音が聞こえた。

「…っ!な、はじめ!?何を!」

振り向いた先で、透華と目が合うとはじめはにへら、と緩んだ笑みを浮かべた。

「うん、やっぱりとーかは良い匂いだね。どこもかしこも綺麗で、可愛くて、良い匂い。
 肌も、ボクと違って透き通るように白くて…」
「んっ…!」

指が、首筋をゆっくりと撫ぜる。その瞬間、微弱な電撃のような感覚が透華を貫いた。

「は、はじめ、ちょっと酔いすぎですわよ?もう遅いですし、そろそろ…」
「とーか?」

目を覗き込まれる。黒く、濡れたはじめの目。
その奥に光るものに魅入られて透華は一瞬言葉を失った。

「とーかは、ボクの事どう思ってるのかな?」
「…な、何を」
「ボクは、とーかの事好きだよ」

さらりと好意を表明され、透華の心臓が激しく踊る。
衣を前にしたときとは別種の圧力に息苦しくなった透華は、空気を求めるようにひゅうと息を吸い込んだ。

「わ、私も好きですわよ、その、はじめは同じ麻雀…」
「そういうんじゃないって、わかってるよね?」

逃げ道をふさがれた。
はじめの濡れた瞳が揺れ、透華の胸がなぜかきゅうと締め付けられる。

「好きだよ、とーか。ずっと好きだった。
 とーかの強いところも弱いところも、優しいところも怖いところも全部」
 
わずかに身じろぎをしたはじめの動きに伴い鎖がチャラ、と音を立てる。
堪らなく気恥ずかしい。友人として好きかと問われれば、透華はもちろん好きだと答えるだろう。
その好きに恋愛感情が含まれるかといわれれば――そう、今の透華の胸に燃える小さな火は「それ」に他ならない。
いつの間にか自分に好意を寄せるこの小柄な友人を恋愛対象として意識していた自分に、透華は気づいた。

最初は友人としての付き合いだったはずだ。
いや、最近になるまで親しい、それこそ親友と呼べる間柄だと思い込んでいた。
それが変わったのは――いや、気づいてしまったのはいつのことだったろうか。
恐らく決勝でのあのやりとり。はじめらしくなく回りくどい言葉で好意を表明された、あのときから。

だが、それを自覚したからこそ、気恥ずかしい。
思えばこれまで恋愛などに縁も興味もなくただ己の信念に従って生きてきた。
男女問わず告白されることは数あれど、そんなものは鎧袖一触、興味がないと切り捨てていたはずなのに。
いつの間にか、隙を見せなかったはずの自分の心に潜んでいたそれを。
透華は直視することができなかった。

「も、もちろん、私もはじめの事、別に嫌いじゃありませんわよ?」
「……ん、そっか」

つい、とはじめが透華から身体を離す。
その反応に拍子抜けした透華はふぇ?と思わず間抜けな声を出してしまった。

「ごめんね、とーか。なんか変なこと言っちゃって。ボク、酔っ払ってたみたい」

するり、と何か大事なものが指の間からこぼれていく感覚。
熱を失い、微かに震える声。はじめのその声音に透華の頭頂の毛がピン、と逆立つ。
ここ一番で待っている時の様に。不思議な確信を持って牌をツモる時のように。

「待ちなさい、はじめ」

己の感覚に従い、透華は立ち上がろうとしていたはじめの腕を反射的につかんでいた。

「…」
「…」

腕を振り払うわけでもなく、かといって透華と向き合うわけでもなく。
じっと何かを待つようにはじめは動かない。
一呼吸おいた後、透華はぐいっとはじめを引き寄せ、思い切り抱きしめた。

「っ!」
「ごめんなさい。先ほどの言葉は撤回させていただきますわ。
 はじめ、私はあなたのこと…すっ、好き…ですわよ」
「…友達としてじゃなく?」
「と、友達としてじゃなく」
「本当に?」
「本当に、本当ですわ!」

顔が熱い。ふわり、と自分の腰へ柔らかくはじめの腕が回された感触に透華はますます血が頭に上るのを感じる。
はじめの平坦な身体の感触が、あたたかな体温が今は堪らなく透華の心をかき乱す。

「…ボクのこと、置いていったりしない?」
「そんなこと!するわけありませんわ!」

透華の薄い胸に顔を押し付けて、恐らくまだ酔いが回っているであろうはじめが縋るように呟く。

「…じゃあ、とーかとキスしたい」
「もちろん、それくら…キキキキスぅ!?」

思わず力強く頷きそうになり、危うく踏みとどまる。
はじめに濡れたあの瞳で、上目遣いに見上げられて透華の頭の中でぐるぐると色々な考えがめぐり

(はっ、初めてのキスをはじめと!初めてのキスをはじめとっ!……ええい、覚悟をお決めなさいまし)

自分を叱咤して、透華ははじめの顔を両手で挟んだ。
ゆっくりと瞳が閉じられ、目を瞑ったはじめの期待をするような表情。
仄かに朱がさすはじめの顔。半開きになった紅く可愛らしい唇。
透華はごくり、と喉がなるのを自覚する。

「…ん」

そして唇に触れる微かに柔らかい感触。

真っ赤になった透華は、はじめから顔を離す。
刹那の時間、唇同士を軽く合わせただけのキスだというのにはじめの瞳を直視することができない。
興奮で手が震え、鼻息が荒い。
透華の初めてのキスは、微かに紅茶とブランデーの香りがした。

「これで、ボクたち恋人同士、だよね?」

あまりに激しい動悸で、はじめの確認の言葉に透華は微かに頷くことしかできなかった。

「ね、ボク、とーかが欲しい」
「…へ?」

そんな透華の混乱する頭に理解できない言葉がするりと忍び込んできた。

「とーかと、恋人だって証がもっと欲しい。とーかと…したい」

うっとりと呟かれる言葉が徐々に頭の中へ浸透していく。
つまり、それは。

「はははは、はじめ?」
「…うん?」
「私たちはまだ高校生で、その、もちろん欲望としてそのような種類のものがあるのは知ってますけれど、
 でも、告白して、すぐにとか、それはちょっと、早すぎというか…」
「とーかはボクのこと、嫌い?ボクとしたくない?」
「そっ!それとこれとはっ」
「ボクはとーかとしたい。とーかが誰かのものになる前に、ボクのものにしたいよ…」

誰かのものに?そんなことを不安そうな声で搾り出すように呟くはじめに透華は戸惑う。
まるで、大事な人を誰かに取られる、それを恐れるような、声。
もしかしたら、はじめのその不安がアルコールで表に出てこんな…。
透華がそこまで考えたところでカチャリという金属音と生暖かい感触が透華の手首に伝わる。

「…え?」

手首に、はじめがつけていたはずの拘束具がはめられていた。
ぐい、と乱暴に手が後ろに回され器用にもう片方の手首にカチリと拘束具をはめられる。
いつの間にか短い金具で両方の拘束具がつながれ、ちょうど後ろ手に縛られた格好。
バランスを崩した透華は、仰向けにベッドへ倒れこんだ。

「とーか…」
「あ?ええ?」

そして透華にのしかかる小柄な身体。
はじめの星のタトゥーシールをした顔が接近してきて

「んぅっ!」

先ほどとは比べ物にならない強さで二人の唇が合わさった。
カァっと透華の身体が熱くなる。
ぬるり、となにかが唇を割って入ってきて、閉ざされた歯をこじ開けようと先端が隙間を探る。
驚きに微かに開いた透華の歯の間をはじめがゆっくりと入ってきた。

熱情のままに乱暴に蹂躙される口腔。
ひたすら透華の舌や口腔を味わうようにはじめの舌が絡みつき、嘗め回し、突きまわす。
そんな技術もなにもない攻めだというのに、その情熱だけで透華の心が溶けてしまう。

「んっ、んん…ふぅ!」

透華が内にこもる熱から逃げるように身体をくねらせると拘束された両手がカチャカチャと音を立てた。
そんな透華を逃がさないようにはじめはがっちりと抱きしめる。
はじめの舌を伝って生暖かい液体が、透華に注がれる。
びくり、と身体を振るわせるも身動きが取れないまま、はじめの唾液を無抵抗で受け入れ。
そして、透華は蕩けた心で、ゆっくりとそれを嚥下した。

たっぷりと透華を味わった後、はじめは唇を離と、つう、と二人の唇の間に銀の橋が架かった。
ぐったりとした透華にはいつもの表情はなく、柳眉を下げた無防備なその顔は蕩かされた女の顔。

「とーか、かわいいよ」

初めて見せる透華の表情に嬉しそうにはじめが囁く。
そんなはじめの声色に、表情に。透華の胸の奥が疼く。

「は、はじめ…ああっ!」

ちゅっちゅ、と音を立てながら透華の首筋にキスを繰り返され、そこから発生する感覚に悶えながら首を振る。
それを確認したはじめの小さな手が乱れたネグリジェの裾から進入し、柔らかいおなかを撫ぜながらささやかな胸に向かう。

「とーかの肌、白くて、すべすべしてて気持ちいいね…」

耳元ではじめに身体を褒められ、透華の腰の奥の熱がきゅ、となる。
自分の身体の奥からじわりと何かが染み出してくる感覚で透華の興奮がさらに高まっていく。

「ね?して、いいよね?」

はじめの熱を帯びた瞳に見つめられるだけで、心の柔らかい部分が締め付けられる。
愛しい娘の嬉しそうな顔を見たくて。落胆の表情を見たくなくて。

透華は、微かに頷いた。

胸の微かなふくらみに達した指が桜色の頂点を柔らかく弄り回し、同時に首筋への唇の攻めがおこなわれる。
他人から与えられる初めての性感に透華の白い身体が震え、その様子を見て、はじめも足を透華の腿にこすり合わせる。

「とーか…とーか、愛してるよ、とーかっ」
「ん、ふっ…んん、はじめっ…私も、私もっ…」

はじめが名前を呼び、愛を囁きながら身体を摺り寄せて敏感な胸を弄るたびに透華の身体に肉欲だけではない電撃が走る。
自分の気持ちを、相手の気持ちを確かめ合う言葉をうわごとのように連呼する。
そして、首筋を強く吸われて身体をのけぞらした瞬間、透華の胸を弄っていたはじめの指が移動を開始した。

「ひんっ…あ、は、はじめ…」

透華の白い滑らかな肌を、まるでスケート場のようにはじめの指先がゆっくりすべる。
その目指す先を悟った透華は、期待と不安に思わず身じろぎをしてしまう。
はじめに着けられた拘束具がまるで透華の身体に対するはじめの権利を主張するようにチャラチャラと鳴る。

そして慈しむように肌を撫ぜながら降りていった指が金の草むらに達したとき。
反射的に腿を閉じてしまった透華の、想定外の拒絶にはじめの指が戸惑うように停止した。

「…とーか?」
「あ、その…これは」

しどろもどろで言い訳をしようとする透華の視界からはじめの姿が消えた。

「ひゃあ!な、何を…」

ネグリジェをたくし上げられ、スラリと伸びた足の全てをあらわにされる。
不満そうな顔をしたはじめが透華の内腿を刷毛のような指さばきでゆっくりと撫ぜる。
執拗にゆっくりと。まるで寸前で裏切った恋人に抗議でもするかのように。

「は、はじめ?」
「…」

不安そうに透華が問いかけても目が座ったはじめは無言で内腿の柔らかい部分を刺激するだけだ。
はじめの指が肌の上を滑るたびに、透華の身体に熱が溜まっていく。
閉じた太ももをモジモジとすり合わせても、お構いなしにただゆっくりと撫ぜられる。

(うう…)

じっとりと濡れた感覚。
意図せずに反射的に拒絶してしまったのはそこを触られることを、
はしたなく、はじめを求める自分に堪らない羞恥を覚えたから。
だが、それは。

「うう…はじめ、その…」
「なに?とーか」

はじめの平板な声。
じわりじわりとこもる熱に耐え切れずぴたりと閉じていた透華の腿がゆるむ。
だが腿の内側を撫ぜることはあってもその先には決して進まない、はじめの指先。
どうすればその先に進めるのか、透華にはわかっていた。

「ああ…ん、ふぅっ…」

手の平全体で柔らかい肌をさすられるが、きわどい部分までは行くもののそれだけだ。
はじめの手をつかんで熱を持つそこへ導こうにも後ろ手に拘束された腕ではそれも適わない。
既にはしたなく開門した足の付け根が熱を持ってはじめの指を待ちわびているというのに。

(もう…もう、どうにでもなれ、ですわ…)

「はじめ…お願いですから、私のそ、そこをさわってくださいまし…」

顔から火がでるような羞恥のなか、透華ははじめの指をねだる。
そんな透華の様子を見て、はじめの表情はつい幸せそうに崩れてしまう。
羞恥に身を染めた想い人の顔は、自分を欲するおねだりの台詞は…はじめの心を溶かすには十分だった。

「うんっ、頑張って透華のここ、気持ちよくしてあげるね?」

先ほどとはうってかわって子供のようによい笑顔で返事をするはじめに、透華は何もいえずに顔を逸らす。
彼女の身体は出来たばかりの恋人への期待と、羞恥とで仄かなピンクに染まっていた。
そして、湿地帯と化した柔らかく敏感なそこへと触れるはじめの指先。

「わっ、とーか…こんなにボクのこと…感じてくれてたんだね」
「ん、ひぃ…い、言わないでくださいましっ」

ぬちゃぬちゃと響く水音が透華の欲望と羞恥を刺激する。
器用でよく動くはじめの指に翻弄されて、悶えるように欲しがるように腰をゆすってしまう。
そんな恋人の、透華の様子を欲情に潤んだ目でじっと見つめるはじめ。
自分の指で感じてくれている透華の様子だけで、はじめの性感が高まっていくかのように息が乱れ、興奮で顔が紅く染まる。

「ああ…とーか…可愛いよとーか…ボクにとーかの全てを見せて。ボクのものに、なって」
「ひんっ、はじめっ、は、じめっ…あ、ふぁあぁ!」

美しい金髪を振り乱し、快感を訴える恋人に、はじめは指を粘性の液体でぐっしょりと濡らしながら動きを加速させてゆく。
通じた想いを逃がさないとでもいうかのように、激しいタッチで透華の一番敏感な部分を刺激する。
すっかり準備の整っている透華のそこは、はじめの激しい指技を受け止めて白い電撃のような快感を脳に送り込んだ。

「大好きだよ、とーか…」
「あああっ、ああ、あぁぁぁああああっ――!」

はじめの指に腰を震えさせ、奥から蜜を溢れさせた透華は背中をピン、と逸らして
愛しい人から与えられた心の奥まで達する絶頂を思う様に味わった。

***

「…ごめん、透華」

あれから酔いと疲れでぐったりとベッドに突っ伏した二人は寝てしまい、気がつくと朝。
チュンチュンと鳴くスズメの声に目覚めた背中合わせの二人だが、お互いに何を言っていいのやら。
寝る前にはじめが透華の拘束具を外したために腕がしびれるなどの実害はなかったものの
時を刻む時計と、お互いの時折身じろぎをする衣擦れの音にびくつきながら耐えるのも限界に近かった。

朝食の時間が迫っているため、お互いにこのままでいられるはずもない。
そんな中での第一声は、はじめのからの一言。

「その、昨日は…その、とにかくごめん」

自分の、そして恐らく透華の羞恥と後悔を刺激する出来事に触れないよう、言葉を選んで謝罪する。

(ボクの馬鹿っ…なんであんな…透華にあんな…ああ、透華可愛かったなぁってそうじゃなくてっ!)

昨日の、自分がしてしまった狼藉にどうしていいのかわからず、はじめは謝る事しか出来ない。
怖くて、透華の方を向くこともできなかった。あの時、確かに頷いてくれたと、心が通じ合ったと思った夜。
だが一夜明けてみればあれはアルコールと不安で醸造された幻覚かもという思いがどうしても拭いきれなかった。

――もしかしたら透華との関係が終わってしまうかもしれない

そう考えるだけで、はじめの手足が萎え、身震いするような恐怖が身体を駆け巡る。
原因はわかっていた。県予選の副将戦での生で見た透華の原村和への執着。井上の言葉。
そこに加わったはじめてのアルコール。たらす程度なら大丈夫だという透華の言葉に従って飲んでしまったのが失敗だった。

(この若さでお酒で失敗なんて笑えないよ…)

どんよりとした不安に押しつぶされそうになりながら、再び透華の様子を伺うように謝罪の言葉を並べようとしたとき。

「不満ですわね」
「どう謝っていいのかわからないけど…は?」

背中合わせの向うから透華の声が聞こえて来た。透明で力強い――だが微かに震える透華の声。

「はじめ、あなたは私の何ですの?」

ぎくり、とはじめの心に突き刺されるような痛みが走る。
二度と顔を見たくない、などといわれる可能性を想い、「手品」をしたときも震えたことのない手が震える。

「メ、メイド…かな?」
「違いますわ」
「じゃ、じゃあ友達?」
「友達でもありますけど、そうじゃないでしょう?」
「え…あ、でも…」

とりあえず友達から降格されなかったことにほっと胸を撫で下ろしながら次の言葉を捜す。
透華は何を言いたいのだろう?はじめは自分の心の片隅で膨らむありえない希望を押し殺しながら考える。
そこに、透華のイライラとした言葉が割り込んできた。

「あなたは!私の!こ、こここ恋人、でしょう!」
「っ!」

恋人、で盛大にどもる透華の言葉に息が出来なくなる。

「初めての夜を…共に…その、ごにょごにょ…とにかく!もっとシャンとなさい!」
「透華…」

恐る恐る振り向いたはじめの目の前にはシーツを身体に巻きつけ、怒っているかのように顔を真っ赤にした透華がいた。
その姿に、はじめはたとえようもない美しさと愛おしさを感じる。

「…綺麗」
「なぁ―っ!いきなり何を仰いますの!!」

ピンと頭頂の毛を立てて動揺する透華にはじめはクスリと笑う。

そのままはじめはクスクスと笑っていたが、憮然とした表情で自分を見下ろす透華に気づいて身を起こした。

「ふふ、ありがとう透華、大好きだよ」
「ふんっ、あんなメソメソされたらまるで私が悪いことをしたみたいですもの」

気丈に振舞うためにわざと強い言葉を使う、そんな透華の心の動きは、はじめには表情でバレバレだった。
先ほどまで沈んでいた心が嘘のように軽い。むしろふわふわと舞い上がるような心地に現金なものだな、とはじめは思う。
こんな心境になったからか、寝具から香る透華の微かな香りに気づき心がざわめいてしまう。
はじめは、そんな心の動きを振り切るようにベッドから降りようとして。

「もうそろそろ朝食の準備しなきゃ…ごめん透華、先に…」

行くね、という言葉はそのまま透華の唇に吸われて消えた。
昨晩、はじめからしたような情熱的な激しいキス。

「…………ぷぁ!行ってらっしゃいまし、はじめ」
「…うん」

呆然と呟く。

「ああそれと。私、攻められっぱなしは性に合いませんの」

そう言って振り返りもせずに身支度をするためにベッドを降りる透華。
首筋まで真っ赤に染まって言い放ったその台詞の意味を想い、はじめも頭に血が上ってしまう。

(まいったな…シャワー浴びて収まってくれるといいけど)

火照る身体をもてあましつつ、昨晩の行為で散らかった透華の部屋を手早く簡単に片付ける。
朝食時に透華と視線を合わせるのはなるべく避けよう。なにしろ透華の父親も同席してるのだから。
そう決心をしながら、はじめは身支度をするべく足早に自分の部屋へと向かった。

END…といいつつ「練習は控えめに」へちょっとだけ続いたり続かなかったり

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2010年11月12日 15:26