632 :名無しさん@秘密の花園:2009/08/23(日) 21:44:36 ID:Mv25Wtr2


突発かじゅモモSS
時間軸は県予選決勝前夜。アニメでちょこっと映ったやつの捏造






緊張してあまり眠れなかった。明日の戦いもあるが、それよりも先ほどの事が脳裏に蘇り、ひとり赤面してしまう。


-数時間前-


家から少し離れている公園のすぐそばの、町を一望できる場所。
なかなか寝付けず、散歩がてら歩いていたらいつの間にかそこまで来ていて。そしたら偶然ひとりで町を眺めている先輩を見かけた。
少しだけ歩み寄ってみる。

「明日の相手は強い。多分我々鶴賀は苦戦するだろう。
いや、心配するな…諦めてるわけじゃない。もしも前半で、接戦を維持して後半に持ち込めれば……」

不意に先輩は振り返り、しっかりこっちを見て話しかけてきた。

「明日の勝負は、副将大将戦だ」
「先輩…」
「こんな時間にどうした?」

もう日は落ちていて周りは暗いというのに、先輩は私の事が見えているみたいだ。…すごく嬉しい。

「眠る気分になれなくて…ちょっと散歩っす」
「そうか。…明日は、頼んだぞ」
「はい!」
「帰ったら早めに寝ろよ?」
「先輩こそ、こんな時間まで外にいたくせに」




「……モモ」

「はい?」







ちゃんと、君を見てるから。





「----……!!」





そう言って私の片手を取り、ぎゅっと握ってくれる。


先輩、それ殺し文句っすよ?


血液が顔に集中するのが分かる。多分今、すっごく赤くなっているんだろうなぁ…。
先輩の手に、もう片方の自分の手を添える。

「先輩…、私、絶対勝ちます!絶対に全国へ行くっすよ!」
「ハハッ、頼もしいな」

だってそれが私から先輩への、唯一の恩返しっすから。

こんな自分に価値を見いだしてくれた、初めての人っすから。

だから明日も、この"能力"をフルに使って、大将のあなたに、大切なあなたに繋ぎます。そのために、頑張るっす!


「……なぁ、モモ」
「何っすか?」

珍しく先輩が気恥ずかしそうに口ごもる。そんな先輩も愛しいと思ってしまう自分は末期なのだろうか。

「まぁ、なんだ…その……明日の試合の休憩時間、必ず行くから。だからモモ、お前も…私の試合の休憩時間、来てくれないか?」
「休憩時間っすか?」
「ああ。モモの笑顔を見ることができれば、声を聞くことができれば、どれだけ点差をつけられていても立ち直れる気がするんだ」
「そ…っ、そんな…大げさっすょ……」

また、赤くなった。語尾が小さくなっていくのが自分でも分かる。こんな状態で帰って寝れるかなぁなんて冷静に頭の片隅で考える。

先輩はすごい人だ。私の中で常識だったことを次々と覆していく。
先輩が私を求めてくれた日から今に至るまで、初めてのことだらけ。誰かと一緒に出掛けるのも、誰かをこんなに好きになるのも、他にもいっぱい。



「……さ、そろそろ帰らないと、明日に響くぞ」
「あっ先輩!」
「ん?」






特に話す内容もないのに呼び止めてしまった。


「どうかしたか?」


目の前に端正な先輩の顔。思わず見惚れてしまう。
そうしていると先輩の声が段々遠くに聞こえる。その分、自分の鼓動がやたら煩く思えた。


-体は無意識に動いていた。


「……っ」


漸く触れられた場所。
先輩の方が私より背が高いから、ちょっとだけ背伸びして。


そっと触れるだけの接吻け。唇を離すと、驚いた顔の先輩。我に返ったのは事が終わったあとだった。


「っ……先輩………」

「…………」


何も、喋らない。
先輩に嫌われてしまったのではという焦燥と後悔の念だけが胸の内を取り巻く。
このままここに居たら泣いてしまいそう…。
居たたまれなくなり、卑怯だと分かっていても先輩に背を向け走り去ろうとする。でも、それは叶わなかった。


私の肩を掴んで向き直させる先輩。
近づく先輩の顔。自然に目を瞑る。


「……っん…」



今度は、先輩から。



「っ、は、…ん……」



強張った私の体と心を融かすように繰り返される優しいキス。
知らないうちに私は先輩の背中に両手を回していた。


名残惜しくも離れ、お互い無言で見つめ合う。今なら、言える気がしたから。







「モモ、私は「先輩。大好きっす」


先輩の言葉を遮って、私の心からの気持ちを繕いの無い笑顔を以て伝える。…不思議なことに緊張はしなかった。


「明日の戦いが終わったら……」
「モモ……?」
「お先に失礼します」


ステルスモードに入り、先の言葉を濁して誤魔化した。
それから逃げるように背を向けて、先輩を残したまま足早に家に帰ってしまった。






「…。先を越されてしまったな……」






******


ベッドに寝転がり、まだ微かに熱が残る唇にそっと指を這わせる。





先輩はどうしてあんなことをしたんすか?

先輩も同じ気持ちでいてくれてるんすかね?

自惚れちゃっても、いいんすかね。



(今度はちゃんとした言葉で伝えよう…)






『明日の戦いが終わったら…答え、聞かせてくださいね?』









以上。ボキャ貧ですみませそ_| ̄|○
アニメ見返してたら妄想が捗る捗る…

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2009年08月26日 15:45