546 :名無しさん@秘密の花園:2009/08/20(木) 21:57:35 ID:31TS7WBY
かじゅもも。地味に無駄で長い。意味がわからない。かじゅが変態。
このアレな三本柱ですがすみません。

月に1度か2度。最近では毎週のことのようになっていたかもしれないが、いつの間にか、週末に彼女が家に泊まりにくることは当たり前になっていた。
なにをするわけでもない。ただただ時を共に過ごすだけ。
部活が終わったら一緒に帰って、買い物に行って、夕食をとる。
それ以外はまちまちだが、だいたいは部活のことを話したり、テレビを観たり。あぁ、DVDを借りることもあった。
そしてお風呂に入って床につく。毎回毎回変わり映えのしないことだったが、それでも私には随分と幸せなことに思えた。

今週の授業は全て終わり、本日は部活も休み。
もちろん今日も例に漏れず、彼女が泊まりにくることとなったわけだ。
いつも使っている学生用のカバンの他に小さな袋が一つ。もう見慣れた、彼女のお泊まりセット。
初めてのときは随分と大荷物だったのだけれど、最近はあらかたの日用品が私の家にそろっているため、ほとんど手ぶらである。
初めてこのお泊まりをおこなった日は、彼女はそれはもう立派なカバンをもう一つ持ってやってきたものだから、
蒲原のヤツがいらぬことに気がついて、いつもとは違うニヤニヤ笑いで頑張れよと声をかけてくる始末だった。
翌日の部活のときに、コンビニで買ったお赤飯をそっと渡してきた蒲原は、大きなたんこぶをこさえることになったんだったな。

第一それは少し違うだろうに!!ユミちんも大人になったんだね…となにやらいい
顔で語る蒲原の頭に拳骨を振りおろしても、バチはあたらないだろう?
だってほら、まず私は疚しいことなどこれっぽっちもしてはいないのだから。
したことといえばそれこそ口付けを交わすことと、抱き締めた程度で、所謂プラトニックな関係だといっても差し支えはないだろう。
いや、正確な意味ではそれもプラトニックとは言えないのかもしれないけれど…。
それでも現代という時世に合わせたなら、十分どころか十二分ではないだろうか?

彼女の家へと帰る道と私の家へ帰る道は正反対だ。
だからこそ彼女はお泊まりのときには最初から荷物を持ってくるようにしている。
私は通学には自転車を用いているのだが、モモはもちろん電車通学。
いくら田舎だといっても車が普及していないわけもなく、
極端に陰の薄い彼女がもし自転車で通学しようものならば、人よりは何倍も事故にあう確率が高いからだ。

つまり、彼女には私の家にくるあしがない。だから仕方のないことなのだ。
校則違反どころか法規すら破っているが、二人乗り。
幸いなことに今度は彼女の陰の薄さが功を奏して、それは誰にも気づかれない。端から見ればそれはもう確かに一人乗り。

けれど私は知っている。私だけは知っている。
背中に触れる彼女の柔らかさも、腰にまわる彼女の腕の暖かさも。
誰にも見えはしないのに、誰にも気づかれはしないのに、それでも彼女そのものが私の胸の鼓動を加速させる。
モモは暖かいな、と微笑みながら告げると、抱きしめられる力が少しだけ強くな
って、私の心臓はまた一つ大きくアクセルを踏み込んだよう。
ギュッと締め付けられるような甘酸っぱい痛みを消すために、私は自転車は加速させるのだった。


タイヤのゴムとアスファルトが擦れる独特な音が響く。
止まった場所はどこにでもあるようなスーパーマーケット。
この県内でも多少栄えた地域ならば、全国チェーンの大型量販店が進出して、この手のスーパーは寂れてしまうこともあるらしい。
けれど生憎なことに、もしかしたら幸いなことに、この地域は多少すらも栄えていないためかそういった被害にはあっていない。
もう少し時間がたてば、それこそ夕刻となれば夕食の買い出しにくる主婦でごった返すのだろうが、今はまだ人影もまばら。
ここは私の家からはさして遠くない位置にあるのだけれど、できるだけ二人きりで過ごしたいから買い物は帰りにすますこととしている。
それを彼女に伝えたことはないけれど。

ウィーンという機械的な音をもって自動ドアが開く。
店内のひんやりとた空気が心地よくて、思わず息をのんだ。
暦のうえではもう既に秋。それでもまだまだ残暑は厳しくて、汗をかいていたようだ。

今夜のメニューはどうしようか。
いつもは部活中に暇を見つけてある程度決めておいてしまうのだが、生憎今日は休みだったからなにも決まっていない。

「モモはなにか食べたいものはあるか?」

しかたなしに意見を求めた。
こういうときに自分だけで考えていいアイデアがでたためしがない。
極端に言ってしまえば、自分だけならなにを食べようが気にしないのだ。
なのに彼女との食事というだけで、とたんにどうすればいいか分からなくなってしまう。

「うーん…なんでもいいっす。私は加治木先輩が喜んでくれるならなんでも作るっすよ?」

作る。そう、‘作る’なのだ。
いつの間にか…いや、それどころかお泊まりをするようになってかなり最初のほうから、料理は彼女の担当となっていた。
私とて高校に入ってから自炊をしているのだから、料理がまるでできないわけではない。
むしろそれなりにできるほうだという自負があった。
けれど、あの初めてのお泊まりの日。気合いをいれて彼女を驚かせてやろうと目論んでいたのだが、
彼女を前にしたらなにをしていいのかが急に分からなくなってしまったのだ。
気がついたら、淡い桃色のエプロンに身を包んだ彼女がせっせと料理を運んでいた。
情けなさすぎて、今思い出しても顔から火がでそうだ。
それ以来、私たちの間では彼女が夕食を作るという暗黙のルールができあがっていた。

彼女の料理の腕は確かだ。彼女がつくるものならば私はなんでもいい。
だから意見などとっさにはでてこなくて、まずは適当に店内を見て回ることにした。



野菜、鮮魚、精肉と一通りコーナーを見て回る。
なんでもない。本当になんでもないことなのに、繋いだ手の先の彼女の笑顔を見ているだけで幸せだった。
明日の朝食用に塩鮭の切り身と味噌汁用の具材をカゴにいれる。
はてさて、夕食はどうしようか。
鶏の胸肉が安いか。唐揚げ?照り焼きにしてもいい。
冷蔵庫にキャベツがあったから付け合わせはそれを千切りにすればいいとして…。

「モモ。唐揚げと照り焼きのどちらがいい?」
「そうっすねー。照り焼きにしましょうか。」

まだ少し暑いから揚げ物は少しキツいっすから、と彼女は続けた。
確かにそうだな。それに油がはねたら危ない。
カゴに鶏肉を詰めるとさっさと会計を済ます。
支払いをするために手を離すのがなんだか名残惜しかった。

自転車のカゴに買ってきたものを詰め込むと、二人並んでてくてくと歩く。
もう家までは歩いていける距離だし、それなりに荷物も持っている。
無理に二人乗りをしてモモに怪我をさせるわけにはいかないし、歩くことも悪くはない。
ただ、自転車をひいていては手を繋ぐこともできないことだけが、ほんの少しだけ寂しかった。

そうこうしているうちに家についてしまう。
駐輪場に自転車を止めて、エレベーターに乗ればもう到着。
鍵を差し込むとガチャリと音がして扉が開き、ホッと息をはいた。
週末の分も食料を買ってきたため、袋は随分と重かった。
荷物を置いて手を洗い、部屋着に着替えると、そのまま米をといでしまう。

「暑かっただろう?一度シャワーを浴びるか?」

そう言いながらバスタオルの用意だけはしておく。

「少し汗かいちゃったっすからねー。シャワー借りるっす。あっ!先輩も一緒に入るっすか?」

モモがニヤニヤと私を誘うのもいつものこと。
馬鹿の一つ覚えみたいに恥ずかしさで顔を真っ赤にするのも能がない。
それになにより意気地なしのようになるのは悔しかった。だから…

「そうだな。確かに個別に入るよりもその方が時間もかからないだろう。もしかしたらよほど時間のかかることになるかもしれんがな?」

ニヤリとした笑みを湛えながらそう告げる。
今回ばかりは恥ずかしさで俯くのはモモの番だ。
案の定彼女は白い肌を朱に染めて、まるで熟れたリンゴのよう。
いや、桃色に染まっていると言うべきかな?
しかし、耳まで真っ赤にしてしまっている彼女を見たらさすがに可哀想に思えてきて、そろそろ冗談だと告げてやろうという気持ちにもなってくる。
けれど、それを口にしようとした瞬間、ちょうど言葉を遮られた。

「よ、よろしくおねがいするっす!!」

それはもう精一杯。
不安と緊張で顔を真っ赤に染め上げての言葉に、今さら冗談だったなどと言えるわけもなかった。

--------


なにをしたらいいか分からない。
共に脱衣をすることはどうしても恥ずかしかったから、私が先にシャワーを浴びて待っていることとなった。
けれど本当にどうしたらいいか分からないのだ。
脱衣所からは衣擦れの音が聞こえてくる。ふと覗くと肌の色が見えてしまって、身体中の血液が沸騰してしまったような気さえする。
もしかしたらしっかりバスタオルで身体を包んでくるべきだったのだろうか?
そうすることも自意識過剰であるかのように思えて、身体の前面がなんとか隠せる程度のハンドタオルしか持ってこなかったことを今さらながらに後悔した。

「失礼するっす。えっ!?つ、冷たいっす!!」

もうなにも考えられなくて、血がのぼった頭を冷やそうと修行僧のごとく冷水をかぶっていると、いつの間にやらモモが入ってきたようだった。

「あぁすまないすまな…」

息を呑んだ。蛇口をひねって水を止めながらモモを見ると、私の視界は圧倒的な白に埋め尽くされたから。
とっさに目をそらしたけれど、それでも私の目はしっかりと彼女の意外とふくよかな胸やら腰回りやらを捉えていて、
私の胸はざわざわと言い表せないような感情に襲われる。
バスタオル…少なくとも私と同じくハンドタオルで少しは身体を隠してくるだろうという考えが甘かった。
タオルは持っているものの、手にかけているだけ。
一糸纏わぬ彼女の肌は、月並みな言い方かもしれないが雪のように白くて吸い込まれそうだ。

「変っすか…?」

怯えたような声。見られることを知らない彼女。
決して見失わないと約束したのに目をそらしてしまった。不安にさせてしまった。
私はバカなんじゃないか…。

「いや、すまない。私にはキミが少し魅力的すぎたから。」

恥ずかしくて、それと少しだけ疚しい気持ちもあったけれど、だからこそ正直な言葉を紡いだ。

「先輩大好きっすー!!」
「やっ、やめろー!!本当に今はマズい!!」

けどこれもまた正直な気持ち。私には流れに身を委ねる勇気もない。
心臓が別個の生物であるみたいに激しく暴れて、頭の中が沸騰してしまいそうだった。

触れる彼女の全てが、柔らかくて暖かくて。
ダメだ…。お願いだ。私の手が伸びきってキミに届いてしまう前に、どうか私から離れてくれ。
溢れ出した劣情に身を任せることも、それを抑え込むこともできない情けない私は、知らぬ間に意識を手放していた。

ーーーーーーーー


柔らかい柔らかい。なにか雲にでも包まれているような不思議な暖かさ。
夢現。瞼は泥のように重かったけれど、なんとか持ち上げると、ムッとした顔と目があった。
スッと血の気がひいて、背筋が寒くなる。

「おはよーございます、先輩。」

いつもならば花が咲くような明るい声なのに、聞こえてきたそれは抑揚を全く感じさせないヒドく静かなもの。
ひしひしと、空間に穴があくんじゃないか心配になるような目に見えない圧力がかかった。

「怒っているのか…?」
「先輩のバカ。キライっす。」

そう言ってモモはぷいと顔をそらす。

「すまないな。けれど嫌いになったというのは本当か?そんなことを言われたら私はヒドく悲しいのだが。」

手を伸ばして彼女の頬に触れた。
そのままくいと顔をこちらに向けさせる。
少しだけ抵抗があったが、小さな声でモモと呼び掛けると諦めたように大人しくなった。

「なぁ…本当に嫌いか?」
「先輩は卑怯っす。嫌いになんかなれる訳がないじゃないっすか。」

知っている。キミが私を好いていてくれることも私が卑怯だということも。
だから、せめて謝りたくて…それでもそんな謝罪も無粋に思えたから、代わりにまだ湿っぽい彼女の髪を撫でた。

「まぁ、先輩の身体も堪能できたし許してあげるっす!!でも今回だけっすよ?」

ありがとう。臆病で卑怯な私は口にだして伝えたほとんどないけれど、私はやはりキミがいないとダメなんだ…。
そこではたと気づいた。今モモはなんと言ったのだったろうか?
聞き捨てならない言葉を告げられたことに気がつけば、まるで糸がほどけるように次々と答えがでる。
どうして私はモモに膝枕されているのか。
どうしてモモの頬がいつもよりずっと真っ赤なのか。
そして、どうして風呂場で倒れた私が下着やらを身につけているのか。
カッと頬が熱くなって、思わず身体を隠した。

「なぁモモ?どうして私はこんな状況なんだ?」

恐る恐る口にだしたその問いに、彼女の頬がニタリとつりあがった。

「先輩のお肌はすべすべで柔らかくて、本能と戦うのが大変だったっすよ。」

モモ…それは会話が成立していない。
なにがあったのかを問うているんだ私は。
嫌な予感しかしなくて、私は思わず顔をひきつらせた。

「身体を拭くときの先輩ったら、ぴくぴくしちゃって可愛いったらなかったっす!!」

ボッと顔から火がでたような気がした。
ぐいっと親指をたてて、嬉しそうに報告をするな!!
虚空にむかってなにか思い出すように撫で撫でとジェスチャーをする彼女を見ていると頭が痛くなった。

「もう生きていけない…。」

大袈裟なことじゃない。
確かに、いつかはモモとそういった行為をするのだろうという漠然とした思いはあったから、身体を見られることを考えたことがなかったわけではない。
けれど、これはあまりにも不意打ちだ。意識のないうちに、それはもう身体の隅々まで拭かれてしまった。
恥ずかしくて情けなくて、涙がでてしまいそうだ。
それに……………。


「そんなこと言わないでほしいっす!!わっ、私がお嫁さんにもらってあげるっすから!!」

ぴくりと眉が反応した。お嫁さん…私が?

「モモ。そんなことはお断りだ!!お嫁さんになるのはキミだ!!」

それだけは絶対に譲れない。私だってもう我慢の限界なのだ。
どうしようもなく悲しくて情けないのは、なにも裸を見られたからだけではない。
もう格好をつけるのはやめだ。そんなの理由は決まっているじゃないか。
本当のことを言えば、私だって…私だって!!そう…

「私だってモモに色々としたいんだ!!なのにキミばかり…私は恥ずかし損じゃないか!!私もモモに恥ずかしいことがしたいんだ!!」

されるがままではいたくない。
格好をつけたくて、それに勇気もなくて、触れる彼女を傷つけたくなくて…。
だからなにもしなかった。けれど、私にも疚しい感情はあるのだ。
モモに触れたい。モモの特別になりたい。
大好きなのだ。健全な高校生である私がモモに対してそういった感情を抱かないわけがなかった。

「ほんとっすか?」

少し震えた怯えるような声。今更になってなんてことを言ってしまったのだろうと後悔した。
嫌われた。格好悪いし情けない。こんな主張をどうしてしてしまったんだ。

「すまないモモ…変なことを言った。忘れてくれ。」
「嫌ッす!!だって私怖かった。先輩は何度隣で眠っても何もしてくれない。キスから先は禁忌みたいに決して触れなかったっすから。
だから、もしかしたら私には魅力なんてないんじゃないかとか疚しい想いを抱えてるのは私だけなんじゃないかと思って不安だったっす…。」

嘘じゃないんでしょう?なら本当の気持ちをぶつけてほしいっす。そう付け足して締められた彼女の言葉は紛れもなく懇願だった。
悩んでいたのは私だけじゃなくて彼女も。互いに子供で、自分だけが変なんじゃないかと思っていた。
けれどそんなわけないのだ。私はモモが好きで。彼女も私を好いてくれる。
一方通行じゃないのに向き合うことを怖がるなどばかげたことだったのだ。

「ならば決めた。今夜私は君を抱こう。」

その前に夕食を済ませて心を決めようか。
そんなへたれた言葉で締めてしまったけれど、覚悟は本当。覚悟というよりもただの欲望なのだけれど。
彼女も、じゃあ腕によりをかけちゃうっすからね、とニコリと笑った。
こんな風でいい。格好は良くないかもしれないけれど私たちのペースで進めばいい。
モモの唇に軽く口付けると、私は笑みを浮かべる。
夜はまだ始まったばかり。いつもと違うこともいいけれど、いつも通りも十分に私には幸せなのだ。
愛している。普段言わないそれを彼女の耳元で囁くと、私は彼女をギュッと抱きしめた。

Fin.


別の作品で誕生日ネタを書こうと思ったら、咲は誕生日設定がないことに気付いた。
アニメから、衣は4月生まれだったりしそうですが、ファンブックで公開されるとネタになって嬉しいですよね。

そういえばいままで投下した作品に無題が多いのですが、今度投下するときに連絡しておいたらウィキを更新している人はきづいてくれるのだろうか。

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最終更新:2009年08月22日 15:15