30 :名無しさん@秘密の花園:2009/08/11(火) 12:58:33 ID:P9DoS4jy
大将戦終わったばかりだが関係なく
1年前の池田×キャプテンを書いてみた。
無駄に長いかもしれん


別に、福路美穂子という人物自体をどうこうしたいとか思わなかった。

風越麻雀部の福路、といえば入学前から私達の間で有名だったし
いわゆる女子校ならではの伝聞で格好の餌食とされていた印象が強い気がする。

えげつない打ち方をする。人の彼氏を盗る。すぐ泣いてウザイ。

今時そんな嫌な奴いんのかよだし・・・とか思って少し憂鬱な気持ちで
麻雀部の新入生オリエンテーションに向かったのを覚えている。
このあと、あたしは福路美穂子はそれ故に噂話の餌食だったことを
認識することになるけど。

どことなく女子高生らしからぬ落ち着きと
優しい雰囲気で1年生からすぐに人気者となった先輩。
おまけにこんなに綺麗な容姿をしている。

仲良くなりたいと思った。
いつもの図々しさをもって軽い気持ちで、そう軽い気持ちで声をかけた。

・・・いや、違うかも。

今ならわかる。

あの時、あたしはこの名門と呼ばれる風越で2位になれたことを、
福路美穂子に近くに居れる正当なる理由を手に入れたことを
確かに、とても嬉しがってたんだ。




***


「気にすることないわ」

福路先輩は穏やかに笑うとよしよしとあたしの頭を撫でてくれた。
優しい感触が髪を流れていく。
自分はすぐこの手に甘えてしまうのもわかっていた。

「福路先輩・・・あはは。大丈夫です。別に気にしてないし」

はあっと溜息を吐いて、しまったと思った。
先輩が、左の茶色い瞳を瞬かせていたから。

「華菜はわかりやすいのね」
ふっと笑うと先輩は丁寧にスカートをはらいながら、私の隣に腰かけた。

「また何か背負い込もうとしてる」

福路先輩の穏やかな表情を見ていると
さっきコーチから怒鳴られた事や周りの視線を思い出して泣きたくなった。
こんなみじめな自分を見られたくなかったという苛立ちと
すべて話して同情してもらいたい気持ちが織り交じる。
そして私は必ず後者をとる。
先輩の感触が心地いいから。情けないと思いながら。



「・・・コーチは・・・私が嫌いになっちゃったのかもしれません。
最近厳しいっていうより冷たいし。みはるんが負けた時と対応違いすぎるし」

麻雀部の久保貴子は鬼コーチで有名だった。風越女子は推薦枠をとるほど
麻雀に力を入れていて、県大会優勝の常連だからある程度覚悟はしていた。
自分や福路先輩に時にきつい課題を与えたり、他の部員より厳しくあたるのも
レギュラーだからかと思っていたけど。

「なんかもうイラナイって言われてる気がするし」
華菜ちゃん本気で落ち込むし。せっかく大型ルーキーで入ったってのに。

ぎゅっと拳を握りしめた。
天江衣に振り込んだあの時の自分を呪う。
すべてはあそこで途絶えてしまった。風越の伝統も、みんなの信頼も。

先輩は考え込む素振りをしてややあっと顔を向けた。




「違うのよ、華菜。あの人は・・・そうね、いわば好きなのかもしれないわ」
「え・・・好き?」
「ええ。好きというか・・嫉妬と期待と、色んなものが混じってるかもしれないわね。
華菜が強いから」
「強くないですよ。実際3年生の先輩達とかみんなで色々言ってるの知ってます」

例えば『あの時、福路が大将だったら』とか。
そんなこと言ったら困らせるから言えないけど。

「でもその中であなたより強い人はきっといない」
「・・・」
知ってる。私がどんなに頑張っても勝てないのは福路先輩ただ1人だけ。
本当に1人だけ。

「みんな嫉妬しているのよ、大会の後もちゃんと部活にきて強さを維持するあなたに」
だから―――



そう続けようとした先輩は、はっとして右目を覆った。
綺麗な顔がさっと暗くなり俯く。
その仕草で自分が先輩の顔をじっと覗き込んでいることに気づいた。

「あっ!す、すいません」
「・・・えっと、最近コンタクトが合わないの」

先輩のポーチに数個のワンデーのカラコンが入ってるのを知っているのは
多分私だけ。
右瞼の奥に潜む水晶体を先輩は左目と色が違うという理由で嫌う。

もとよりどうより先輩はコンタクトをしても昔からの癖で目を閉じてしまうようで
あまり意味を成しているとは思えなかった。

「隠さなくていいのに」
聞こえないくらい小さく言ってみる。
先輩は目の事をいうと少し自信なさげになるから容易に励ますことも出来なかった。



「華菜、とにかく元気をだして。コーチもわかっているわ。大丈夫」
焦ったようににっこりと笑って私の頭を包んでくれる。
顔の上にある真っ白な頬が少し紅潮していた。いつものような暖かさが心に広がっていく。
私は目を閉じた。

つい最近自分の家に来た時の先輩を思い出す。

綺麗な青い目を一瞬だけ見せてくれた。全然変なんかじゃない、先輩の透き通った瞳。
強者と対戦したときにしか見えないその宝石。

そう・・・あたしは純粋に尊敬している。憧れている。
機械がてんでダメで、お節介な・・・
だからこそウザがられて、でもそのくらい他人に優しい福路先輩。


だけどその時、頭をいっぱいにさせたのは先輩の小さく動くピンク色の口元と
こぼれるほど柔らかい胸の感触だった。

暖かいその質感強く感じながら
はあっと今度は、先輩に気づかれないように微かに微かに息を吐いた。


「先輩、私以外に・・・」
こういうことしないでください。
「え?」
「・・・いえ、ありがとうございます」
先輩は首を傾げるとふっとまた穏やかに笑った。
心臓が軋むように危ない音を立てる。

ああ・・・華菜ちゃんやっぱりそっち系だったし・・・

「華菜」
でもいいや
「なんですか?」
麻雀続けていればずっと先輩の近くにいれるし
「にゃーって鳴いて」
まだ、2年もあるし
「そんな喉くすぐるぐらいじゃ無理です」
そう、まだ・・・
「ふふ、華菜のいじわる」
先輩、あたしが強くなるの、見てて下さい。


そのときはきっと言えるから。


以上。
普通に短かった。
池キャプ愛しいぜ

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最終更新:2009年08月11日 16:44