806 :名無しさん@秘密の花園:2009/08/07(金) 15:33:31 ID:7rjKnorU

 頻繁すぎますが、またssを投下。

 何を書きたかったのか、良く分からなくなった、少々失礼な話。

 一応、メインは鶴賀のカマボコさんのつもりです。




「……おっぱいちっちゃいじぇ」

 これが、全ての始まりとも呼べる爆弾だった。



 私こと、この場に不運にも居合わせてしまった風越女子二年、吉留未春は、瞬間、手にしていた皆の分の缶ジュースを不注意にも落としてしまった。

 カランカランカラン。

 乾いた音を挟んで、相対するのは清澄高校と鶴賀学園。
 それは、ごくごく普通の、ありふれた接触事故から始まった。

 清澄高校の、確か片岡さんという方が、はしゃいで走っていた先にいた、鶴賀の一人にぶつかってしまい、片岡さんとぶつかった方、蒲原さんと弾かれてお互い尻餅をついた所だった。
 そこまでは、良くはないけど良かった。

「優希!?」
「優希ちゃん、大丈夫?!」
「おい、何やってるんだよお前」
「あちゃあ、しょうがないのう……」
「ちょっと……? しょうがないわね。すいません、大丈夫ですか?」

 清澄の面々が、床で「ふあぁ……?」と目を回す彼女を心配して駆け寄り、部長の竹井さんが、頬を掻きながらも頭を下げていた。

「智美ちゃん!? だ、大丈夫ですか?」
「み、鳩尾に入ってましたよね、今の?」
「うわぁ、痛そうっす」
「蒲原、立てるか?」

 敦賀の面々も、お腹をおさえて「う、おぉ……?」とへたり込む蒲原さんに駆け寄り、心配そうに背中を撫でていたりする。
 その中で、大将だった加治木さんが、竹井さんの謝罪を受け取り、軽い注意を促して、ようやく痛みから脱出した蒲原さんに手を貸そうと肩に手を置いた。

 そこで。

「おっぱいちっちゃいじぇ」

 が、きた。


「…………………………」


 何とも言えない、重い沈黙。
 ただ通り縋った私すら凍らせる、ぴんと張り詰めた空間。

「……すまないが、清澄の、片岡と言ったか? 何だって?」
「むぅ、だから、この人おっぱいちっちゃすぎだじぇ! あーもう、鼻がひりひりするんだじょ!」

 真っ赤な鼻を押さえて、蒲原さんを涙目で指さすこの子は、相当にお鼻がツーンとしたらしくて、そもそもの原因がはしゃいでいた自分だという事が頭からすっぽり抜けてしまっているらしい。
 これには、鶴賀の面々の表情が強張り、清澄の方々は一斉に狼狽していた。





「優希、失礼すぎます!」
「だ、だって、のどちゃんのおっぱいが凄すぎるんだじぇ!」
「ゆ、優希ちゃん、いくら何でも、ここで原村さんと比べるのは、その」
「だって鼻が、ココがめちゃくちゃに痛いんだじょ!」
「って言っても、ぶつかったお前が悪いんだろうが、とっとと謝れ」
「いーやーだーじぇー」

 ギャイギャイと、一年三人で失礼な発言を撤回させようと頑張るが、彼女の頭には血が昇りきっているようで、まったく聞く耳がない。
 上級生二人が頭を下げているが、敦賀の面々も、自分たちの部長が不当に罵倒されたという事実には我慢がならないようで、どんどん険悪な雰囲気になっていく。

 ……まあ、内もキャプテンがあんな風に罵倒されたら、多分我慢できないだろうから、気持ちはわかるのだけど。
 でも、それでも両者の空気が、ぐんぐん冷たくなっていくのはオロオロしてしまう。

 そして、当の罵倒された本人は「むぅ?」と、ぺたぺたと自分の胸を触って、比較された原村さんの胸と自分の胸を見比べるという、何だか、とても、凄く、気の毒になるぐらい、心に痛い事をしていた。
 思わず、私はパシンと口元を両手で塞いで、漏れる声をおさえるぐらい切なかった。

 ……ちなみに、私は小さめだけど普通にある。


「……わ、ワハハ」
「さ、智美ちゃんしっかり! だ、大丈夫ですよ、まだ未来はありますし!」
「……佳織、気持ちは嬉しいけど、私は中学ぐらいから成長止まってるしなぁ」

 痛い、胸が痛いから、それ以上はやめて……!

 鶴賀の部長さんに心を抉られながら、私は耳を塞いで首を振り続けてしまう。
 すると、ポンッ、と肩に手が置かれる。
 はっ、と顔を上げると、鶴賀の津山さんが、私の落とした缶ジュースを拾って、私と同じ痛みを堪えた瞳のまま、泣きそうな私を見つめてくれていた。

「あ、ありがとうございます」
「いえ……」

 つい、缶ジュースを受け取った刹那に触れた、指先を離し辛くて、私たちはそのままで、暫く見詰め合ってしまう。


「というか、大体お前とそんなに変わらねぇだろうが! とっとと謝れこの貧乳!」
「なっ、失礼な! 私には未来があるんだじぇ! 何度も言うが、私の夏のミラクルボディを見てからモノを言え小僧!」
「ちょっと、京ちゃん失礼だよ!」
「どっちがだよ?!」
「いくら何でも、優希と変わらないというのは、あちらの方に失礼すぎるだろうと、宮永さんは言っているんです!」
「……あっ?!」

 乙女心が分かっていない、清澄の、えっと、何方さんでしょう?
 と、とにかく彼の発言に、加治木さんの顔が更に冷たく強張り、東横さんがその表情に顔を曇らせて、むっとした顔を清澄に向ける。

「……清澄の男子は、相当にデリカシーがないと見えるな」
「貴方たち、同性と異性のこの手の罵倒が、同じだと思ってるんすか?」
「い、いやぁ、ほんまに、何と申し開きをしたものか……」
「……あぁ、これは、私もフォローできないわ」
「そういえば、そちらの中堅も内の部長を馬鹿にしてくれていたな?」
「……って。先輩、気にしていないみたいにクールぶってたけど、実は怒ってたんすね」
「ぶ、部長! 矛先がこっちにも向かってきたぞ?!」
「…あ、あはは、いやぁ、試合中って、つい口が悪くなっちゃうのよねぇ」

 加治木さんと東横さんが冷たく責めれば。染谷さんと竹井さんは焦りながら頭を下げるしかない。
 この光景に、このままだと収集が付かない位、両者の溝が深まりそうだと、全然関係ない私が危機感を覚え始めた頃、
 よろりと、蒲原さんがようやく立ち上がった。





「ワハハ、ユミちんもモモも、清澄苛めは終わりだぞー」
「蒲原……」

 蒲原さんは、何だか「貧乳はステータスらしいぞ!」と咽び泣きそうになるぐらい悲しい台詞を言いながら、加治木先輩を宥める。
 ……あ、妹尾さんがかなり泣きそうになりながら、でも蒲原さんを頑張って見上げている。

「そこの、えっと、ちっちゃいの!」
「何だと!? 私は片岡優希という、素敵な名前があるんだじぇ! ちっちゃいのじゃないじょ!」
「ワッハッハ、それは失礼した」

 スタスタと、片岡さんに歩み寄ると、蒲原さんは「うりゃ」と人差し指をちょんっと、片岡さんの鼻の頭に乗せる。

「じょ……?」
「まだ痛むかー?」
「い、今は平気だじぇ」
「ワハハ、それは良かった」

 そのまま、ぐしゃぐしゃと片岡さんの頭を撫でて、「今度は前見ろよー」とワハハって笑って、そのまままた戻っていく。
 鶴賀の人たちは、どうやらその蒲原さんの行動に予想がついていたみたいで、やれやれと苦笑気味に、だけどもう一度だけ清澄の人たちを睨んで、さっさと歩いていってしまう。


 そんな風にあっさりと。

 だけど、心に痛みだけの冷たい風を撒き散らせながら。
 県予選の終わりの、更に終わりの、小さな喧騒は終わったのだ。








 おまけ。


「あら、吉留さん。遅かったわね」
「……き」
「え?」
「うわーん、キャプテン~」
「あ、あらあら、どうしたの? 何か怖い事でもあったの?」
「悲しい事が、ありましたぁ……」
「……まぁ、相当に辛い事があったのね」
「……はい」
「後で、ゆっくり聞かせてね?」
「……ぅう、はいぃ」





「……優希」
「……じょ」
「今度会ったら、ちゃーんと謝らんといけんよ?」
「……うん。わかったじぇ」
「ゆ、優希ちゃん、あの、大丈夫だよ、許してもらったんだし……!」
「……ぅう」
「って、ああもう、ほら、タコス奢ってやるから元気だせ」
「本当かっ!?」
「……って、相変わらず現金すぎですね」






「…………はぁ」
「ほら、元気を出せ蒲原」
「…………いいよなぁ、ユミちんは、私より胸あって」
「そんな、部長だってまだまだ希望はあるっすよ! 先輩だって、私が揉んだから、また最近サイズが増えもごごっ?」
「余計な事は言わなくていい!」

「…………」

「だ、大丈夫ですか? あの、智美ちゃん」
「……そっか、揉まれれば、大きくなるかもしれないな」

「―――え?」

「ユミちん!」
「せ、先輩は駄目っす!」
「そ、そうだ駄目だ! つ、津山!」
「えっ?! わ、私ですか、あの、では僭越ながら失礼しまむぎゅ?!」
「―――わ、私がします!」
「へ? あ、いや佳織は」
「だから、今夜智美ちゃんの部屋に行きますね!」
「うえっ?!」







 更に更におまけ。





「……何したんだ、ありゃあ?」
「……喧嘩、かと」

 清澄と鶴賀が相対した、すぐ近くの階段上に実はいた龍門渕は、降りるに降りれなくなり、引き返すのもあれなので、様子をずっと見ていた。
 今の会話に、持つべきものをしっかりと持っている純と智紀は、特に思うところはないようで、クールなものだ。
 ……が。

「……と、透華」
「えっ、あの、その……むしろ、私の方こそ。……ごにょごにょ」

 二人の後方では、一が、自分の胸を押さえて、涙目に赤面をプラスして透華を見上げている。
 それに、透華はオロオロと真っ赤になりながら、両手をそわそわさせつつ、自身の胸もチラチラ見ている。
 純は、それらを冷静に見て、隣に佇む智紀の胸を見て、もぞもぞと両手を動かす。

「……揉んでやろうか?」
「……いりません」

 すでに充分のボリュームな彼女の当然の否定に、純はつまらなそうにして、頭の後ろに腕を組む。

「……二人きりなら、いいです」

 ぼそりと。
 小さな、純にしか聞こえない声に、純がごんっと階段の手すりに頭をぶつけて、痛みも気にならないぐらいの勢いで首を縦に振ったが、それを、透華と一は見てもいなかった。



 そして、衣。
 彼女は、更にその様子を見ていた藤田プロと並びながら、お互い何とも変な空気をかもし出して、気まずげに見詰め合っていた。

「……どうする?」
「じ、熟考している、もうちょっと待ってろ!」
「……ああ、そう」

 じいっ、と、大きな瞳にチラチラ見上げられる藤田プロは、ギシギシと軋む理性を自覚しながらも、顔だけはクールに、彼女の返事をじっくりと待つのだった。







 おわり




 多分、ワハハとタコスの組み合わせが書きたかったのだと思います。

 かなり失礼ながら、ワハハのそこに膨らみはないものだと作者は勝手に思っています。

 でも、そこがいいとも思っています……!

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最終更新:2009年08月08日 14:46