761 :名無しさん@秘密の花園:2009/08/06(木) 02:15:04 ID:+b44Z9pT
昨日お世話になった>>706だが、ようやくかじゅももが完成したので、良かったら読んでほしい。

・放課後 2人で・

「よし、少し早いが今日は解散だ」
「おっ?もう終わりかー?いつもよりずいぶん早いじゃないか、ユミちん」
蒲原が不思議そうに私に問いかけた。
「確かにそうなんだが…、県予選前に気を詰めすぎて直前に倒れられても困るしな。
 定期的に休むことも必要だろう」
「そういうことか。まぁユミちんらしいな。じゃあかおり、帰ろうか」
「あ…はい」
そう言って、2人は荷物をまとめ始めた。
「まだ時間もあるんだし、かおりは私の家で今日の復習するか」
「えっ?…はい、わかりました」
一瞬、困惑した表情を見せた妹尾だったが、うれしそうに返事を返していた。
「じゃあ、わたしたちは帰るけど、むっきーはどうする?一緒に来るか?」
蒲原はかおりの表情を見て、頬を赤らめていたが、照れを隠すように津山に話を振った。
「いえ、折角ですが私は遠慮させていただきます………お2人の邪魔はしたくありませんので…」
最後にボソッとつぶやいた言葉は私には聞こえていたが、2人には聞こえていなかったようだ。
まぁ聞こえないように言ったのだろうが。
…しかし津山の気持ちももっともだろうな。
「そうか、わかった。ユミちんはまた居残りだろう?戸締りよろしくー」
「あぁ、任せてくれ」
「じゃ、また明日」
「お疲れ様でした」
そう言って2人は部室を出て行った。
「先輩はまだ残られるんですか?」
2人を見送り、PCに向かいなおそうとした私に津山が問いかけてきた。
「あぁ、今日中に仕上げておきたいことがもう少しがあるからな」
「手伝いましょうか?」
「…いや、私1人で大丈夫だろう」
「でも、いつも先輩にばかり…」
「気にかけてもらってすまない。だが今日は折角早く終わったんだ。
 津山が体調を整えてきてくれることのほうが私としてもうれしいよ」
「…わかりました。ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えて今日は失礼します」
「あぁ、気をつけて帰ってくれ」
「はい、先輩もあまり無理をなさらないように。では」
そう言うと津山は一礼し、部室を出て行った。

「ふぅ」
何気なくため息をつき、私は椅子に座りなおし、3人がいなくなったこの部屋を眺めた。
窓から夕日が差し込み、椅子に1人座っている私を照らしていた。

…1人?いや違うな。
1人ではない。ちゃんともう1人いる。見えてはいないが、必ずいる。
そう確信を持ち、私はこの部屋に問いかけた。
「桃、いるんだろ?そろそろ出てきたらどうだ?」
静寂につつまれている部室に声が響く。
「もも?」
もう1度名前を呼ぶが出てこない。
……いないのか?いや、この感じ…必ずいる。私が間違うわけがない。
「桃、いい加減出てきてくれ」
先ほどより少し強い声が響くが、また静寂が訪れる。
…まさか、本当にいないのか?
心に少しの焦りが生じかけたとき、肩に触れる感覚とともに
「ごめんなさいっす」
と笑みを浮かべながら、桃が姿を現した。


「でもよくわかったっすね?私がいるって」
「当たり前だ、お前がいるかいないかぐらいはわかる」
「愛の力ってやつっすね?」
そうニヤッとしながら返してきた。
「なっ///からかうな」
「あはは、先輩、顔赤いっす」
「うるさい。それより折角早く終わったんだ。今日もするんだろ?準備するぞ」
「くすっ。はいっす!」
頬がまだ少し熱を持っているような気がしたが、これ以上攻められるわけにはいかない。
そう思い、ここ数日、部活後の日課となっていることの準備をするように桃を促した。
まだからかってくるかと思ったが、桃も素直に応じてくれたようで、机の上を片付け始めた。


それから数回の攻防が行われ一息ついたとき、私は前々から思っていた疑問を口にすることにした。
「なぁ…桃」
「なんっすか?先輩」
「なぜ、毎日こうする必要があるんだ?」
「そりゃあ先輩のことが好きだからに決まってるじゃないっすか」
「それでは答えになっていない、ちゃんと答えてくれ!」
「一応真面目に答えてるっすけどねぇ……じゃあ、もう1回やって先輩が勝ったら正直に答えるっすよ」
「本当だな?なら、次は負けるわけにはいかないな」
…今日は負けが多いが。しかし…次は負けるわけにはいかないな。
そう私は気を引き締めなおした。
「わたしも負けないっすよ!」
笑顔だが、手を抜く気はさらさらないという表情で返してくる桃。
…望むところだ。
「いくぞ…」
「はいっす」

部室が再び静寂に包まれる。










「タン」



という1つの音がその静寂をかき消し
「この半荘で最後だからな」
「わかってるっす」
本日最後となる2人麻雀の火ぶたは切って落とされた。


………
「先輩」
「なんだ、桃?」
「もし迷惑じゃなかったら、これから県予選まで部活終わったら2人で麻雀打ってくれませんか?」
「?別にかまわないが…なぜだ?」
「そりゃあ先輩と一緒にいたいからっすよ」
「からかうな!」
「あはは。でも、麻雀のことは本気っすよ?」
「そうか…わかった。じゃあ部活が終わったら毎日残るか」
「毎日してもいいんっすか?」
「あぁ、お前の予定がよければだが…」
「良いに決まってるっすよ!先輩、大好きっす」
「なっ///こら、抱きつくな…」
………


…あの時、本当にうれしそうだったからつい理由を聞きそびれてしまったんだが…。
何かわけがあるのはわかるんだが、直接聞くしかないしな。
本当に負けるわけにはいかない。
この麻雀を始めるきっかけとなったことを思い返しながら、試合が進んでいった。





そして
「オーラスっすね、このまま逃げ切れば私の勝ちっす」
「…余裕だな。だが決めつけるにはまだ早いぞ…」
桃が親で一歩リードした状態でのオーラス。

やはり桃は手強い。だが差は少し。
連荘させずに、この場で私が上がれば勝てる。



早々と場が進んでいく中、ふいに
「わたしが勝ったら、帰りにタコスでもおごってもらうっすよ」
もう勝った気でいるのか、ご機嫌な感じで桃が話しかけてきた。
「調子に乗るな、まだ終わってないんだぞ」
「そうっすね。でも、先輩だけ勝った時の条件があるのはずるいっす」
…言われてみれば確かにそうだ。
「…確かにそうだな…分かった。このままお前が逃げ切ればおごってやる」
「女に二言はなしっすよ?」
うれしそうに笑いながら返事をする桃。
しかし1つ疑問が残る。
「なんでタコスなんだ?」
「特に理由はないっすよ、気分っす」
そう笑いながら返してきた。


そんなどうでもいいやり取りがありながらも局面は進んでいき、牌が少なくなっていく。
そんな中
「あっ、リーチっす」
桃がリーチ棒を出す。
「これで決まりっすかね?」
「……」

無言で通したが…さすがにまずいな。
だがこっちがダマを張っているのを気づいてはいないようだ。
まだ、いける。


そのままこう着状態が続く。
そんな中、
「あっ、『カン』するっす」
そう言って、つもった牌を暗カンし、リンシャン牌を取ろうとする桃。
…む?その牌は…
「そのリンシャンとる必要ないぞ」
「へっ?なんでっすか??」
「ロン。槍カンだ」
「なっ、本当っすか??」
「あぁ、私の勝ちだな桃」
「あちゃ~、ダマ張ってたなんて…油断したっす。でもまさか槍カンとは…」
「私も驚いている。次に私が槍カンを上がるのはいつになるやら…」
「そうっすね、下手したら何年後っすよ?」
「あぁ、そうだな」
上がった私のほうが驚いているのだが…危ないところだった。
桃がカンしなければ、珍しくもないロン上がりだったのだが…。
…どちらにせよ勝てていたことはありがたいが。

「はぁ、負けちゃったっす。やっぱ先輩強いっすねぇ」
「今回は運が味方してくれたのかもな」
「そんなことないっすよ!先輩の実力っす!!」
珍しい上がりを見てテンションが上がったのか、力説してくる。
「ふふっ、ありがとう、桃」
そんな一生懸命な彼女の頭をなでてやると、少し照れたのか顔を下げた。
「お礼なんて…」
「お前があそこでカンせずに捨てていたら槍カンは成立しなかったんだから、やはりお前のおかげだろう」
「負けたのに、褒められるって変な感じでっすけど…そこまで言われると照れるっす…」
少し頬が赤くなっている。本当に照れているんだろう。

そのまま桃を見ていてもいいのだが、そろそろ本題に入るか。
「桃、じゃあ早速だが…」
「あっこれ最後でしたよね?私片づけるっすから先輩先に帰る準備して下さいっす」
そう私の言葉をさえぎりいそいそと片づけを始める桃。
「待て、桃。そうじゃなくて…」
「タコス残念っすねぇ~」
ごまかすように、白々しく会話を続ける桃。
「……もも!」
桃の両肩に手を置きながら、少し大きな声で呼びかけるとビクッと体を硬直させて桃が立ち止った。
「……私の勝ちだぞ。ちゃんと理由を教えてくれ」
「やっぱ忘れてなかったっすか…」
「当たり前だ」

昔CMに出てきたチワワのような目をさせて「どうしても?」と訴えかけてくる。
…うっ、これは…///
しかし、ここで引くわけにはいかない。
「そんな顔をしてもダメだ。改めて聞くが、なんで部活後、2人麻雀をするんだ?」
「…今言わないとダメっすか?」
「あぁ、聞かせてほしい」
まっすぐと桃を見つめる。
そんな私の態度に、さすがにごまかしを入れることができなかったのようで、桃はコクっとうなずいた。
そして私に背を向けて、少し歩き、ようやく口を開いた。
「…県予選…絶対勝ちたいっすから、少しでも練習、と思って先輩にお願いしてたっす」
ふむ、確かにこれなら筋は通るが…。
本当のことは言ってないな。
そう思い私は聞き返した。
「だが、それなら練習時間を延ばして4人で打った方がよくないか?
 ルールにしても2人で打つよりも大会に近いルールでできるし」
「……先輩は…わたしと2人で打つのいやっすか?」
言葉だけならいつものからかいとも思える言葉。
しかし、静かに、そして切なく放たれた言葉は、純粋な問いかけであった。


…真剣に返さなければいけない。
そう思い、未だどんな表情をしているかわからない桃に対して、素直に言葉を返した。
「そんなことあるわけないだろう。2人で打てることは、そして何より、2人でいられることは………
 すごく……………うれしい」
恥ずかしいという思いもあったが、そんな気持ちよりも桃に素直に返すことのほうが大事だと思った。
「…なら、良かったっす。私だって先輩と一緒にいられること…うれしいっすよ…」
「………もも…」
「あっ、もちろん4人で麻雀打つのも好きっすよ!私、今までネットばっかりだったから…。
 現実で4人で打てて楽しいっす。……すごく楽しいっすよ…………。でも、」
「………」
「…でも、……4人で打つと、私、卓から消えちゃうから…」
「……」
「現実には4人で麻雀打ってる。でも私はすぐに消えちゃってただ外から見てるだけ。
 3人で楽しく麻雀してるのをただ眺めてるだけ。そして、気づかれないようにリーチして、
 誰かが出した牌でいきなり上がって。3人で楽しく打っているのに、水をさして邪魔するだけの存在。
 ………でも、自分の長所が発揮できてるって自覚できる。うれしい、うれしいっすよ……でも…でも…」


「…結局私はまた1人ぼっちっす」


普段静かな桃が、声を荒らげ思うままに感情を吐露していたが、
最後に静かにつぶやいた。




「なんだか、そんな風に考えちゃうと……すごく、すごく……悲しくなって………つらくって」
「……桃」
声は落ち着いてきたが、肩がふるえていた。


「だけど…2人麻雀のときは1対1だから。こんな私でも、相手は………先輩は必ず私を見てくれる。
 私はちゃんとここに居る。それが感じられるから………わがまま言って先輩につきあってもらってたっす」
そう言い終わると桃は振り返り私を見た。
その表情は、いつもと変わらない明るい笑顔だった。



「無理に突き合わせちゃって…ごめんなさいっす」
そう言うと少し頭を下げ、再び私に背を向け、片づけをはじめようとしていた。

その寂しそうな背中を見た私は、考えることをやめ、ただ、衝動的に彼女を抱きしめた。
「先輩!?」
「………」
「あっ、あの、もう全然気にしてないっすから、大丈夫っすから。私ちゃんとがんばれるっすから」
「………」
「そっそれにこんな急に…、嬉しいっすけど誰かに見られたら……だから、あの…」
「桃」
「……先輩?」
「気づけなくて、すまなかった」
「……先輩は、悪くないっすよ。私が……わがまま言ってただけっすから」
「いや、私の罪だ、すまない」
我慢の限界なのだろう。声は引きつり、肩は揺れ、まわしている腕には水滴がぽたぽたと落ちてきた。
それを感じ私はまわす腕の力を強めた。
「……でも…ほら、私消えるのが仕事っすから。
 ちゃんと…その……仕事をしないと、先輩と居る意味ないっすから…」
その言葉を聞いた瞬間、私は強引に桃をこちらに向け、しっかり強く抱きしめなおした。


「なっ//先輩?」
「………」
「く、苦しいっすよ」
「……桃」
「……」
「…もう我慢しないでくれ…」
「っっ……」
「私が全部受け止めるから…無理しないで。泣いてくれ」
「……先…輩…」
「…もも、つらかったよな」
そう言って、震える体をより強く抱きしめた。
今までため込んでいたもの全てを溢れ出すかのように、桃は涙を流し抱きしめ返してきた。

それから、桃が落ち着くまでの間、そのままの状態でいた。。
「ヒグッ…グスッ…」
「桃、大丈夫か?」
「……はい、だいぶ、落ち着いてきたっす」
「そうか。よかった」
「でも…先輩の制服、濡らしてしまって…」
「そんなこと気にするな」
だいぶ落ち着いたことを確認することができたので、話をすることにした。
「お前がそこまで思い悩んでいたことに気づけなくて本当にすまなかった」
「…でも、本当に先輩のせいじゃ…」
「謝らせてくれ。お前が悩んでいることに気づけず、ただのうのうと暮らしてきた私は愚か者だ」
「……そんな…」
「だが、桃。お前も愚か者だ」
「…グスッ…え?」
「私もだが、お前も愚か者ということだ」
「なっ、そんなはっきり言わなくてもいいじゃないっすか!確かにわがまま言ったりしたっすけど…」
「そのことに対してじゃない。もも、お前勘違いしてるだろ?」
「…勘違い?」
「お前は、『消えないとここにいる意味はない』と言ったが、
 私は別にお前にそのためだけにここにいてもらっているんじゃない」
「………」
「私はお前のステルス能力を期待して入ってもらったんじゃない。お前の打ち筋を見込んで入部を頼んだんだ。
 だいたいお前が入部するまでステルスについては知らなかっただろう?」
「……確かに、そうっすけど…」
「だから…その…何が言いたいかというと、ステルスを使うお前が必要なんじゃなくて…だなぁ……その…」
「………?」
「…桃、お前が必要なんだ。最初に会ったときにも言ったが、『お前』がほしいんだ。」
「///////////」
「…ステルスを使いたくないなら使わなくていい。みんなと話しながら打ちたいならそうすればいい」
「…でも、」
「気にするな。誰も文句は言わないさ。むしろ喜ぶと思うぞ。まぁ妹尾あたりはいつも驚くかもしれないが」
「…先輩……」
納得してくれたのか、桃は肩の力を抜いて私に身を預けてきた。
そんな愛しい彼女の頭をなでた。
「気づいてやれなくて本当にすまなかった」
「もう気にしないでくださいっす」
言いながら顔を横に振る桃。

「もう1度言うが、私はステルスが好きなんじゃない。もも、お前が好きなんだ」
彼女の肩をとり、引き離してから彼女の目を見てそう伝えた。
「だから…もう1人で悲しまないでくれ」
普段よくからかってくるが、攻められるのは慣れてないようで、桃は顔を真っ赤にさせていた。
そんな顔を見られたくないのだろう。桃は顔をうつむかせていた。
「…先輩…今とっても恥ずかしいこと言ってるっすよ?」
「…そうだな。…だが、本心だ」
「…先輩」
更に顔を赤くしたようだが、桃は顔をあげて私にほほ笑んでくれた。


「迷いは晴れたか?」
「…はいっす」
「そうか。しかし桃、目は腫れているし、顔は真っ赤だな」
「///見ないでくださいっす。ぐちゃぐちゃだし…恥ずかしいっす」
これ以上赤くならないと思っていたのだが…、まだ赤くなる余地はあったようだ。
「そんなことない。すごく…かわいいぞ」
「なっ//////もう、せんぱ…んんっ」
抗議しようとした桃の唇をふさいだ。
最初は抵抗しようとした桃だったが、すぐにやめた。
「んんっ…ん………ぷはっ、はぁ……先輩、いきなりすぎっす」
「すまない、あんまりお前がかわいかったからな」
「/////恥ずかしいっす……」
「お前がかわいいのが悪い」
「///キャラかわりすぎっす…。攻めに回った先輩にはかなわないっす」
「ん?何か言ったか?」
「いえ…何もっす」
「そうか。さて、もう少しこうしていたいのだが…。
 さすがにそろそろ下校しないと怒られてしまう。片づけるか」
「…はいっす」
お互いに体を引き離すと、2人で急いで片づけをし部室を後にした。




「すっかり遅くなってしまったな」
日は落ち、星が瞬き始めていた。
「そうっすね、本当に申し訳ないっす」
「謝らないでくれ。桃、お前は悪くない」
「でも…」
「もうお互いに謝るのはやめだ。その代わり、今後何かあったら隠さず、話してくれ。
 私がいやならほかのやつでもいい。だから1人で抱え込むのはやめてくれ。お前は1人じゃないんだから」
桃の手を握り締める。
「……はいっす」
桃も手を握り返してきた。



しばらくそのまま歩いていると、桃が話しかけてきた。
「先輩……私ステルスやめないっすよ」
「…もも」
「やっぱり、これは私の長所っすから…。それに…」
「それに?」
少し間をとって。
「勝ちたいっすから!勝って1日でも長く先輩と一緒に過ごしたいっす。
 そのためにこの力はフルに使うっすよ」
そう言って笑った。


「ももっ?」
不意に握りしめていた手の感触、今まで隣に見えていた姿がいきなり消えた。



「…本当はもう1個だけ、2人麻雀してもらった理由があるっすよ」
姿は見えず声だけが聞こえてきた。
「4人で麻雀打ってるときは、先輩でさえも私を見失っていた…。
 だから…そのうち先輩が私をずっと見失ってしまうんじゃないかって考えちゃって……怖かったんっす」
「桃…」
「ごめんなさいっす。しんみりさせちゃって。でも、大丈夫っすよ、私もう気にしないっすから」
そう明るい声が響いたが、やはり寂し気な感じが伝わってきた。


「…桃。あんまり私を見くびるなよ」
そう言って私は、手を伸ばし
「えっ先輩??見えてないんじゃ…」
桃の腕をつかんだ。
「…あぁ、確かに見えなかった。だが…お前がいるかどうかぐらいは常にわかる。
 それに最近はこんな風に居場所が分かるときもある」
「……先輩」
目に涙を浮かべた桃の姿が現れる。
「気にしないなんて悲しくなることを言うな。
 お前が消えても私は必ずお前を見つけ出す。約束する」
「先輩…」
「お前は1人じゃない、少なくとも私がそばにいる。それだけは…信じてくれ」
「………はいっす」
私の真剣な言葉に、桃は満面の笑みで返してくれた。




「よし、今日はさっき言っていたタコスでも食べて帰るか」
「あれ?食べたくなっちゃたんっすか?」
「あぁ。なんだかなぁ…変な話だが…」
「いいっすねぇ……でも、先輩」
「なんだ?桃」
「今日はタコス我慢するっすから、早く先輩の家に行きたいっす」
「なっ///」
「今日うちに親いないっすから1人だし……泊まっちゃダメっすか?」
下から、目をうるうるさせて上目づかいに頼んでくる桃。


「……好きにしろ」
惚れた弱みか、この顔を出されると断ることができない。
「やったっす!じゃぁ今日はおいしいご飯作るっすよ!急いで向かうっす!!」
そう言ってニコニコと頬笑む桃。
そんな桃に手を引っ張られながら、2人は家路を急いだ。


end


以上終わりです。
まぁ……かじゅのキャラ崩壊は勘弁してほしいですが…。
咲でのこの二人は最強と思ってます。
読んでくれた人、ありがと。

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最終更新:2009年08月08日 14:38