655 :名無しさん@秘密の花園:2009/08/04(火) 01:09:04 ID:SKkEZ6Ma
最近増えてきたカマボコSS投下
カマボコ×かおりん←むっきー
カマボコ視点。
あまり頭は弱くないカマボコなのでキャラ違うかも

 遥かなる想い

「それで先輩は言うんすよ、モモ、お前が好きだ。強く抱きしめたら壊れてしまいそうな柔らかい肌が、
 私を包み込む心が。お前のすべてが。私はもうお前しか見えない。お前も私だけを見ていてくれって」
「ワハハ~本当かよ、普段のゆみちんからは想像も出来ないな~」
「・・・・モモ、もうその辺で・・・」
 私とゆみちんは部活を引退はしていたが、勉強しなくても大丈夫なゆみちん、やる気の無い私は
 ほぼ毎日部室に足を運びこうしてみんなで喋ったり麻雀を打っていた。
 今は私とゆみちんと桃子の三人なので二人のノロけ話がメインだった。
「そんな先輩に私は、先輩、私もあなたのすべてが好きっす、普段のかっこいいあなたも、
 こうして女の子になっているあなたも。先輩、もっと私を求めてください。私が壊れてしまうくらいに」
「そんでそのままベッドインか!愛し合っているな!ワハハ!」
「モ、モモ!もうやめろ!それから先を言うんじゃあないっ!」
 ゆみちんが真っ赤になっていた。相変わらずこの二人は熱いな。
「でもゆみちんはあんなにモテるのに本当に桃子一筋だな。桃子、お前は幸せ者だぞ」
「本当にそう思うっす。先輩!私ももちろん一生先輩一筋っすよ!」
「ワハハ。でもなんか勿体ねーよなあ。そうだ、ゆみちん、お前に寄って来る女の子たちを
 私に紹介してくれ!ゆみちんには桃子一人いればそれ以外は願い下げなんだろう!?」
 ゆみちんは桃子以外の女とは付き合おうとしない。だったら私に回してくれ、と前から思っていた。
「は?女の子?でも蒲原お前、妹尾と結構仲良かっただろ?いいのか?」
「佳織か・・まああれは幼馴染で付き合いが長いから今更付き合うって感じにもならねーんだよな・・・
 そういう雰囲気になっても熟年夫婦な気分だしな・・・刺激をくれる愛人的な存在を二、三人キープ
 しときたいんだよ!まあいつまでも新婚気分なお二人さんには永遠に理解できない心境だな!」
「・・・別に理解したくも無いが・・・」
「ワッハッハ、それならそれでいい。でもそれにしてもどうしてゆみちんはあんなにモテて
 私はさっぱりなんだ?おかしいよな!?私のほうが愛想はあるしキュートだし、イケメンだし・・・
 なあ、二人とも。そんなのやっぱりおかしいよなあ!?」
 私のテンションは最高潮に達していた。しかし気がつくと、私が尋ねた二人とは違う二人が部屋にいた。
 佳織は顔を真っ赤にしてわなわな震えている感じで、睦月はいつもの無表情だった。




「お、お前ら、いつ入ってきたんだ?一言くらい声かけろよな・・ワハハ・・・」
「蒲原先輩。今の質問の答えですが、私はぜーんぜんおかしくないと思います。むしろ当然だと思います」
 睦月が冷たい視線で答えてきた。その無表情、怖いからやめてくれ。
 しかし今はそれどころではない。何とか佳織に言い訳してこの窮地を脱出、そう思い佳織に近づいた途端、
 バチイイーーーーーーーン!!
 佳織の平手打ちが炸裂した。私は倒れた。その最中、あ、もみじ・・という睦月の呟きが聞こえた。
「ばかっ!!智美ちゃんのばかっ!!うわあぁぁぁーーーーん・・・・・・・」
 そう言うと佳織は泣きながらどこかに走り去ってしまった。あ、口ん中切れてる。
 そんな私に、睦月が迫ってきた。今度は何を言うんだ、そう思っていると、
「先輩。先輩がそんな調子で佳織を悲しませて泣かせるのでしたらこの私が代わりに佳織を幸せにします。
 これは警告ではありません。宣戦布告です」
 そう言い放つ睦月の表情はいつもと違っていた。その目は炎が燃えているように思えるほど活力があった。
 そのまま睦月は佳織が走り去った方向へ歩いていった。困ったぞ・・・私は弱々しく助けを求めた。
「ゆみち~ん・・・これ結構ヤバイよなあ・・・どうしよっか・・・」
 といってゆみちん達の方向を向くと二人はなんかお互いの体を触りあっていた。私はステルス智美ですか。
 もう二人はほっといて、私も急いで追いかけた。
 私と佳織は一歳違いだったけどいつも一緒にいた。私はかわいい佳織にちょっかい出したり
 行きたいところに引っ張りまわしたりとにかく一緒に遊んでいた。高校生になっても強引に
 同じ部活に連れてきた。普段から楽しく暮らそうと日々笑いながら生きてきた私だが、
 佳織といるときは特に楽しい気持ちを私に与えてくれる。そう、私は佳織を愛している。
 さっきゆみちん達には熟年夫婦だのそんな気にならないだの言ったが、ありゃ嘘だ。照れてただけだ。
 もういつから佳織を好きだったのだろう。子供のころ一緒にままごとをして夫婦になっているときに
 本当にこうなったらいいのにな、って思っていたときからなのか。遥かなる想い、とでも言おう。
 多分、私が佳織と一緒にいたのは、あいつに近づく悪い虫を追い払ってやる、という考えもあったんだ。
 きっと綺麗なあいつにはいろんなやつが寄ってくるだろう。あいつが悲しむ前に、私が追い払うんだ。
 そんなことを考えながら走っていると、睦月が立っていた。佳織のもとに行ってたのでは・・・?
「蒲原先輩。佳織ならそこの行き止まりにいます。あなたから奪ってやろうかと考えていましたが、
 やはりあなたが彼女を迎えてやるべきです」
 少し頭を下げ、睦月に感謝した。そして佳織のところにきた。もう泣き止んでいるようだった。
「佳織、ごめんな」
「・・・・・・・・・・・・」
 何も答えてくれなかった。その後どう謝っても返事をしてくれない。だから、趣向を変えてみた。
「佳織、私はお前といると楽しい。だけどお前はどうして私と一緒にいてくれるんだ?」
「・・・・・」



「ほら・・・小さいころから私はお前にひどい事してんのにさ、例えば・・・
『あ、智美ちゃん、私のケーキ食べてる!!』『いつまでも冷蔵庫しまっとくとケーキが可哀相だからな!』
『おい佳織、プレゼントだ、開けてみな!』『何なに~?・・・うわぁ!び、びっくり箱!?』『ワハハ!』
『おい、今からお前は麻雀部員だ!今すぐ来い!皆に紹介する!』『え!?どういうこと!?』
『ほら、大会までもう時間が無い!ホレ、「小島武夫の実戦麻雀」と「アカギ」、「天」だ!
 今日明日中に読んどけよ!』『ええ~~~~~~!?』・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・などなど色々ある。なのに佳織は私から離れなかった。どうしてなんだ?」
 何か言ってくれるなら何でも良かった。すると佳織はこっちをむいて、静かに言った。
「・・・智美ちゃんは、私に嘘を一度もつかなかったから」
 ・・確かにそうだ。楽しい人生のためには嘘も方便と考えている私だが、佳織には嘘をついたことがない。
 今まで一度もだ。こんな純粋で愚直なこいつに嘘をつくなど私にとって考えられないことだった。
 どんなちょっかいを出してもこれだけは絶対にしてはいけないことだと信じている。
 そんなことを昔の思い出とともに考えていると佳織がさらに続けた。
「あと・・智美ちゃんは本当に私のことを大切に考えてくれているから」
「え・・・なんでそんな風に思ったんだ?」
「うん・・・これも昔のことなんだけど・・・私が九歳の時、私が事故にあったときのこと。
 覚えてる?怪我はたいしたこと無かったけど、意識を取り戻したとき、智美ちゃんがいたのが驚きだった。
 だって智美ちゃんは一週間前からずっとこの日からの北海道への家族旅行のことを楽しみに
 喋っていたのに。どうしてこんなところにいるんだろう。
『智美ちゃん・・・なんでここに?楽しみにしていた旅行はどうしたの?』
『佳織のいない人生なんか何があっても楽しくないからだよっ!よかった・・本当によかった・・・
 佳織が死んじゃうかと思った・・・全くお前は鈍くさいんだから・・・でも・・よかった・・・・』
 一人で長野に残ってくれていた。それから退院まで毎日欠かさずお見舞いに来てくれた。
 怪我が全快するまで色々面倒を見てくれた。私に自己犠牲の愛を示してくれた。それが本当に嬉しかった」
「そんなこと覚えてたのか・・・」
「ねえ、智美ちゃん、智美ちゃんは私のこと、どう思っている?それを聞かせて欲しいな・・」
 いきなり逆質問された。そうか、そもそも私が他の女を云々・・って言ってたから怒ってたんだっけ。
 よし、ここで秘めていた私の気持ちを言ってやるんだ。言ってやるんだ。言ってやるんだ。言っ・・・
「佳織は・・・私の大切な・・・・・・幼馴染だ。昔から変わらないさ」

 ・・・言えなかった。たった五文字の「愛してる」が言えなかった。幼馴染なんかじゃあなくて
 私はお前が好きなのに。私は初めて佳織に嘘をついてしまった。
「・・・そう、わかった。突然ごめんね」
「私は先に部室に戻ってるぞ。お前も早く戻って来いよ」
 私はそう言って佳織のもとを去った。すると、すぐ近くに睦月が隠れていた。聞いていたようだ。
「蒲原先輩、あんた何やってんですか。あそこはああ言うところじゃあないでしょう」
「言うべきセリフを言うのは睦月、お前の役割だ。あいつを慰めてやってくれ」
「・・・あんた正気か?」
 驚く睦月の背中を押した。私は睦月の隠れていたポイントに姿を隠し二人の様子を見守ることにした。
 私は今まで佳織の気持ちなんか知らず軽率な発言や行動を続けていた。その辺を歩いている生徒に
 君かわいいな!今度一緒に遊ばない?なんてことを佳織と歩いているときにも言ったりしていた。
 あいつにはかわいいとか綺麗とか言ってやったことも無かった。私に佳織を愛する資格など無い。
 佳織のほうを見ると、睦月の胸の中でまた激しく泣いていた。
「うっ・・・ううっ・・・ぐす、ひっく・・・」
 ああ、佳織が悲しんでいる。悲しませたのは私だ。ああ、馬鹿だ私は。
 佳織を悲しませる悪い虫は、紛れもなくこの私だったんだ。自分の情けなさに私も泣きそうになった。
「・・・うむ、可哀相に。こんなに涙を流している。佳織が悲しむと、この私まで悲しくなる」
 佳織、私なんかじゃあなくて、睦月みたいなやつが幼馴染だったら良かったのにな。
「すまない。私は悪いやつかもしれない。佳織、お前が悲しんでいるのに私は心の中で喜んでいるからだ。
 何故って、こうしてお前を抱きしめることが出来るんだからな・・・」
 睦月が口説きにかかった。多分、佳織はころりと落ちるだろうな。まあいい。もう勝手にしやがれ。
「つ、津山さん・・・・・・」
「すまない。実は蒲原先輩と佳織の話を聞いていた。蒲原先輩へ抱いていた恋心も分かった。
 それが打ち砕かれてしまったところを見てしまった。あの人は佳織には嘘をつかないようだしな」
 違う!私は嘘をついたんだ!他はどうなってもいい。これだけは佳織に伝えたい。謝りたい。
「・・・・・津山さん、私は・・・」
「私が佳織と出会ったのはこの高校に入ってからだ。先輩と佳織が過ごしてきた日々よりずっと短い。
 でもこれからその日々以上に長く、幸せな時を佳織と一緒に歩みたい。佳織の悲しみを癒してやりたい。
 そして笑顔の佳織との日々を送りたい。佳織は私をやさしく見送り・・・
 私はその笑顔に私なりに精一杯応えて励んでゆきたい。私と新たな一歩を歩んで欲しい」
 
 決まった。良かったな、佳織。睦月はお前を幸せにしてくれる。あいつは余計なことをべらべら言わない。
 頭もいいし、私と違ってお前だけを愛してくれる。いや、私だって本当に愛しているのは
 お前だけなんだ・・・。普段は大口開けてワハハと笑っていらないことまで喋りまくる私が、
 肝心なときには照れちまって言いたいことも言えないんだ・・・。ワハハ。私は私の笑い者だ。
 そんなことを考えていると、佳織が睦月のプロポーズに返答し始めた。あばよ、佳織。心でそう言った。
 ところが佳織の答えは長いこと付き合ってきたこの私にも想像していなかったものだった。
「佳織、こんな私でよければ・・・」
「・・・できません」
「・・・うむ?」
「・・・・・・・!?」
 私と睦月は耳と目を疑った。今まで聞いたことのないはっきりとした声、見たこともない真剣な顔だった。
「津山さん、すいません。私がこれからそんな生活を送りたいと思っているのは智美ちゃんだけなんです。
 どんなに裏切られても。どんなに馬鹿でも。私が本当に笑顔で見送りたいのは、
 私の初恋相手、蒲原智美だけです。どのような言葉でも、どのような美貌、賢さ、豊かさも
 私のこの遥かなる想いを変えることは出来ないんです。たとえ智美ちゃんに嫌われていたとしても・・・
 この気持ちを捨て去ってしまうことなど絶対に出来ない、そう思っています」
 ・・・私はその場を離れ、少し離れたところで激しく泣いた。これ以上泣いたことが無いくらい泣いた。
 桃子とゆみちんに負けないくらい一途な佳織に。この私のちっぽけさに。私は涙が止まらなかった。
 今になって口の中の切れたところが痛くなった。そんなことですら今の私をさらに悲しくさせた。
 それから少しして落ち着いた私は、何を思ったかさっきの場所に戻っていた。まだ二人は話していた。
 何を語っていたのだろうか。今、睦月がこっちを向いたように見えた。気のせいであって欲しい。
 すると睦月はこれまた今まで見たことのないやさしい表情で佳織にこう語りかけていた。
「・・・だったら、この道を戻っていくといい。そして蒲原先輩に会うことを勧める。
 意外とそう遠くには行ってないだろうからな。そしてさっきの質問をもう一度してみるといい」
 ・・・まずい。こっちに来るぞ、どうしよう、そう思っているうちにあっさり見つかってしまった。
 佳織と正面から向き合った。きっと私の顔は今まで号泣していたのも手伝って
 真っ赤になっているんだろう。ほっぺたのもみじなんか隠してしまうくらい。
「智美ちゃん、私は智美ちゃんが大好きです。智美ちゃんは私のこと、どう思っているの?」
 私はもう佳織に嘘はつかなかった。

終わりです。
 思ったより長くなってしまいました。
 次回はもう少し簡潔にします。

 おまけ
 睦月は部室へと足を速めていた。自分があの場所にあれ以上いても邪魔者だと思った。
 手間はかかったが、自分の狙っていた結果になって本当によかったと思っていた。
 しかし、僅かだが佳織への好意を持っていたことも事実だ。
「うむ・・・、ま、これでよかったのだ、そう思っておくことにするか」
 とりあえず納得することにした。自分にもいつか本当に愛し合える相手が見つかることを信じて。
「そうだ、今は麻雀に打ち込もう。もう私が部長なのだからな。今はそれだけを考えよう」
 そう自分自身を励まし、部室に入った。そこでは、ゆみと桃子が生まれたままの姿で抱き合っていた。
「お、おい!鍵を閉め忘れるなと言ったろモモ!ど、どうするんだ・・・」
「しまった!忘れてたっす!津、津山先輩・・・・・・」
 睦月はキレた。心の底から激怒した。
 あたふたする二人に無表情のままひたすら麻雀牌を投げ続けた。

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最終更新:2009年08月08日 14:03