216 :名無しさん@秘密の花園:2009/07/27(月) 22:56:07 ID:wD2OqlI1
SS投下します 4レスくらい借ります
>>95の同時刻ものですが別にそちらを読まなくても大丈夫です
かじゅモモだけどかじゅは出ません
他キャラも少し出ます

 目覚め

 この日の闘牌も終わり、夜の食事の時間となっていた。
 私は、蒲原先輩やその他の学校の人たちと4人席に座っていた。
 本当は加治木先輩と食べたかったが、清澄の人と食べているようなので今日のところはあきらめた。
 相変わらず蒲原先輩がずっと喋っていたが、私はいつも聞いているような話だったのですぐ飽きて、
 後ろに座っていた人たちの会話を少し盗み聞いたりしていた。
「一年以上先の話だけどよぉー・・・国広君は進路どうすんだぁー?」
「そういう純はどうなの?もう考えてるの?」
「まさか~・・でも、俺たちは世間一般のやつに比べてだいぶ有利だぜ?そのままメイドにもなれるし
 大学も大して勉強もせずに龍門渕大に行けるしな・・でも国広君はやっぱりお嬢様に永久就職か~?」
 龍門渕高校の二人のようだった。そのうちの一人は私が県大会で戦った人にべったりしていた
 人だな、と話を聞いているだけでわかった。私も出来るものなら先輩に永久就職したいなあ・・・と
 思っていると、国広君と呼ばれているほうは意外な答えを語った。
「僕は・・高校を卒業したら屋敷を出て、麻雀でプロ入りしたいと思っている。そのために、
 少しずつお金もためて、一人暮らしの準備も整えているんだ。」
「・・・冗談だろ?まあ腕は問題ないとしても、屋敷を出るだと?透華のことはどうするんだ」
 いきなり雰囲気が変わったように感じた。たしかに透華という人は私が戦ったときも対局中だというのに
 意識が飛んでいるような表情をしていたり変な人だと思っていたけども、愛想を尽かしたのか?
 などと考えているうち、国広君の返答が始まった。
「僕は・・小学校の頃麻雀大会でイカサマをして以来、世間ではクズのようにしか思われていなかった。
 いつまでこの苦しみが続くのか、なんて考えているときに、透華が助けてくれた。崩壊しそうな僕の心を。
 その後の屋敷での生活はまるで夢のようだった。今でもそう思っているし、透華への思いも変わらない。
 本当に・・・最愛の人と最高の仲間に囲まれた生活・・考えられなかった夢の生活だ」
「だったらいいじゃねぇか!ずっと夢の中にいりゃあ!誰も文句なんか言わねぇし、言わせねぇよ!」
 純と呼ばれる人の声が大きくなった。しかし、なおも国広君は話し続けた。

「僕は透華に恩返しがしたい。現実につぶされそうになった僕を夢の世界へ連れて行ってくれた透華に。
 そしてそれは僕が夢から覚めて再び現実で立派に生きていくことで果たせる。そう考えている。
 もちろん異論は認める。衣も智紀もハギヨシさんも反対するかも。でも透華は僕の考えをわかってくれる。
 なぜかその確信はあるんだ。僕のことを心から応援してくれる、なぜかそれはわかるんだ。」
「・・俺にはわからねぇよ」
「・・・まあ、まだ一年後の話だし、色々考えも変わっているかもね。とりあえず今は食べようよ。
 あと、この話は僕が自分で透華に話すまで心の中にしまっておいて欲しいんだ。わかったね?」
 この二人の会話はここで終わった。彼女は結局どういう選択をするんだろう、そして彼女の最愛の人は
 本当に彼女の決定を祝福するのか?と考えていたが、ふと、ある思いが私の中に入り込んだ。
 私こそ、今、夢を見ている最中なのではないか?と。
 私は、生まれつき存在感が薄く、誰とも親しくなれなかった。自分の肉親さえも。
 誰からも愛されることも無く、憎まれることも無かった。だから私も人を愛さず、憎まなかった。
 自分が生きている意味はあるのか?誰からも必要とされず、必要としないこの私に。
 小学、中学とずっとそんなことを考えながら生きてきた。高校に行ってもどうせ同じだ、そう考えていた。
 ・・・その日のことはよく覚えている。私はたまたま校内のネット麻雀を時間つぶしで打った。
 別に麻雀部になんか入りたくも無かった。結局何をしても変わらないのだ。誰も私を見つけられない。
 ところが、別の日突然現れたその人は、私が欲しいと言った。自分の耳を疑った。
 今思うと、この時点で加治木先輩は私が見えていなかった。それなのに嬉しかったのは何故だったのか。
 きっと私は自分を必要としてくれたことに、生まれて初めての体験に歓喜していたのだ。
 ただ理由も無く生き絶望へ落ちていくだけだった私は、夢の世界に引き込まれていくようだった。
 その後の満ち足りた生活は、確かに今までに比べたら、夢だ。いつか覚めてしまうのだろうか。
 眠りから目覚め、そのとき私は、さっきの人のように現実で強く生きようと思えるのだろうか。

「・・・・・・・・・・・おい桃子っ!さっきから人の話聞いてんのかよ!?」
 蒲原先輩が、私に怒鳴っていた。話を聞いていないのがばれたようだ。
「当然っすよ!聞いていたに決まってるっす」
「ワハハ。そうか。じゃあ私が何の話をしていたか当然わかるよなあ?」
「ええ。妹尾先輩の話と、部を設立したときの苦労話っすよね」
「・・・なんだよ聞いてたのかよ~相槌ぐらい打てよな~」
 いつも話しているんだから、分かるに決まっている。初めて聞いた他校の生徒たちには
 新しい話だろうが私は正直飽き飽きしていた。でもこうやって会話を楽しめるのもあの人が私を
 救ってくれたから・・そんなことを考えていると、蒲原先輩が普段と違うことを話し始めた。
「ほんとに桃子は初めて会ったときから表情や雰囲気が変わったなあ。まるで眠りから覚めたようだ」
 私はドキッとした。心の中が読まれているのか?少し怖くなってしまったが、蒲原先輩は続けていった。
「いやーワハハ。いまふと考えたんだけど、最初に会ったときのお前ってなんか暗くてぼーっとしている
 感じでさ、まるで朝起きてすぐ見たいな状態?大げさに言えばこいつ死んでんじゃねぇの?って思った。
 まあその時は眠そうだな、って感じたぐらいだったけどな、ワハハ!」
「そ、そんな風に見られてたんすか?でも死んでるってちょっと失礼じゃないっすか?」
「ワッハッハ、スマンスマン、だけどお前その日だけじゃなくて一週間くらいはそんな感じだったぞ?
 ・・・でも、お前がゆみちんと仲良くしだしてから今の明るいお前になっていったような気がするんだ」
 蒲原先輩は意外と切れ者のような気がした。今まで内心少し馬鹿にしていたので心の中で謝った。
「そうっすかね?私はずっと変わらないつもりでいたっすけど」
「そうさ。それで睦月ともたまに話すんだ。お前は長いこと眠りについていた眠り姫で、ゆみちんは
 それをキスで起こした王子様さ。本当にキスで起こしたとは言わんが、もうそれ位したんだろう?」
「・・・・・・・・・・・」
 私は恥ずかしくなり、答えに困ってしまった。私も加治木先輩を王子様のように感じているときがある。
 確かにキスももう何回も交わしている。一番最初にどっちが誘ったかは忘れてしまったが。

「ワハハ。図星だな?まあどっちでも良いけどな。あ、この話を始めたのは睦月のほうだぞ。私はあまり    
 そういう少女的な考えはしないからな・・・。でもゆみちんは意外と乙女チックなところがあるからな、
 だんだん他のやつにも見えてきたからっていって浮気なんかして泣かすなよ?例えばこの私と、とか・・」
「それは100%無いから心配ないっすよ。蒲原先輩とは・・・ねぇ・・・」
「・・・・・・まあいいか。それなら安心だ。あと、香織はいまだにお前のことあまり見えてない
 ようだけど、お前のこと嫌いってわけじゃないんだ。あいつも努力してるから、許してやってくれよな」
 そう言うと、蒲原先輩は席を立った。デザートでも取りに行ったのだろう。隣を見ると、
 風越の池田さんと清澄の染谷さんは、あまりこちらのほうを見ないで黙々と食べているようだった。
 蒲原先輩が一人で話してるように見えて不審に思ったのか、話の内容が聞くに堪えないものなので向うを
 向いているのか。まあどちらでもいい。それこそくだらないことだ。こんな連中の事などどうでもいい。
 そうだ。私は夢なんか見ていない。長い悪夢からやっと覚めたんだ。いや、夢なんてものではない。
 自分では分からないうちにただゆっくりと死んでゆくだけだったわたしは加治木先輩という王子様に
 再び命を与えられたんだ。先輩は命の恩人だ。先輩にずっと、一生ついていきたい。
 さっきの国広くんとやらは愛する人のところから離れることによって愛を表そうとしていたけれど、
 私はどこまでも先輩と一緒にいたい。それが私の生きている意味なんだ。生きている理由なんだ。
 私は何かつっかえていたものが取れた気がした。蒲原先輩にも感謝しなきゃな、そんなことを
 考えていると、なぜか全身果物まみれになった蒲原先輩が席に走って戻ってきた。
 やはり得体の知れない人だと思った。


 終わりです。
 カマボコは実は出来るやつと予想。

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最終更新:2009年08月03日 18:34