「は…っ破廉恥、な…」
いつもなら合戦でもあるのかと疑うほどの大声が、情けなくもかすれたことに濃姫は首をかしげた。
この若武者は何が悲しいとこんな泣きそうな顔をするのだろう。
この若武者は何が悲しいとこんな泣きそうな顔をするのだろう。
「…情けない…」
「ボウヤ?」
「あさましい…これが某の心なのか…」
「ボウヤ?」
「あさましい…これが某の心なのか…」
こぶしを握り、瞑目する幸村に、濃姫は小さく息をのんだ。
幸村は気づかぬ風で首を振る。
幸村は気づかぬ風で首を振る。
「濃姫殿を…お守りしたいと、そう…某は、それなのに…っ」
切腹しかねない勢いの幸村に、しばし考える。
自分たちが思った以上に純粋な、甲斐の虎若子。
愛しい、と思った。
しかし、この感情はかつての夫に向けたものとは違う。
ゆっくり、腹筋から胸筋まで舌を這わせる。日に焼けた肌を甘く噛むと、幸村が目を開いた。
自分たちが思った以上に純粋な、甲斐の虎若子。
愛しい、と思った。
しかし、この感情はかつての夫に向けたものとは違う。
ゆっくり、腹筋から胸筋まで舌を這わせる。日に焼けた肌を甘く噛むと、幸村が目を開いた。
「私を好き?ボウヤ」
「…っ、す、す…えぇい、確かにそなたは慕わしい女人でござる!!」
「…っ、す、す…えぇい、確かにそなたは慕わしい女人でござる!!」
夢の中ならと自暴自棄になったのか、自棄ぎみに幸村が吐き捨てた。
そっと微笑んで、濃姫は抵抗しない首筋を撫でる。
そっと微笑んで、濃姫は抵抗しない首筋を撫でる。
「愛する人であれば、欲が出るものよ。手に入れたいと、願うもの」
「願えど…そなたは手には入らぬ、入れられぬ」
「願えど…そなたは手には入らぬ、入れられぬ」
血を吐くように幸村がつぶやいた。
誰にも望まれず、武田の益にもならない、殺すしかない想いは強すぎて鬱屈していく。
誰にも望まれず、武田の益にもならない、殺すしかない想いは強すぎて鬱屈していく。
「夢の中であれば叶うわ」
「汚したくござらぬっ!」
「汚したくござらぬっ!」
幸村にとってはこれは夢の中、己の欲望が形をとったと考えれば潔癖な幸村には苦痛だろう。
濃姫は小さくため息をついた。
濃姫は小さくため息をついた。
「そんな簡単に汚れないわ」
「…何を…」
「甘く見ないで。女を体で汚せると思うのは、男の思い上がりよ、ボウヤ」
「…何を…」
「甘く見ないで。女を体で汚せると思うのは、男の思い上がりよ、ボウヤ」
唇が触れた。
甘い香りが幸村の鼻腔をかすめる。頭の芯がしびれていく。
甘い香りが幸村の鼻腔をかすめる。頭の芯がしびれていく。
「夢よ、幸村」
言い聞かせるように濃姫が囁くのと、幸村が濃姫を組み敷くのはほぼ同時だった。