ギリシャ・ローマ神話抜き書き

しかし人間の立場からすると自然は完全でないが、それに対して主として慰めになることは、神といえども全能ではないということである。なぜならたとえば、彼が自殺をしようとしてもそれはできない。ところがこの自殺というものは人生のあらゆる刑罰のうちで、神が人間に賜った最高の恩恵なのである。また人間に永生を与えたり、死者を甦らせたりすることもできず、生きてきた人間を生きて来なかったようにしたり、高官の地位にあった人をそうでなかったようにすることもできない。それからまた神は過去の事柄についてはそれを忘れさせること以外はどうする力ももっていない。そして(これまたつまらぬ論議によって、われわれが神の身寄りであることを示すものだが)彼は一〇の二倍を二〇でないようにすることも、それと同じような種類のたくさんのこともできない、ということだ。(プリニウス『博物誌』第二巻)
最終更新:2016年01月30日 05:01