- ゲーテ『イタリア紀行』で、ゲーテがシチリアに船で移動する際に、イルカの群れが船についてきていたと
記しているパートがあり、やはりヨーロッパ一帯でよく見かける動物だった模様。
- 『ホメロス風讃歌』所収「アポロン讃歌」に、アポロンがデルポイの神殿に仕える者たちを探していた際に
クノッソスの船に目をつけ、その船に乗り込む際にイルカに姿で乗り込んだ逸話がある。
イルカをギリシア語で「デルピス」と呼び、それにちなんでアポロン自身をデルピニオス、
アポロンを祀る祭壇をデルペイオスと呼ばれる旨が記されており、
この讃歌中にデルポイという地名そのものは出て来ないものの、事実上デルポイの語源説となっている。
- また、実際にクレタ島には「デルピニオス・アポロン」が崇拝されており、
イルカの姿を彫り付けた彫刻も見つかっているとのこと。
- プリニウス『博物誌』第九巻に、イルカはシリウス星が現れる頃にあたる30日間、
方法は不明だがどのようにかして身を隠し姿を見せないという。
- ティルベリのゲルウァシウス『皇帝の閑暇』に、イングランドの漁師たちはイルカを騎士たちが
豚の外観をまとって海に身をひそめたものだと思っており、
かつて地中海で一隻の船が無数のイルカに囲まれた際、若い船乗りがイルカのうちの一匹を矢で傷つけてしまい、
するとやにわに嵐に襲われ、やがて騎士姿の一人の男が海上を馬に乗って走って来て傷つけた船乗りを引き渡すよう
要求したという。煩悶の末その船乗りが名乗り出ると騎士は彼を載せて、今は騎士姿となった傷ついたイルカから
矢を抜くように命じ、これによってイルカを癒すと送り返されたという。
そうした逸話と、またイルカが嵐の前兆を教えてくれることから、船乗りたちはイルカ漁を放棄したという。
壇ノ浦の合戦中、平家の船団に対してイルカが1~2,000匹ほど向かってくるという現象がおこり、
これを
陰陽師に占わせると平家滅亡の凶兆と出た、という記述がある。
参考文献
『四つのギリシャ神話』
『プリニウスの博物誌 Ⅱ』
『平家物語(十一)』
『西洋中世奇譚集成 皇帝の閑暇』ティルベリのゲルウァシウス
最終更新:2017年06月16日 23:03