【太陽がいっぱい過ぎ-夏のチュニジア】
第7話)2ディナールの昼景

《チュニジア旅行記|チュニス|カイルアン|トザール|タメルザ|スファックス|シディ=ブ=サイード》

スファックスから特急で首都チュニスに戻る。シーズンオフといえども流石に観光立国のチュニジア。ガイドブックにあるリーズナブルな宿はどこも満室で、炎天下の中、何軒か宿を探しまくることになる。中央市場に近くの安宿に空室を見つけ、僕は街に繰り出した。

ここチュニスの新市街にある目抜き通りはまるでパリのシャンゼリゼのようだ。お洒落なオープンカフェが立ち並び、ジェラートを片手に闊歩するジーンズ姿の女性も多く、保守的な内陸部とは大違いだ。

チュニスの目抜き通り
パリちっくなチュニスの目抜き通り

目抜き通りの先は旧市街・メディナの入り口になっている。例によってごちゃごちゃ入り組んだメディナは迷い込んだらもう地図など役にたたない。

観光客の多いチュニスだけに、メディナ内の店もやたらと土産物屋が圧倒的に多い。絨毯、金細工、手芸品に骨董屋。さながら家内制手工芸の見本市のようであるが、これがここの生業である。

チュニス-メディナa
チュニスのメディナ
チュニス-メディナb

メディナの中心にはモスクがあった。3ディナールの入場料を払って中に入るが、中庭に5m入ったらもうそこから先は入場禁止。せっかくのパティオもほとんど遠巻に眺めるだけじゃないか。これで3ディナールは高いぞ。

不満を抱きつつ、外に出てまたメディナの迷宮を探索する。すると一軒の骨董品屋の前で親父が声をかけてきた。

 「パノラマはどうだ?」
 「パノラマ?」

 「そうだ、パノラマだ。この店の屋上のパノラマは素晴しいぞ。」

どうやら屋上に昇らせて暮れるらしい。無論ただというわけはなく、2ディナールで話がついた。

親父の後について、骨董屋の中に入っていく。すると中では女性が絨毯を織っていた。

 「どうだ素晴しいだろ。一枚織るのに3ヶ月かかるのだよ。」

あのぉ、絨毯には興味なくて、屋上から景色が見たいだけなのだけど。でも親父はなかなか階段を昇ろうとせず、店の中の絨毯を見せたがる。

ともかく中二階に上がると

 「ここのアンティークもまた素晴しい。ほらこれはクスクスを作るものじゃ。」

クスクスなべ

親父は不思議な2段重ねの蒸し器を指差した。なるほどこれは興味深い。下段のなべでスープを煮ながら、その蒸気で上段のクスクスを蒸す仕組みになっている。が、あまり興味を示しすぎると親父の営業魂に火が点いちゃうので程ほどにしておく。

こうしたいくつかの難所を切り抜け屋上にでた。下からは見えないメディナの入り組んだ白い建物が遠くまで見渡せる。

香港の夜景は100万ドルだそうだが、ここチュニスの昼景(?)はたった2ディナールで手に入る。

あ、あれはさっきのモスクじゃないか。

 「あのモスクは入場料3ディナールもとりおるが、奥には入れん。その点、ここは2ディナールで素晴しい景色が見られる。お得じゃろ。」

確かに親父の言う通りである。モスクの入場料を払うくらいなら、僕も皆さんに2ディナールを親父に払うことをお勧めする。

2ディナールの昼景

ただし、うっかり親父の戦略にはまって骨董品を買っていたなんてことのないよう、くれぐれもご注意あれ。

(続く)


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最終更新:2016年08月27日 10:00