【太陽がいっぱい過ぎ-夏のチュニジア】
第4話)ボチボチだな

《チュニジア旅行記|チュニス|カイルアン|トザール|タメルザ|スファックス|シディ=ブ=サイード》

トザール、チュニジア南部の砂漠地帯に広がるオアシス都市。ガイドブックによれば、ここは近年サハラのエキゾチックな魅力がリゾートとして注目され、シーズンの冬には欧米から直行便さえ飛んでくるという。目抜き通りのハビブ・ブルギバ通りにはツーリストが溢れかえり、いつも大賑わいだという。

オアシス都市トザール

カイルアンからトザールにたどり着いた僕は、一泊25ディナール也の快適な安宿を見つけると、すぐにそのブルギバ通りに行ってみた。しかし、夏のトザールの暑さは半端ではない。気温は40度を超えているのではないだろうか? 昼間に表を歩いている人などほとんどいない。やはり、大賑わいなのは冬の話のようだ。

日陰を選んで歩いてはいるものの、ちょっと日向にでると太陽が容赦なく肌を焼く。携帯していたペットボトルの冷水は知らないうちに生暖かいお湯と化している。

あッ、熱ぃ!-ふとデジカメに触ったら、火傷しそうに熱されていた。

さて、ここトザールでのお約束といえば運転手付きの4WDをチャーターしてのエクスカーションである。街中にはいくつもの旅行代理店があり、山岳の村々を訪れるツアーや、砂漠地帯を巡るコースを提示していた。料金はおよそ30ディナール(約2,300円)と手ごろである。僕は一軒の旅行代理店の中に入ってゆき、拙いフランス語でたずねた。

 「明日山岳の村のコースに参加したいのですが、、、」
 「お一人ですか?でしたら100ディナール(約7,500円)です。」

 「30ディナールではないのですか?」
 「それは6人以上のグループの場合です。」

甘かった。ここチュニジアといえども、さすがに30ディナールで4WDをドライバーごと一人で一日チャータ-できるわけがなかった。

 「では、どこか他のグループに加わることはできませんか?」
 「今電話してみましょう。」

カウンターの兄ちゃんはあちこちに電話してくれる。いくらシーズンオフとはいえ、他のツアーが全くないということはないだろう。

 「他のグループはありません。今はシーズンオフですから。」

ありゃりゃ。やっぱりダメなのね。

僕は悩んだ。せっかくここまで来たのだから大枚はたいて4WDツアーを一人でチャーターすべきか、否か。

しかし、ここチュニジアで100ディナールといえば大金である。すでに金銭感覚が現地化している僕は、効率よく山岳の村々を訪れることのできる4DWチャーターを諦めた。

しょうがない、明日はルアージュ(ローカルの乗り合いタクシー)で村の一つでも訪れてみるか。

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というわけで、本日はトザールの街中を探索する。ここの旧市街メディナは日干し煉瓦でできており、カイルアンのそれとはまた趣きが異なる。茶褐色の迷宮をふらつくと暑さで体力が失われ、古民家を改装した博物館やギャラリーでしばし休憩をとる。

トザールのメディナ

そして庶民の台所である中央市場を訪れた。すると、

 「ジャポネ!サヴァ?(日本人、元気?)」

と店々から声がかかる。さすがシーズンオフとはいえ観光地の市場、外国人慣れしている。

 「ウィ。サヴァ?(元気だよ)」

と僕も返事をするが、この市場の人々、この後に驚愕のニホンゴをもって僕に返してきた。

 「ボチボチ だな」

えっ、今なんて言った? 

 「ボチボチ だな、ジャポネ。」

いっ、いったい誰だ。「ボチボチ」などという地域限定語を、あたかもデファクトスタンダードな日本語の挨拶であるかのごとく流布させた輩は!ともかく、この中央市場では日本人とわかると、「ボチボチ だな」攻撃が雨あられのように降ってくる。

しかし、この市場、我々日本人から見たら全然「ボチボチ」じゃないものに溢れていた。何軒もある市場の肉屋。そこには必ず屠った獣の首が、牛・羊・山羊・ラクダの首が、誇らしげにディスプレイされていた。

チュニジア内陸部の肉屋はお頭付き

ジャポネで、この光景に「ボチボチ」できる感覚の人、そうはいるまい。

(続く)


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最終更新:2023年04月15日 11:55