【太陽がいっぱい過ぎ-夏のチュニジア】
第2話)カイルアンの眠れない夜

《チュニジア旅行記|チュニス|カイルアン|トザール|タメルザ|スファックス|シディ=ブ=サイード》

ここは首都チュニスの南バスターミナル。僕はこれから向かう先を、この場で感じるままに決めようとしていた。バスターミナル内の温度計は32度を指し、表に出ると焼けるような暑さが肌を襲うが、湿度が少ないため日陰は意外に涼しい。

チュニス・南バスターミナル
チュニス・南バスターミナル

うん、これなら内陸部に向かっても大丈夫だろう。

僕は砂漠地帯のオアシス都市・トザールに向かうことに決めた。とはいえトザールまでは7時間近いバス旅になる。そこで、今日は中間にある宗教都市・カイルアンまで行くことに決めた。

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4時間ほどでバスはカイルアンの街に着く。ここカイルアンは、北アフリカ・イスラム教の聖地とされる古い街だ。城壁に囲まれた旧市街・メディナの入り口にあるホテル・サブラにたどり着くと、

「部屋はありますか?」
「シャワー付で、一泊15ディナール(約1,130円)。」

「あのう、クーラーは?」
「クーラー? ないね」

星ナシのこの宿に、クーラーといった気の効いたシロモノは論外であったが、ともかく部屋を見せてもらった。案内された3Fの部屋は意外に風通しがよく、また、メディナの入り口マルティール広場が見渡せ、眺めがよいので、ここに決めた。

マルティール広場
マルティール広場

さっそく、メディナ探検へと繰り出す。陽射しの強い昼間のこの時間に表を歩く人は少ない。が、日干しレンガと白壁に青窓の古い建物に囲まれたメディナはさながら迷宮の世界。ふとした路地の裏に見事な文様の扉を構えた家が現れたりと、歩いていて飽きることはない。

車の入れない、入り組んだ細い路地は複雑で、今どこを歩いているのだろうと思うと、いつの間にかさっき通った道に戻っていたりする。もし僕がクロネコ・ヤマトの社員だったら、メディナ地区の担当だけは絶対避けたいと思った。

カイルアンのメディナa
カイルアンのメディナ
カイルアンのメディナ)

内陸部のカイルアンは、イスラムの風習が色濃く残り、女性は黒い衣装で顔を隠して歩く。フランスの影響を受けたこの国では至るところにカフェがあるが、そこに集い、語らいあっているのも男だけで、女性は一人も見当らなかった。

日暮れ時、イスラムの祈りを告げるアザーンが、あちらのモスクから、こちらのモスクからと競うようにこだまし、ああここは宗教都市なのだなぁと実感する。

夜、クーラーの無い部屋に戻る。その日の汗を流し、今日は未だ夜10時だが疲れたので早めに寝ることとした。

しかし、部屋の前のマルティール広場のカフェで喋くりまくる親父たちや、広場ではしゃぐ子供たちの歓声は12時過ぎまで絶えることがない。これでは寝付けないぞ!カイルアン市民よ、さっさっと帰り給え!全然眠れないじゃないか。

夜もにぎやか。マルティール広場
夜もにぎやか。マルティール広場

そして、少しまどろんだかと思うと、いきなり

 「アッラー、アクバル~♪」
 「アッラー、アクバル~♪」

またも、大音量のアザーン合戦が始まった。何でこんな深夜にと思って、時計を見ると朝の5時であった。多少は眠ったのであろう。しかし、こんな早朝にも関わらずカフェにはもう親父たちが集まり、お喋りが始まり、うるさい!こう騒がしくちゃもう寝れやしない。

早朝からにぎわうカフェ
早朝からにぎわうカフェ

ともかくチュニジア初日、カイルアンの夜。僕はほとんど眠れずに過ごしてしまった。

(続く)


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最終更新:2016年08月27日 10:03