【モザンビークで観光旅行?!】
第9話)河を渡ってカテンベへ

《モザンビーク旅行記|マプート|カテンベ|イニャンバネ|トーフ》

港街マプートの南はエスピリト・サント河に面した港湾地区で、そこからフェリーで対岸のカテンベという街に渡れるという。わずか河一本離れるだけで田舎の雰囲気が楽しめるそうだ。そしてそこには安くておいしいシーフード・レストランがあるというので行ってみる事にした。

マプートの外れにある船着場から対岸に渡る。ガイドブックにはフェリーと書いてあったので大型船を予想していたのだが、それは全長15m程のちっぽけな小型ボートに過ぎなかった。河の河口はもう海と言っていいほど幅広く、おまけに今日は風が強いので少し不安だ。

頼りないフェリー
頼りないフェリー

かなりの揺れを感じながら10分ほどで対岸に着く。長い桟橋を渡っていくと、脇の漁港から潮の香りがプンプンする。さあ、シーフードにありつこう。

マプートと違いカテンベ側には舗装された地面がない。ガソリンスタンドと埃りっぽい広場兼バスステーションを抜け、街に繰り出そうとした。

 おや!

 何もないじゃなか!(唖然…)

広場兼バスステーションが街の入り口と思ったら、実はそこはもう出口で、目の前には砂埃の舞う未舗装道路が遥か先に延びているだけである。

シーフードレストランなんてどこにあるんだ!ロンリープラネットの嘘つき!僕はガイドブックを読み返してみた。するとそのレストランは船着場から5~6km程離れたところにあり、訪れるときは予め電話して迎えに来てもらえと書いてある。アチャー!そこまで読みこんでいなかった。

公衆電話なんてこの辺りには見当たらないので、仕方なく周辺をうろうろしていると市場っぽい一角を見つけ、ズンズンと入っていく。だが、昼過ぎなのでもう市場には誰もいない。怪しげな親父が一人酒を飲んでいるだけだ。そのオヤジの前を通り過ぎようとしたときだ。オヤジが叫んだ。

 「コミーダ!」

コミーダ(=食事)だと! おやっと思ったらオヤジの前には小さな食堂があった。

小さな食堂
小さな食堂

 「ここはレストランなのですか?」
 「そうだ。」

 「モザンビーク料理はありますか?」
 「ああ、あるとも。さあ、お入り。」

どう考えても観光客が訪れる雰囲気のない薄汚い食堂であるが、よく考えたらここまでモザンビークの地元料理というものをあまり食べてなかった。この国の観光客が入るレストランでは、たいていチキンか魚のグリルしかなく(ただし素材が新鮮なのでとても美味!)、ピュアな地元料理にありつける機会があまりない。僕はシーマと呼ばれる庶民の定番料理に始めて挑戦してみることにした。

オーダーを頼むと直ぐにおばちゃんが水差しを持って現れた。そして「手を洗え」と水差しの下に手を出すよう促す。もう片方の手には洗面器をかかえ、こぼれた水はそこで受け取る仕組みだ。

僕はいろんな国の安食堂を体験してきたが、こんなハンドウォッシュサービスに出くわしたのは初めてだ。意外に衛生意識が高いのでビックリしたが、その手洗い用水差しの水はコップにも注がれ、飲み水としても供された。

 う~んこの水飲んでも大丈夫だろうか?

やがて運ばれてきたのは牛肉のトマトスープ煮とシーマであった。シーマというのはタロイモ系の粉を蒸した粘り気のない餅みたいなものだ。これをスープに浸しながら食べるが、なかなか美味である。そしてこのセットメニューがたったの30メティカシュ(約140円)!

シーマ
シーマ

豪華シーフードにはありつけなかったけど、かえって珍しい体験ができて良かったかもしれない。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

食事の後はまた埃っぽい広場を一回りして、マプートへ戻る。桟橋には午前の漁が終わったのだろうか、漁師のダウボート(帆掛け船)が次々と戻ってきた。浜辺にはその魚を買い付ける人々が集まり賑わっている。風に乗ったダウ船のスピードは驚くほど速い。この強い風に乗って大航海時代の船乗りたちは東洋までやってきたのだから、目の前のダウ船のスピードなど驚くに値することではないのだろうが、対岸のマプートの高層ビルを背景に、昔ながらの帆掛け舟が行き交う光景はなにかとても異質に感じる。

帆掛け舟
帆掛け舟はこの国の漁業の主役

またまたちっぽけな渡し舟でマプートに戻る。今度のボートは行きの船よりさらに小型で、しかも屋根がない。乗客は進行方向右側からの強風をまともに受ける。河を渡りだすとその右側に座っていた乗客たちは波しぶきを避けようと一斉に左側に移動した。 

 あ、危ない! 

船が左に傾いた!こんな荒れた河口に放り出されるのは真っ平ごめんだぁ!と思っているうち。こんどは急に速度を緩めた。そして次の瞬間、大型船の波紋が我々の小船を襲った。

 「あわわっ。ひっくり返るぅ」

思わず声を上げ一瞬生きた心地がしなかったが、なんとかその波紋をやり過ごし、その後船は何事もなかったかのようにマプートに着いた。


片道わずか10分であるが、随分と違った姿が見えたカテンベへの船旅であった。

(続く)


もどる < 9 > つぎへ




最終更新:2016年08月24日 09:34