【東チベット‐幻の僧院都市を目指せ!!】
第5話)甘孜(カンヅ)の散歩
《東チベット旅行記|成都|丹巴|甘孜|康定|アチェンガルゴンパ|》
アチェンガルゴンパに行けないことはわかったが、もしかしたら何かの拍子で行けちゃうかも、そんな淡い期待を込めて、翌日アチェンガルゴンパ行き乗合タクシーの集まる幸福大酒店のあたりをフラついてみた。アチェンガルは中国語で亜青(ヤーチン)だ。
アチェンガルゴンパ行き乗合タクシーの集まる幸福大酒店前
「お前、どこにいく?」
「亜青(ヤーチン)に行きたい。日本人だが行けるか?」
「行ける、行ける、付いてこい」
え、行けるってどういうこと。もう外国人禁止が解除されたのか?
おぼつかない中国語でのやり取りなので不安だが、ともかく客引きに連れられ運転手の所に行くと、
「日本人、ダメだ。行けないよ」
やはりそうであったか。客引きは日本人だろうが中国人だろうが紹介すればそれで商売になるが、運転手は乗せてはいけない人物を連れていくと公安に目を付けられ、今後の仕事に支障が出てくる。連れて行くわけにはいかないのは道理だ。
仕方がない。今日は1日、甘孜(カンヅ)の街を散歩だ。
街の裏手の丘にある寺院や隣の高台にある仏塔を訪れてみる。丘の上からは遠くに万年雪をたたえた山々が望め、大変清々しい。
途中チベット族の村を通りすぎる。チベット建築には細かい木彫りの彫刻が欠かせないが、村のあちこちには木工所があり、どことなくおが屑の香りが漂い心地よい。
そして意外にも甘孜(カンヅ)には温泉があった。しかも泊まった宿の近くが温泉街だった。
ちょっと埃っぽい狭い坂道を降りていくと「温泉」と看板を掲げた施設がいくつもあった。基本的に温泉は全て個室になっており、使うときになると湯船に太いパイプのバブルを捻ってお湯を注ぐ仕組みだ。
脱衣場とかロッカーとかそんな区別はなく、湯船と共に全てが一つの個室の中に入っている。これは常に貴重品を持ち歩く旅のスタイルのオイラにとっては、目の届く範囲に貴重品があるので安心だ。
心おきなく温泉を楽しんだのは良かったが、難関は最後に待っていた。宿に戻る途中の細い未舗装道路。ここで風でも吹こうものなら、濡れた髪はあっという間に埃まみれになってしまう。
頼むから風よ、吹かないでおくれ!
と、チべットの山の神様に向かって心の中でマニ車を回しながら駆け抜けたのであった。
最終更新:2019年06月09日 23:29