【モザンビークで観光旅行?!】
第6話)マプート行きの特急バス

《モザンビーク旅行記|マプート|カテンベ|イニャンバネ|トーフ》

イニャンバネに二泊した後、首都マプートに戻ることにした。行きは飛行機だったので帰りは特急バスで節約だ。片道250メティカシュ(約1200円)は飛行機の1/14と魅力的だが、所要7~8時間はちと気が重い。

その特急バス、前日にイニャンバネのバスターミナルで切符を購入しようとうろついたのだが、切符売場が見当たらず戸惑っていた。

仕方なく辺りの人たちに 「ビリエッタ(切符)、マプート、オーンジ(どこ?)」 と聞き込みながら探していると、おっちゃんが教えてくれた。

 「アキ(ここ)、アマニャン(明日)、シンコメイヨ(5時半)、OK?」

「朝の5時半」 だと! それは随分と早いなぁ。

出発の日、夜も明けぬうちに宿を出る。ペンションの従業員は皆眠っている。あっ、そういえば未だ宿代払っていないぞ。このまま逃げちゃえばタダじゃん。僕は邪悪な誘惑に負けそうになりながらも、なんとか良心が打ち勝って部屋に宿代を置いていった。

外はまだ真っ暗で気味悪い。薄ぐらい街灯の明かりを頼りにトボトボとぼとぼと歩いてゆくと5時前にバスステーションに着いたが、乗客はもう大勢集まっていた。

暗闇をトボトボ歩く。心細いゾ!

「マプート、シンコオラス(5時00分発)」と呼び込みが迫ってくる。あれれ5時30分発じゃなかったの。危うく乗りそこなうところであった。時間にルーズなのは覚悟していたが、予定より早いとは想定外だ。まあ間に合ったからどーでもいいのだけど。

おお、特急バスだ。昨日のワゴン車と違って大型バスじゃん。これならトイレも付いてそうだから、道中で自然が僕を呼んでも安心だぜ。へへへ。

薄暗がりの中、マプート行きの特急バスはタイタニック号のように豪華に見えた。だが、錯覚とは恐ろしいものだ。乗り込んでみるとそれは旅館のマイクロバス程度のチャチな代物だった。無論トイレなど付いていない。

マプート行きの特急バス
これでも特急バスなのだ。

バスはすぐさま満員となった。車内で外国人は僕一人。みんなたくさんの荷物を抱えて乗り込んで来る。すぐにマプートに向け出発した。車内は陽気なアフリカンポップスが チャラチャラ♪ チャラチャラ♪ 全開で流れている。が、このスピーカー、妙な音がするなぁ。いや待てスピーカーからではないぞこの音は。左上の網棚のダンボールから漏れてくる音だ。なんだこの音は。

僕は音のするほうに耳を澄ました。すると、

 ピヨピヨ。ピヨピヨ。 ピヨピヨ。ピヨピヨ。

 ピヨピヨ。ピヨピヨ。 ピヨピヨ。ピヨピヨ。

『ひよこ』だぁ!網棚に『ひよこ』の大群が詰まった段ボール箱を載せるか!<こら。

モザンビークの特急バス、それは家禽と同居の旅であった。

(続く)


もどる < 6 > つぎへ




最終更新:2016年08月24日 09:28