【伊良部 島宿物語】
第4話)ゲストハウスの働き方

《沖縄旅行記|伊良部島|下地島|GUEST HOUSE nesou(びらふやー)》

伊良部島で泊まったゲストハウスはなかなかユニークな宿であった。元お客さんで現在は移住者となった者が何人もいることは前に述べたが、ここに来るのはほとんど常連客で、今回も10人ほどいた客の内で新規は僕を含めわずか3人程。GW1週間をここだけで過ごすリピーターも少なくない。

伊良部島旅行記|近くの名所は佐和田浜ぐらいだが…
近くの名所は佐和田浜ぐらいだが…

近くに綺麗なビーチがある他にこれといった観光スポットもない佐和田地区にあって、何がこんなに旅行者を惹きつけるのだろうか?周りには飲食店らしい飲食店すらない、立地的にはハンディのあるエリアなのに…

だがよく観察してみると、周りに何もないことを逆手にとって、小さいながらも手作り感覚であらゆる旅行者のニーズを満たしていることがわかる。

例えば食事、わずか800円で美味しいオーナー夫妻の手料理を提供してくれる。そして食事は宿泊客も宿のスタッフもみんなで一緒に食べるのがルール。自炊組の客も一緒に食卓を囲む。そうすることで自然と一体感が醸成される。

「ではじゃんけんで負けた3人が食器を洗います。これがうちのスタイルです」

食後にはこんな全員参加のゲーム(?)まで用意されていた。そして夕食後は自然に和気あいあいとした飲み会に流れてゆく。

また宿泊客限定ツアーも客と宿との一体感を高める仕掛けの一つだ。こうして随所に客同士が顔見知りになる工夫が備わっている。

伊良部島旅行記|宿泊客限定ツアー
宿泊客限定ツアー

結果、GWはリピーターの予約が殺到していた。僕は2週間前の電話で予約が取れたのだが、それは殆ど奇跡に近いことだと言われた。

にしても、これらの仕掛をオーガナイズするオーナー夫婦の気苦労はいかほどのものか。食事やらツアーやらで四六時中接客していることになる。これを労働ととらえるならトンでもないブラック企業だ。だが自らも旅行者であるオーナー夫婦は、こんな風に旅人同士が交流できる場を作りたかったのだという。視点を変えれば、自分たちの暮らしぶりそのものが生業になっている。そうとらえるなら、これこそ究極の働き方改革の実践ではないか!!

ともかく、ほとんどの客は満足して帰り、またリピーターとして戻ってくる。が、中にはモンスターな客も存在する。

「以前、宿泊前に60回もメールのやり取りをした客がいましたが、この客には参りました」

なんでもその客とは某T京大学卒の中年男性で、研究職的な仕事についているらしい。その人物が自閉症かなにかの若者たちを率いてこの宿で合宿を行った。

そして合宿の最後に、若者たちに自分たちの将来についてプレゼンをさせ、そこにオーナーも出席を求められたのだという。若者たちのプレゼンは素晴らしくオーナーも感心したと言っていたが、最後に引率男性の話を聞かされた。それが自分の自慢話のような酷い内容だったらしく、またオーナーは宿の仕事もあるため、話の途中で席を立ったのだが、そのことがT大卒の男性のプライドをいたく傷つけた。

合宿が終わった後、口コミサイトに延々と「やれオーナーは失礼だ」だの、「鴨居を直せ」(構造的に直せない)だの、醜い投稿をされてしまった。それも複数IDを使い分けてという手の込みようだ。

「時間をかけて協力したのに、こんな仕打ち受けちゃうんですね」

SNS全盛の今、ちょっとしたボタンの掛け違いで 悪意のある評価を受けてしまう。ゲストハウスオーナーの悩みは尽きない。

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そんなこんなで世話になった宿を離れる日がやってきた。宿を出る前、食堂に貼られた夕食メニューをチェック。あれ、何これ!!

伊良部島旅行記|今今日の夕食は、浜カレー!!
今日の夕食は、浜カレー!!

「今日の夕食は、浜カレー。18:30にここを出発」

とビーチへの地図が貼られている。

 「車で食材を運んで、浜辺でカレーを頂くんですよ」

そんなイベントが残されていたのか!! それはまた次回に体験せねば、

 えっ次回?

やばっ、これって移住者への道か!!

(FIN)


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最終更新:2018年05月20日 10:17