【モザンビークで観光旅行?!】
第5話)狭いワゴンと広い海
《モザンビーク旅行記|マプート|カテンベ|イニャンバネ|トーフ》
翌日はイニャンバネからトーフビーチに日帰り旅行と洒落込んでみた。市場脇のバスターミナルからトーフ行きのシャパ(ワゴン車を改造したミニバス)が頻発している。9人乗りのバンは客が満員になるのを待って出発する。このスタイルはタイの田舎街などと同じシステムだが、小柄なアジア人と違って巨体のアフリカ人との3人がけはかなり窮屈である。それから人種差別をするわけではないが、黒人特有の甘酸っぱい体臭が車内に充満し、鼻が慣れるのに少々時間がかかる。
乗り込んで待つこと10分もすると満員になった。さあ、出発だ。トーフまでは40分ほどのミニトリップだ。少し街を離れるともう周囲はトンガリ屋根の草葺家屋が点在する農村地帯に入る。このまま長閑なドライブが続くのだなあぁ思った矢先、車は急に路肩に停車した。「何事?」と思うまにワゴン車のスライドドアが開き、人が乗り込んできた。ちょっと待て、ミニバスはもう補助席まで使って満員だぞ。これ以上乗れるわけがないじゃん。
「もっと詰めて!」
おそらくそんな意味のことを運転者は叫んだのであろう。本来3人がけのシートに4人目が立ったままの乗り込む。こうなると座っている方だって半身にならざるを得ない。一説によると、僕が通勤で使っているT電鉄D線は日本一混雑する電車だというが、今のこのバンの中はそれに勝るとも劣らぬ圧迫度である。
こうなると例の甘酸っぱい黒人臭がますます密度を濃くして僕の鼻を襲ってくるのだが、それにもいつしか慣れたのか、あるいは自分の体臭までもがその匂いに染まって変質してきたのか、匂いなんて気にならなくなってきた。
ヤシの木の茂る田舎の一本道を定員オーバーのミニバンはガタゴトと走って行く。しばらくしてワゴンバスは小さな広場に停車した。乗客がどんどん降りていく。どうやらここが終点トーフのようだ。
窮屈なワゴンを降りて前方を見る。おお!本当にビーチだ。ありゃりゃサーフボードを抱えた白人どもが闊歩しているぞ。なんか、ここはハワイかタヒチみたい!(どちらも行ったことないけど、イメージ的にそんな気がしたのでそう書いた。文句あるかぁ!)
ともかく、狭いワゴン車の後には、広くて青い海が待っていた。モザンビークにこんなリゾートリゾートしたところがあるなんて、全く予想外である。
さて、ここらで遅いランチでもとるか。僕は海沿いのレストランに入った。
「メニューをお願いします」
するとウエィターはちょっと困った顔をした。そして、ゴ ゴ ゴ、ゴッー!と何か床を引きずる音が。「何事?」と思ったら、、、それは店の表にあったメニューの看板そのものだったぁ。
レストランで「メニューを見せて」と言ったら看板を引きずって持ってきた。
豪快過ぎないか、モザンビーク人!
最終更新:2016年08月24日 09:27