【格安で行こう、マチュピチュの旅】
第9話)クイを喰う

《ペルー旅行記|クスコ|マチュピチュ|ティポン|リマ|》

南米のグルメ国と呼ばれているペルーにあって、アンデス地方には独特の食材がある 。

 CUY(クイ)である。

モルモット系の小動物で、英語でギネアピッグ、日本語ではテンジクネズミと訳されている。

ペルー旅行記|調理前のクイ
調理前のクイ

このクイちゃん、何千年も前からここアンデスで食べられてきたという。飼育に大きなスペースを必要とせず、エサは人の食べ残した野菜クズでよい。育てる手間がかからないため広まったらしいが、クイを使った料理はクスコやマチュピチュのツーリストレストランで必ずメニューに載っている名物だ。

クスコから南、車で30分ほど離れた所に、クイの本場とされる村がある。ティポンというその村は、近くにインカの遺跡があることでも知られているが、名物のクイを食べるためにクスコ市民がこぞって訪れるという。クイを喰うならぜひ本場で味わいたい。そう思ってクスコやマチュピチュでは我慢し、満を持してクイを食べに本場の村を訪れてみることにした。

クスコのサンフランシスコ教会の前からティポン方面に向かうローカルバスが出ていた。ティポン村に着いたら教えてくれと運転手に言ってはいるが、英語が通じているのかは怪しいところだ。

ムム、あの像は何だ?

ウエイトレスの像だ、あっクイの丸焼きの皿を抱えている。ここだ、 ここ以外にクイの村があるものか。

ペルー旅行記|ティポン村=クイの丸焼きを抱えたウエイトレスの像
ティポン村=クイの丸焼きを抱えたウエイトレスの像

バスを飛び降り、通りに沿って少し歩くとCUYERIA(クイエリア)と書かれた看板が目に付くようになった。ピザ屋がPIZZERIA(ピッツェリア)であるように、クイ屋はCUYERIA(クイエリア)なのだ。

ペルー旅行記|クイ料理専門店CUYERIA(クイエリア)
クイ料理専門店クイエリアとピザ釜ならぬクイ釜
ペルー旅行記|ピザ釜ならぬクイ釜

幾つかある店の1軒にふらっと入ってみた。入口はパッとしない店だったが、入るとすぐ中庭があり、そこにはピザを焼くような石釜が鎮座していた。もちろん焼かれているのはピザではない、クイちゃんである。

釜の中にはこんがりローストされたねずみのようなクイちゃんの姿焼きが横たわっていた。丸焼きになってもどことなく愛くるしさが残っており、こんな可愛い動物を喰ってはならぬと、どこかの動物保護団体が文句を言ってきそうであるが、顔のあたりの歯がむきでた姿はなかなかグロテスクでもある。

そんなクイちゃん、一人で丸ごと一匹は食べきれないので、ハーフでオーダーした。そしてしばらくすると真ん中で半分にカットされたクイちゃんの姿焼きがお出まし。恐る恐るナイフとフォークを手にその肉を口にしてみる。

ペルー旅行記|ハーフカットのクイちゃん姿焼き
ハーフカットのクイちゃん姿焼き

あら美味しい。

ハーブを詰めてローストした肉は、鶏肉に少し獣の滋味を加えたような味わい。皮はクリスピーに焼かれつつも独特の弾力がある。変な臭みもなく肉質も柔らか。ネズミ類の小動物というものは結構美味いものだと、この歳になって久々に新しい味覚を覚えた。

ところでこのクイの姿焼き。1/2匹分の肉だけでもかなりの量なのに、負けじと付合せのベークドポテトやラザニアもボリュームたっぷり。これでたったの25ソル(約875円)とは恐れ入った。

それにしても、半匹分でもなかなか食べきれないのに、周りのペルー人たちの胃袋は何だ!! 一人一匹は当たり前 。隣の席では女の子もぺロッと一匹を平らげてる。

ここでもペルー人の底なしの食欲に驚愕するオイラであった。

(続く)


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最終更新:2017年11月01日 00:06