【格安で行こう、マチュピチュの旅】
第5話)徒歩で下山をしてみたら…
《ペルー旅行記|クスコ|マチュピチュ|ティポン|リマ|》
アグアスカリエンテス村とマチュピチュ遺跡の間はシャトルバスで結ばれている。つづら折りの急な坂道を登って行く登山バスは往復24ドルとかなりお高い。東京スカイツリーも展望台の入場には3000円かかると言うから、高いところにある観光地は値段も高いのが世界の相場なのであろうか。
バス道路をショートカットするように設けられた登山道
だがスカイツリーと違ってマチュピチュの場合この高いところへの上り下りを節約する方法がある。徒歩である。ヘアピンだらけのバス道路をショートカットするようにハイキングコースが設けてある。ここを歩いて行けばもちろんバス代はタダ。しかしさすがに登りを歩くのはきついので行きは半額の12ドル払ってバスに乗り、帰りのみ徒歩で下山することにした。
推定99% の観光客が往復ともバスを利用するのに対し、ハイキングコースを行くツーリストは限られている。それでもこのニッチな市場に勝機ありと、登山道の途中で物売りのおばちゃんがいたのは驚きであった。
登山道の途中で物売りのおばちゃんがいたのは驚きであった
登山道のほとんどは石づくりの階段であるが、これが結構足腰に負担をかける。昨日は水力発電所から10km歩き、また今日の午前中は遺跡巡りをし、疲れが溜まって足の筋肉はパンパンだ。おまけに石の階段は段差が一定ではなく、ちょっと気を抜くとすぐバランスを崩してしまう。だんだん筋肉が耐えきれず、足を一歩進めるたびに膝がプルプル笑い出す。
だからといって休みを取ろうとすると今度は別の敵が襲ってくる。
虫である。
アンデスの高山地帯に虫などいるものかと思っていたが、いるのである。それも超小型の蚊のような虫が群れをなして襲ってくる。 僕はリュックから虫除けスプレーを取り出そうとして愕然とした。
「あ、持ってくるの忘れた。」
日本を旅立つ時はきちんと荷物に入れておいたが、宿に置いたままだった。
おかげで疲れて立ち止まると、たちまち虫の大群に襲われ、休めたものではない。そうは言っても休憩をしないわけにはいかない。でも立ち止まるとまた虫の大群に血を吸われる。叩いても叩いても敵は圧倒的多数。約1時間半近くかけて麓にたどり着いた時、もう足はガクガク、手は虫刺されでボロボロ。全く情けない限りだ。
ここマチュピチュには「グッバイボーイ」と呼ばれる子供達がいると聞く。バス道路の山頂で観光客に手を振り、そのバスがつづら折りの道を降りていく間に素早く登山道を駆け下り、麓で観光客を待ち受けチップをねだるのだと言う。
本当にそんなことができるのか!!
僕が1時間半かけて下りて来た道をバスより早く駆け下りるなんて信じられないが、マチュピチュという世界一の不思議を創り上げたインカの末裔なら、そのぐらいのことはたやすいに違いない。
ところで、この下山時に虫に刺された跡が日本に帰った頃にとんでもなく腫れ上がってしまった。万が一変な病気だったらどうしようとネットで調べてみると、アンデス地方にはサシチョウバエという虫がおり、これがリーシュマニア症という死に至ることもある感染症を媒介するとのこと。
「あっ、この虫だ、オイラが刺されたのは。」
ネットで見つけたサシチョウバエの画像を見て僕は背筋が寒くなった。
慌てて医者に駆け込むと、
「私も長いこと医者をやっているが、カルテにマチュピチュと書き込んだのは初めてですよ、ハハハ」
と、こちらの心配をよそに「リーシュマニア症なんてめったになる病気じゃない、まずは普通の薬で治しましょう」 と医者に笑い飛ばされた。
確かに、一週間程で 虫刺されの腫れは引いた。だが、この通院費と薬代で3950円かかった。マチュピチュで節約したと思ったバス代12ドルは、こうしてはかなく吹っ飛んでしまっていたのであった。トホホ~ (;´д`)
最終更新:2017年10月31日 23:59