【桂林(クイリン)・陽朔(ヤンシュオ)、山と川と田んぼの旅】
第7話)啤酒魚(ピーチォイゥ)=ビール魚 に挑戦

《中国旅行記|桂林|龍脊|陽朔|漓江》

「啤酒魚(ピーチォイゥ)」ー 直訳すると「ビール魚」。桂林(クイリン)・陽朔(ヤンシュオ) の名物料理である。

街中を歩いていると あちこちでこの文字の看板を目にする。一体どのような料理なのかというと、草魚や鯉などの川魚をまるごと一匹揚げた後、唐辛子を効かせたスープとビールで煮込んだ料理だ。高級店では店の前に水槽を並べ、ピチピチ跳ねている中から好みの魚を指名し、食べさせるところもある。

桂林 陽朔 旅行記|「啤酒魚(ピーチォイゥ)」の看板を掲げた店
「啤酒魚(ピーチォイゥ)」の看板を掲げた店をあちこちで目にする

もちろんここに来たからには、せっかくの名物料理、味わって帰りたいものだが、一つ問題があった。この料理、必ず魚一匹を丸ごとを使ってでしか提供されない。半身であるとか切り身であるとか、そういう中途半端が許されていないのだ。

大陸中国で一人旅をして困るのがこの ”名物料理小分けしません” 問題だ。偉大なる特色料理をチマチマ味わうなどもってのほか!といった思想でもあるのだろうか。

とはいえ僕一人で魚一匹を平らげるのは容易ではないし、お金もかかる。泊まったゲストハウスの従業員に「啤酒魚(ピーチォイゥ)を少量で提供している店はないか」と聞いてはみたが、案の定、

 「没有(メイヨウ)」

と、わかりきった答えが返ってきた。

できるだけ安く、かつスモールポーションで提供してくれるお店はないか、滞在初日から小まめに数々のお店をチェックをしているうち、とうとう最終日になってしまった。

中国で料理の値段を調べるという行為はそう簡単ではない。店頭でメニューを眺めていると

  「歓 迎 光 臨 (ファンイン クワンリン)、 いらっしゃいませ~」

とあっという間に服務員に囲まれ、席に拉致されかけてしまう。中国観光地のレストラン街は、新宿歌舞伎町に勝るとも劣らぬ客引き王国なのであった。店員が気づかないうちにメニューの確認を試みるのだが、ただでさえ中国語メニューを理解することは難しい。それを瞬時に読み取るなど 困難極まりない話である。

しかし、見つけた。お値段「38」とある。38元は約646円。他の多くの店は70元(約¥1190)前後の値段をつけているところが多かったのが、38元ぐらいの値段なら十分1人で食べきれる量に違いない。

で、席につくと 服務員が電卓を取り出しパチパチとキーを叩く

 「90元(約¥1530)です」

 「えっ38元(約¥646)じゃないの」

 「1斤が38元です。」

ああ、しまった。”斤”は中国独自の重さの単位で約500g。 表示単位は 一人前ではなく1斤 単位であった。値段が90元ということは、料理は軽く1kgを超えているということである。喰えるか、そんなに‼

  「ああ、ご御免なさぃぃ」

とすたこらそのお店を出て、結局1鍋68元で提供している別のお店に入った。もう少量で提供する店を探すのはあきらめるしかなかった。

そして運ばれてきた啤酒魚(ピーチォイゥ)は、たっぷり野菜と淡白な白身に、辛いスープがからまり、美味であった。

桂林 陽朔 旅行記|丸ごとの魚一匹を煮込んだ啤酒魚(ピーチォイゥ)
丸ごとの魚一匹を煮込んだ啤酒魚(ピーチォイゥ)

だが68元とはいえ提供されるのは丸ごとの魚一匹。それを一人で平らげるのは容易ではない。 初めは本当に旨いと思っていたのだが、途中からだんだん 飽きてきた、というか苦しくなってきた。もう意地で完食するしかない。いやこの程度の量など大食い選手権で活躍するフードファイター達から見たら屁の河童のハズた。食べきれないわけがない。と自分を鼓舞しつつ、何とか食べきった。

完食という勝利の余韻に浸りつつ周りのテーブルを眺めてみると、多くは中国人の団体客であった。無論彼らも同じこの名物料理を頼んでいるのだが、複数人でつっついているにも関わらず 結構食べ残して食事を終える人達が多い。

 なんともったいない

と言うか、世界第二位の経済大国の人民たちよ。君たちが残した料理の量、おいら一人分にちょうどよいじゃないか。 そうだ!! 人民とオイラで食事をシェアしていれば、料理が食べ残されることもなく、オイラが食べ過ぎで苦しむこともない。

待てよ。10億の人民が一日に食べ残す量は とてつもないボリュームになるハズ。その食べ残しを、求める人にシェアすることが出来たのなら。。。

おお、これぞ新たなシェアエコノミーのビッグアイディアではないか。

万人に関わる食べ物の分野の裾野は果てしなく広い。ここを突っ込めばエアB&Bやウーバーのような 世界的ベンチャーになるのも夢ではないゾ。素晴らしい。これで数年後はIT長者だ。

― 相変わらず、取らぬ狸の皮算用だけは得意なオイラであった

(劇終)


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最終更新:2017年05月28日 20:07