【バルカン三国縦断記】
第3話)こんなズサンでいいんですか? 国境越えって??

《バルカン三国旅行記|セルビア|ボスニア・ヘルツェゴビナ|クロアチア|》

ボスニア国境に近いウジツェは、周囲を山に囲まれた静かな街である。

バルカン三国旅行記|デェティナ川沿いに開けたウジツェは、周囲を山に囲まれた静かな街である
デェティナ川沿いに開けたウジツェは、周囲を山に囲まれた静かな街である

昼過ぎウジツェに到着し市内を散策していると雨が降ってきた。最初はポツリポツリと、そして次第に雨脚が強まり、いつしかとんでもない土砂降りとなってしまった。まったく山の天気は変わりやすい。その日は結局1日おとなしくするしか術はなかった。

翌朝早く、隣国ボスニアの首都サラエヴォに向けてウジツェを出発した。多くの場合、国境は山中に設定されることが多いが、ここセルビアとボスニアのボーダーも例外ではない。

ウジツェを出発したバスの車窓は、羊や牛が草を食む長閑な田園風景から、すぐに曲がりくねった山道へと変わっていった。そしてしばらく山岳地帯を駆け抜けると、程なく料金所のようなブースが現れた。

バルカン三国旅行記|前方のちっぽけな料金所もどきが出入国管理事務所
前方のちっぽけな料金所もどきが出入国管理事務所

するとバスの運転手は乗客に声をかけた。

 「はいパスポートを出して」

えっ、パスポート。まさかこんなちっぽけな料金所もどきが出入国管理事務所だというのか。

運転手は乗客の身分証明を集めだした。そして束ねたパスポートやIDカードをまとめてポンと係員に渡した。

 えっ、まとめてポンでいいの?

曲がりなりにも出入国管理だぞ。ふつうは担当官が一人ずつ顔を見て、パスポートの人物と相違がないかチェックするものだ。ところがここでは、担当官はパスポートの束を受け取ると、しばらくしてそのまま運転手に返したのだった。個人個人のチェックなど一切ないから、いくらでも密入国できてしまうではないか?いいのか?こんなユルユルで。

バルカン三国旅行記|運転手は乗客のパスポートをまとめてポンと係員に渡した。
運転手は乗客のパスポートをまとめてポンと係員に渡した。

ともかくセルビア側の出国手続きを済ませ、今度は数百メートル先に進んでボスニアの入国審査を受ける。が、ここでもまた乗客のパスポートは一括して担当官にポンだ。またしても一人一人を確認することなく手続きが終了した。

 「ほらおまえのパスポートだ」

そして僕は返却されたパスポートのビザ欄を見て驚愕した。

  無いではないか

そう、セルビアの出国印も、ボスニアの入国印も、どちらもどこにも押されていない。

これでいいのか?これではボスニアを出国する際、「入国印がないだろ」と問題になるのではないか!!

そう懸念した僕はせめて入国スタンプだけでも押してほしいと直接審査官に詰め寄った。だがヤツは国境管理の職員のくせに英語を全く理解できないときた。

なんとかスタンプが欲しいということを理解した審査官はさも嫌そうにスタンプを力任せに押した。すると、

 バキッ

あまりに力を入れて押したものだからスタンプが潰れてしまった。何という馬鹿力!  いやそんなことより、潰れた勢いのままいスタンプ台が滑って印字されたため、ビザ欄には滲んだインクで日付も地名も判別不能な入国印が押されてしまった。

こんないい加減な入国手続きで大丈夫なのだろうか?

ボスニア出国時にイチャモンをつけられないことを祈って、僕は国境を越えたのであった。

(続く)


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最終更新:2016年11月06日 08:27