【海あり山ありエアコンなし-南インド・ケララの旅】
第10話)南インド旅行の完結

《南インド ケララ 旅行記|トリヴァンドラム|アレッピー|クミリー・テッカディ|コーチン》

コーチンの見所は、フォートコーチン地区に集中していた。ヴァスコ・ダ・ガマの墓がある教会を訪れたり、インドでは珍しいユダヤ人地区をぶらついたり。

南インド・ケララ 旅行記|ヴァスコ・ダ・ガマの墓がある聖フランシス教会
ヴァスコ・ダ・ガマの墓がある聖フランシス教会

夜には伝統芸能・カタカリを観に行ってみた。演技の1時間前からステージ上に役者が横たわり、メイク係が入念に化粧を施す。その化粧をしている楽屋裏の場面すらもがプログラムの一部を構成しているとは驚きだった。

伝統芸能・カタカリの舞台
南インド・ケララ 旅行記|伝統芸能・カタカリの舞台

そうこうしているうちに、旅の時間は終わりを告げてしまった。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

帰りもコロンボ乗継ぎで東京に戻る。コーチンからコロンボまではわずか1時間のフライトだ。

 「お客様の座席はこちらに変更となります」

搭乗直前に係員から渡されたボーディングパスには、カウンターでチェックインした時とは別の座席番号が書かれていた、「4A」と。

 「この座席は窓側ですね」

基本、通路側の座席を好む僕は、勝手に座席を変えられたことにムッとして、抗議しようとした。すると

 「ビジネスクラスです」

こ、抗議しません、仰せの通りにいたしまするぅ~。

久々のアップグレードに小躍りしつつも、一方で冷静にフライト時間を計算した。

コーチン=コロンボ間の飛行時間はわずか1時間、離陸と着陸にそれぞれ15分かかるとして、残り30分が機内食の時間だ。勝負の時間はたったそれしかない。その30分がもし、気流が乱れてシートベルト着用サインでも点灯しようものなら、せっかくのビジネスクラスの食事サービスが流れてしまう。

 このまま何も起こらないでくれ!!

と神に祈った、いや待て、ここ南インドはキリスト教・ヒンズー教・イスラム教と宗教が入り混じった土地だ。いったいどの神に祈ればよいのだ。そうだ、コロンボ便は仏教国スリランカに向かうのだから、仏に祈ればよい。

 南無阿弥陀仏~!!

この願いが釈迦に通じたかどうかは知らんが、ともかく飛行機は無事離陸し、乱気流に巻き込まれることもなかった。

南インド・ケララ 旅行記|陶器の器で供される、ちゃんとした機内食
陶器の器で供される、ちゃんとした機内食

そして陶器の器で供される、ちゃんとした機内食と何年ぶりかで対面することができた。

しかしである。飛行時間1時間というのはあまりに短い。実質30分の食事時間となると、スッチーも配膳し終えたとたん、すぐ気持ちが片付けモードに入っていることが手に取るように判る。

こちらもこちらで、折角のビジネスクラスの食事、時間切れで食べ残して片付けられてしまうことだけは避けたい。だが、その思いが強すぎたのか、嵐のように掻き込んで、結局何を味わったのかよく覚えていない始末。

そしてあっという間にコロンボ空港に到着、東京行きの便に乗継いだ。

無論、東京便もアップグレードなどという奇跡が起こらなかったのは言うもでもない。

- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

こうして僕の南インド旅行は終わってしまった。一週間をともにした2冊のガイドブック「C球のAき方:南インド篇」と「LンリーPラネット:ケララ篇」は、インドの大地の砂埃をかぶり、すっかり茶色く変色してしまった。

実はこの2冊、某区立図書館から借りたものであるが、このまま普通に返すと職員にヤな顔されるのは必至だ。そこで休暇明けのある日、早起きをしてそっとブックポストに返却しに行ったのだった。

今の所、図書館から貸出禁止命令は来ていない。どうやら僕の南インド旅行も無事に完結したようである。

(FIN)


もどる < 10 > 目次へ




最終更新:2016年08月24日 11:06