【海あり山ありエアコンなし-南インド・ケララの旅】
第9話)インド家庭料理を習う
《南インド ケララ
旅行記|トリヴァンドラム|アレッピー|クミリー・テッカディ|コーチン》
テッカディを後に山を下り、海辺の街・コーチンに到着した。この街の岸辺には、チャイニーズ フィッシング ネットと呼ばれる独特の網で魚を獲る仕掛けが備え付けられ、その網が揚がるたび、カモメがおこぼれの獲物をかっさらっていく。
またポルトガルが築いた要塞が残るフォートコーチン地区には南欧スタイルの建物も多く、インド離れした雰囲気が漂っている。いままで訪れた街に比べると、外国人旅行者の数も圧倒的に多い。
そんなコーチンで、外国人ツーリスト向けにインドの家庭料理を教えるところがあるという。そこで、某LンリーPラネットに載っていた料理教室を開催している家を訪れてみた。
ピンポーン!
と呼び鈴を鳴らしてみるが、反応がない。何度もベルを鳴らしてみたが留守のようである。
「他に料理教室はありませんか?」
観光案内所で訪ねてみると、近くの土産物屋を紹介された。
「あの~、ここで料理教室ってやってんですか?」
半信半疑でその土産物屋に尋ねてみると、
「ええ、あたしが教えるわよ。」
と店主の奥さんらしき女性が現れた。なるほど、副業で料理教室もやっているというわけか。
この料理教室では特に決まったカリキュラムがあるわけではなく、「あなた何を食べたい、あっシーフードね、じゃフィッシュカレーにしましょう」みたいなノリで、課題となる料理が決まった。
で、まず1000ルピー(約¥1900)を前金で支払い、明日のお昼前にまたこの土産物屋に来いということになった。
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翌日、土産物屋に行くと、料理教室の場所はここではなく、近所の店主の自宅で行うとのこと。
「あら、いらっしゃい。さあ、キッチンへどうぞ」
と奥さんが迎え入れてくれた。インド人の一般家庭を訪問することなどめったにないので、その暮らしぶりを観察してみる良い機会となった。
家の中はこざっぱりとして気持ちがよい。TV、冷蔵庫、洗濯機はあるものの、暑さ対策には扇風機が活躍していた。クーラーはまだまだ一般家庭には高値の華なのか?
「今日は豆のカレー、ジャガイモのカレー、それから魚のカレーを作ります。」
材料は予めカットされ、下ごしらえが施されていた。材料を火にかけると、奥さんは各種スバイスが区分けされた皿を手に取り、
「ではまず、カルダモンを入れて、次は黒胡椒、それからクミンを加えます」
と指示をだす。言われたとおり鍋に入れ炒めると、料理音痴の僕でも何となくそれなりの一品ができてしまう。二品めのジャガイモカレーに取り掛かると、
「カルダモンを入れて、黒胡椒、クミンを加えます」
続いて魚のカレーも
「カルダモン、黒胡椒、クミン」
あらあら、全ての料理がそのスバイスの組合せじゃないですか。ま、これはさしづめ、日本料理の「さ・砂糖、し・塩、す・酢、せ・醤油、そ・味噌」みたいなものなのだろう。
「では次にチャパティを焼きましょう。」
そう言われて僕は何か市販さている"チャパティの皮"でも焼くのかと思った。すると、
「粉をこねてください」
えっ、生地から手作りかい!!
ともかく、ただの小麦粉に水を加え、練って団子状にし、麺棒で薄く延ばす。チャパティってただの小麦粉だけでできてたのか、知らなかった。メチャクチャにシンプルな話ではないか。
しかし、シンプルなものほど難しい。奥さんが伸ばすとキレイな円形に仕上がるのだが、オイラが作ると、円を作るつもりなのに何故か四角くなってしまう。自分のセンスのなさに飽きれてしまうばかりだが、ともかく手製のチャパティをフライパンで焼き上げる。
さあ、でき上がった。それでは試食だ、というか昼飯だ。
「この魚カレー、美味いな!」
自分で言うのもおこがましいが、特にフィッシュカレーはよい出来であった。この料理、便宜上カレーというコトバを使っているが、カレーというより、魚のスパイシーなトマトソース煮とでも言った方が実態に近い。トマトの酸味と淡白で上品な魚の身がマッチして、とってもトレヴィア~ンな味わいだ。
なになに、そんなに良い出来ばえなら、一度作って振るまってみろって?
ううん、それはできない相談だ。何せ、作ることと食べることに精一杯で、覚えるということまで気が回らなかった。一切メモなんて取ってないから再現のしようがない。
せめてレシピぐらいもらっておくべきだった、と後になって反省するオイラであった。
最終更新:2016年08月24日 11:04