【海あり山ありエアコンなし-南インド・ケララの旅】
第7話)虎に襲われる?!

《南インド ケララ 旅行記|トリヴァンドラム|アレッピー|クミリー・テッカディ|コーチン》

テッカディは西ガーツ山脈の山あいに位置する小さな高原の街だ。ここまで来ると気温も涼しく過ごしやすい。近くにペリヤー自然保護区があり、そのゲートウェイとなっている街でもある。

自然保護区では、泊まりがけの本格的なジープサファリから、湖の遊覧船からのお手軽な野生動物ウォッチングまで、 予算や滞在日数に応じて様々なネイチャー・アクティビィティを楽しむことができる。

南インド・ケララ 旅行記|ペリヤー自然保護区の入り口
ペリヤー自然保護区の入り口

まずはペリヤー湖の遊覧船に乗ってみようと公園管理事務所に向かうと、 係員がわけのわからないことを言う。

「最終の遊覧船は15:30発が最終だが、そでれでもいいのか」

「15:30の出発って、今まだ14:00だろ、十分間に合うではないか」

「遊覧船乗場はここから3km先だ。切符はそこでしか売っていない。ここから船着き場にたどり着くまでに船の切符が売り切れてしまうかも知れないが、それでもよいか」

思っていた以上にここがインド人の人気観光地であることに驚いた。とともに遊覧船に乗れないかもしれないのに、自然公園の入園料450ルピー(約¥855)を払うことに躊躇もしたが、ともかく運を天に任せ進むことにした。

船着き場までの山道を徒歩で向かうのは僕ひとりだった。観光客を乗せたバスやミニバンが何台も僕を抜き去っていく。ゲゲ、この調子だと船の切符は売り切れてしまうかもしれない。たかが遊覧船、されど遊覧船。どうにも気持ちがはやって仕方がない。

ようやく船着き場にたどり着くと、幸いまだ切符は売り切れてはいなかった。

南インド・ケララ 旅行記|自然公園内の湖
自然公園内の湖

で、肝心の遊覧船に乗り込んでは見たのだが、いざ出航すると、午前中アレッピーからバスで5時間かけてきた疲れと、すぐさっきまで遊覧船のチケットが買えるか気をもんでいた心労とがどっと重なって、いついつウトウトしてしまった。

 「あそこに野生動物が見えますよ」

遊覧船のガイドの呼び掛けに乗客はわれ先にとスマホやタブレットのカメラを向けるのだが、寝ぼけまなこのオイラにはどこに何がいるのかサッバリわからない。結局ボーッとしたまま、遊覧船は船着き場に戻ってきた。

船着き場から管理事務所までの、帰りの山道も徒歩で下るのは僕ひとり。「せっかく船に乗れたのに居眠りしてたら意味がなかったではないか」と反省しつつトボトボ歩いても帰る僕の脇を、バスやミニバンが追い越して行く。

いつしか日が暮れ、山道が鬱蒼としてきた。何だか薄気味悪さが漂ってきたなぁ。

そしてふと道沿いの看板に目をやった。

PERIYAR TIGER RESERVE
(ペ リ ヤ ー ト ラ 保 護 区)

南インド・ケララ 旅行記|PERIYAR TIGER RESERVE の標識

ええ、ここってトラの保護区!! トラがでるのか! 止めてくれ、こんなところでトラに食われて死にたくない!

冷静に考えれば、保護しなければならないほどトラの数は少ないのだから、ここでトラに遭遇する確率はかぎりなく0に近い。だが、薄暗い異国の山道に一人ぼっちの状況は、僕から平常心を奪い去っていた。

 あっ、あの明かりは管理事務所だ。

人の住む集落の明かりが見えるまで、ヒヤヒヤの思い全快で山道を下ったのだった。

(続く)


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最終更新:2016年08月24日 11:01