【海あり山ありエアコンなし-南インド・ケララの旅】
第6話)気分はF1ドライバー
《南インド ケララ
旅行記|トリヴァンドラム|アレッピー|クミリー・テッカディ|コーチン》
水郷地帯アレッピーを後にし、次は山岳地帯へと向かうことにした。ケララ州と隣のタミールナドゥ州の境をつらなる西ガーツ山脈の高原の街テッカディを目指す。
某欧米系ガイドブックによると、アレッピーからテッカディまでは1日1本直行バスがあるという。果たしてこの情報は正しいのかという半信半疑の気持ちと、できればエアコンバスであってくれという淡い期待も込めて、バスターミナルに向かう。
「テッカディ行きはあそこだ」
バスターミナル職員の言葉に「直行バスに乗れる」という安堵感を一瞬感じたが、まるで囚人護送車のような武骨な車体を見て、思わずため息をついてしまった。
「やれやれ、このポンコツに5時間揺られのか!!」
無論エアコンなどとは無縁のバスだ。せめて、運転手隣の眺めのよい席がキープ出来たのが小さな救いである。
しかし、窓を全開にして疾走していれば、風が入って思っていたよりは不快でないことが分かった。
一時間程平坦な田園地帯を進んだ後、いつしかバスは曲がりくねった山道へと差し掛かるのだが、インドのバスの運転はなかなかに荒っぽい。
スピード狂というか、追い越し中毒症とでも言うべきか、ともかく目の前に遅い車が走っていようものなら、追い越さずにはいられない。
「おい、車間距離なさすぎだろ、前の車と!!」
「こら、カーブの外側から抜くな、対向車と衝突するだろ!!」
運転手脇の特等席は眺めが良い反面、荒っぽいドライビングテクニックをよりリアルに体感してしまうというデメリットを含んでいた。
「うわ、危ない!!」
と、思わず日本語で声をだしてしまうことが何度もあった。
バス運転手は、ドライビングテクニックに対する過剰なまでの自信をは持っていても、安全運転という概念は考えたこともないようだ。まるで自分はF1ドライバーだとでも勘違いしているようである。
なので登り坂に指しかかと僕はホッとする。さすがに車体の重いバスである、ローギアでスヒードを落として進まざるを得ない。ところが下り坂にさしかかと
「こら、こんな急坂でアクセル踏むな!!」
インドのバス、それは下手なジェットコースターをはかるかに凌ぐ、スリル満点のアトラクションだった。
最終更新:2016年08月24日 11:00