【国がまるごと博物館・キューバの旅】
第7話)ハバナ―音楽の溢れる街
《キューバ旅行記|ハバナ|マタンサス|トリニダー|オルギン》
トリニダーからの長距離バスがハバナの街に近づくにつれ、交通量が一気に多くなる。オルギンやトリニダーといった地方都市では馬車や人力タクシーが主役だったが、さすがに一国の首都である。巨大な街には自動車が溢れていた。
ハバナ歴史地区にある民宿に荷を降ろす。 旧市街は 背の高いコロニアル様式の建物に挟まれ、狭い路地が碁盤の目のように張り巡らされている。
さあ、ハバナの街を探検だ。
まずはオープントップの市内ツアーバスに乗り込む。二階からは通りの様子がよく分かる。うわ、なんだこのアメリカンクラシックカーの群れは。派手なオープンカーがうろちょろしている。なんか街中が生きてる自動車博物館って感じだ。
革命広場やマレコン通りなど観光名所を一巡してバスを降りる。
続いて旧市街を散策する。狭い路地を歩いていると、どこからか陽気なリズムが聞こえてきた。その音のする方に向かってみると、まだ日が明るいにもかかわらず、歌い踊る人で一杯のバーに出くわした。
ラ・ボデギータ・デル・メディオ。あのヘミングウェイがモヒートを飲みに通ったことで知られる名店ではないか。
盛り上がっているのは有名店ばかりではない。夕暮れが近づくと、あちらのカフェから、そちらのレストランから、いたるところで生演奏が始まりだす。
とあるカフェの前で声をかけられた。
「お前、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブを知ってるよな」
「少しはね」
実はあまりよく知らないのだが、勢いでそう答えてしまうと、
「ブエナ・ビスタゆかりのミュージシャンが今日88歳になる。その記念のフェスティバルをやっているぞ」
正確なところは分からないが、恐らくそのようなことを言ったのだろう。カフェに入ると、なるほど年期の入ったピアニストが見事な演奏を繰り広げていた。
一通り演奏が終わると、取り巻きがCDセールスにやって来た。ううん、やはり営業か。ま、チップ1兌換ペソ(¥135)で許してもらおう。
その後も88歳の老ミージシャン・アマラントさんの熱演は続く。このご老人、足取りはおぼつかないものの、ピアノの腕は20歳のように熱い。
そしてこの88歳のレジェンドに対し、たった1兌換ペソ(¥135)のチッブで敬意の表明を済ませてしまうことが、だんだん罪のように感じられてきた。
だってよく考えろ。88歳のジイさん一人つくるのに何年かかると思ってんだ。88年かかるのだぞ。それを¥135で済ますということは、ジイさんの1年の価値はたった¥1.53(=¥135÷88)に過ぎないということだぞ。
ああ、ご免なさい。88歳のレジェンドよ。ええ、分かりました。CD買いま~す。
で、結局ジイさんサイドのセールスプロモーションに乗っかってCD買ってしまったのだが、そのCD、リージョンコードか何かが違うのか、帰国して聞こうとしてもファイルが開かない。いったいどんな音楽がこの中に詰まっていたのだろうか。
最終更新:2016年08月24日 07:53