【国がまるごと博物館・キューバの旅】
第6話) 高速バスの鋼鉄の意志

《キューバ旅行記|ハバナ|マタンサス|トリニダー|オルギン》

かつてキューバ国内の移動はかなりの苦行を強いられたという。10年以上前にキューバを旅した友人は、「トラックと思ったら長距離バスでビックリした」と、そのワイルドさに衝撃を受けていた。

しかし時が流れ、キューバの交通も整備された。国営ヴィアスール社の高速バスが全国をネット、そこそこ正確に時間どおり走るようになったという。

実際オルギン⇒トリニダーの夜行バスはほぼ定刻通りに運行され、ちょっと拍子抜けしたくらいである。

キューバ旅行記|VIAZUL社の高速バス
ヴィアスール社の高速バス

またトリニダーからハバナに向かう際も ヴィアスールを利用。 外国人でもネットで予約購入できるのもありがたい。

そして、このバスで、僕はキューバ人の労働に対する鉄の意志を開幕見てしまった。

8:15にトリニダーを出発し14:00にハバナ到着予定のバスだった。あと2時間でハバナ着となる12:00になって、あれまぁまぁ。バスはするっとドライブインに停車してしまった。そして、

  「ランチタイム、ワン アワー」

運転手は乗客にそう告げると、そそくさとリゾートホテルのようなドライブインの食堂に向かっていった。

キューバ旅行記|リゾートホテルのようなドライブインの食堂
昼休みは必ず12:00から休む-リゾートホテルのようなドライブインの食堂にて

オイ、あと2時間で終点だぞ。なのに手前で1時間休憩だと!  だったら、あと1時間走って、13:00ハバナ到着にして、ランチはそれからゆっくり取っても遅くないだろう。

せちがらい日本人の感覚ではそう思ってしまうのだが、12:00は何がなんでも休むのだという鉄の意思が貫かれている、それがキューバ式なのだ。

この「休みの時間は必ず休む」の精神は、ハバナからマタンサス(バラデロ)に向かうバスでもいかんなく発揮された。

8:00ハバナ発 10:10マタンサス着予定のバスだったが、ハバナを1時間遅れて出発。ところがこのバス、あとほんの少しでマタンサスだというのに、

  「ブレイクタイム、ハーフ アワー」

と、またもやドライブインにお立ち寄り。

遅れを取り戻そうとか、なんとか頑張って挽回しようとか、そういう発想は微塵もない。

ともかくバスがドライブインに停車すると、乗客はドリンクやらスナックやらと必ず幾らかの金を落としてゆく。その金目的で、決められた停車は必ず守るようにと政府の経済政策か何かで義務付けされてるのではないか? ついそう思ってしまうほど律儀に「休みの時間は必ず休む」のがキューバの高速バスだ。

その固くななポリシーは、キューバ革命の際に培った鋼鉄の意志がもたらしたものであろうか。

(続く)


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最終更新:2016年08月24日 07:52