【冬の八重山、島巡り旅】
第3話)秘境・西表島のバス会社
《沖縄八重山諸島旅行記|小浜島|西表島|波照間島|石垣島》
八重山2日目。朝早くに小浜島から西表島へ高速船で渡る。八重山の各島は、中心となる石垣との間に多くの便がある。が、石垣以外の島同士を結ぶ航路は極端に少なく、そのような航路は「離島間」航路と呼ばれている。ということは石垣は離島じゃないという認識だ。本土から見ると石垣島も立派な離島なのだが、八重山諸島において石垣は首都なのである。
ともかく正真正銘の「離島間」航路に30分程ゆられ、西表島東部の大原港に到着。港から徒歩5分のゲストハウスに荷を下ろし、早速島の探検に出かける。
山々に覆われた西表島は平野部が極端に少く、道路すら島を一周できていない。未だに渡し船だけが交通手段という集落まで存在するワイルドな秘境島だ。
こんな条件の悪い島に民間のバス会社が存在する。日本最南端のバス会社・西表島交通だ。そしてこの会社が発行する1日乗車券1,030円也が結構使える。
通常この手の乗り放題券というのは、実は相当乗らないと元が取れなかったりするものだ。ところが西表交通の場合、例えば普通運賃で島東部の大原地区から西部の上原地区まで片道940円かかるのだが、この1日乗車券なら1往復するだけであっという間に元が取れてしまう。
こんなにお得が明確な1日乗車券というのも珍しい。しかもこの乗車券を見せると、由布島の植物園や、マングローブの森の遊覧船の値段が10%オフになるというから素晴らしい!!
と、いいこと尽くしの1日乗車券だか、ひとつ大きな問題があった。
それは1日たった4往復しかバスが走ってないという事実だ。
なので上りと下りの時刻表をガン見し、しっかり旅程をプランニングしなければならない。ぷらり無計画に途中下車などすると、下手こいて原生林の真ん中で途方にくれるハメになる。
で、取り敢えず、まずは西の上原地区まで行ってみた。夏はダイビング客でさぞかし賑わうのであろうと思わせる上原地区だが、今は冬のシーズンオフ、辺りはひっそりと静まり反っていた。
そしてふと道路脇の看板を見る。するとそこには「県営農地開発事業」なる文字が記されていた。
県営農地開発事業の看板、開拓すべき未利用原野がまだ残っている!!
開拓すべき未利用原野がまだ残っているとは、西表島ってつくづくワイルドなんだなぁ、と感心していると、
「クゥー、クゥー、クゥー」
と、道路脇の繁みから怪しげな声がした。
明らかに獣の鳴き声だが姿は見えない。とっさにその声のする方に近寄ってみるが、すでに警戒にされてしまったのか、二度と不思議な声を聞くことはできなかった。
一体どんな生物がそこにいたのか。それは謎のままであるが、たとえ未確認生物が生息していたとしても、ちっとも不思議に感じないのが西表島だ。
最終更新:2016年08月24日 20:39