【冬の八重山、島巡り旅】
第1話)リゾーターに勝利!?する
《沖縄八重山諸島旅行記|小浜島|西表島|波照間島|石垣島》
石垣島の離島ターミナルは鈍い雲に覆われていた。霧状の雨が水滴となってポツリポツリと上着に跡を残す。せっかく休暇を取って八重山の島巡りを楽しもうと、東京から石垣港まで駆け足でやって来たのに、旅の出だしから八重山の神様の機嫌を損ねてしまったようだ。
今日は島巡りの第1日目、目的地は小浜島だ。ゴロゴロとキャスターバックを引きずり、少し肌寒い高速船乗り場を目指し歩きだす。
するとその時であった。トランクの山を抱え船に乗り込むスタッフの一団に遭遇した。
え"っ、自分で荷物を運ばなくてよいのか、この船は!! まるでファーストクラスじゃないか!! だったら自分で荷物など運ぶんじゃなかった。そんなサービスがあるなら最初に言ってよ、Y重山観光フェリーさん!!
と、一瞬悔しく思ったのだが、よくよく観察してみると、荷物運びのサーピスを受けている乗客とそうでない乗客がいることが判った。そして、前者は垢抜けたリゾートファションで身を固めたハイソな一団であるのに対して、僕を含む後者は明らかに着ているものが少々くたびれている。
でも、船のキップが1等だの2等だのとクラス分けされている訳ではない。だとしたら、この待遇の開きは何だ。身なりでサービスの質を変えていると言うのか!! だとしたらそりゃ人権侵害じゃないのか、国交省に訴えて運行停止にしてやるゾ、と船会社に対し怒りを覚えそうになったその時であった。
「Hリゾートへお越しの皆様、本日はご宿泊いただき真にありがとうございます…」
身なりのよい乗客たちに向かい、荷物を運んでいた職員たちがうやうやしく挨拶を始めた。そうだったのか!! 荷物運びのサービスは船会社によるものではなく、リゾートホテルのサービスだったのか。となると文句は言えないよなぁ。
オイラは旅のエコノミスト。無論今日のお宿もおサイフに優しい民宿だ。普段リゾートホテルとは縁遠い旅をしているせいで、今日は世の中のヒエラルキーの一端を見せつけられちまったぜ、ちっ。
と、少し屈折した思いを載せ、船は小浜島の港に到着した。
「民宿U荘です。お待ちしてました」
予約した民宿の迎えが港でオイラを待っていた。離島ではたとえ安宿であっても、車の送迎はデファクトで付いている。一方、高級リゾートの一団はと言うと、港からバスでホテルに移動するようだ。
「勝った!」
一瞬、根拠のない勝利の雄叫びを心の中で叫んだ。
羨ましいだろ、リゾーター。お前ら集団じゃないとバス出してもらえないんだゾ。でも、オイラはたった一人だけど車を出してもらえる身分なのだ、どうだ!!
えっ、別に羨ましくないって。
ええ、そりゃそうですとも、冷静に言われればその通り。ほんのちょっとの優越感を最大限に自己増殖させてみたかっただけですぅ・・・ああ情けない。
最終更新:2016年08月24日 20:36