【2時間で行ける欧州・極東ロシアの旅】
第5話)遊びじゃないぞ、子供鉄道

《シベリア・サハリン旅行記||ウラジオストク|ハバロフスク|ユジノサハリンスク》

サハリンを後にし、今度は内陸のハバロフスクに飛ぶ。着陸態勢に入った機内の窓にはアムール川の姿が映し出される。その広大さは想像を絶するもので、巨大な河川敷の中に何本もの川が蛇行し、その川の集団が一本の広大な塊となって大地を貫いているとでも表現すればいいのだろうか。

極東ロシア・サハリン旅行記|広大なアムール川とハバロフスクの街並み
広大なアムール川とハバロフスクの街並み

本物の大河とはこういうもので、アムール川に比べたら、日本最長の利根川ですら赤ん坊の小指の先に思えてしまう。

そのアムール川のほとりの丘に開けた街がハバロフスクだ。欧州ならではのしっとりした佇まいの通りに、時折ノスタルジックな路面電車がギィーと音を立てて行き交う。

極東ロシア・サハリン旅行記|ハバロフスク市内
ハバロフスク市内

そんなハバロフスクの郊外には、夏の間だけ子供が運営を行っている「子供鉄道」なるものが存在する。 子供鉄道 ― なんとも奇妙な存在である。調べてみると全長2.5kmの路線に1日8本の列車が夏季のみ運行されてるのだが、それだけの営業で採算が取れるのだろうか? ま、ともかく行ってみよう。

市内バスで「子供鉄道」乗り場に向かう。ガイドブックにあるロシア語表記を車掌に指差し確認すると、「ここで降りろ」とちゃんと教えてくれたのはありがたかった。

動物園の門のような扉をくぐると小さな駅舎があった。キップ売り場に行くと、そこには子供と言うには少し無理のある兄ちゃんがキップを販売していた。本当はこの鉄道、子供鉄道と訳すより青少年鉄道と翻訳するのが実態にふさわしい。

ホームに向かうと、小さな客車に機関車を連結する作業が行われていた。一般のロシア国鉄に比べたら二周り程小さい車両だが、それでも本物の機関車を運転しているのは少年だ。そしてちゃんと連結出来たかどうか、教官らしき大人がチェックを入れている。そうだ、この鉄道は将来の鉄道員を養成する訓練施設だという話を思い出した。それを一般に開放しているというわけだ。

極東ロシア・サハリン旅行記|子供鉄道
子供鉄道

では僕の他にここを訪れる一般客とはどんな人たちだろうと周りを見てみる。親子連れが何組かとお転婆娘3人組がいた。

そして、いざ列車が発車するぞというその瞬間、僕は自分の観察力の欠如に笑ってしまった。

一般人乗客と思っていた少女3人組。その少女たちがひとりずつ3両の客車の前に立って車掌ごっこを始めたのだ。そして旗を持って出発前の安全確認の手旗信号まで送っている。随分と'鉄'分の濃いマニアだなぁ、と思ったら、そうではない。彼女たちもまた訓練生であった。

ついさっきまでくっちゃべっていたカジュアルな格好のお転婆たちが、いざ仕事となると真剣モードになる、その気持ちの切り替えの早さは見事だ。

列車が動き出すと、見習い少女車掌が乗客のキップをチェックしにくる。続いて教官のオバサンの前で車内アナウンスの発声練習をこなす。子供鉄道だからといって、遊びでやってるわけではないのだ。

極東ロシア・サハリン旅行記|子供鉄道で修行中の若者たち
子供鉄道で修行中の若者たち

そんな光景を見ているうち、僕はあるたくらみを閃いてしまった。

ちょっと前に日本の某S武鉄道がメイド列車を企画して大盛況だったという話を思い出した。これを応用して、この子供鉄道の少女車掌にメイドの格好をさせるのだ。子供xメイド=ロリータ。これに鉄道とくれば、マニアな旅行者が日本から大挙してやって来ること間違いなし。やあ、ビッグアイデアだ。

でもこの企画、どこに持ち込んだらオイラにお金が落ちるのだろう?

(続く)


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最終更新:2016年08月24日 08:50