【日本一の村?を行く 沖縄・読谷/北谷ぶらり旅】
第6話)農連市場はワンダーランド
《沖縄本島中部西海岸旅行記|読谷|嘉手納|北谷|那覇》
北谷からバスで那覇に戻る。牧志駅前の小綺麗なゲストハウスに宿をとるが、天気は生憎の曇天だ。
「ううん。明日の朝まで天気は持つだろうか?」
翌朝の天気に気をもんだのにはわけがある。旅は昼発のフライトで終ってしまうのだが、その前に小さなハイライトを準備しておいた。那覇市観光協会が運営するお散歩ツアー・那覇まちま~いの中でも異色のプログラムを予約しておいたのだ。
その名も「早起きは三文の得 農連市場ま~い」。
早起きと銘打つだけあって集合時間が早朝6時と半端じゃないが、これは市場そのものが夜が明けると閉まってしまうのだから仕方がない。
というわけで、まだ真っ暗な那覇市内を集合場所の開南バス停に向かって歩いて行く。残念ながら天気は小雨、しかもこんな早朝に歩いている者など誰もいない。
こうなってくると本当にガイドさんはやって来るんだろうかといぶかってしまう。あ、あのジャンバーを着た人がスタッフか?
「農連市場ツアーのガイドの方ですか。」
「そうですよ」
「すいませんね、参加者僕ひとりのためにこんな朝早く。しかも雨まで降っていて。」
「いえ、他に二名予約が入っています」
マニアックな観光客は僕一人でないことになぜかホッとする。
人数がそろったところで、昔市場で働いていたという年配のガイドさんに連れられ、農連市場に到着。さぞや活気に溢れた威勢のよい声が飛び交っているものと勝手に推測していたのだが、場内は期待に反してひっそりしている。
「ここは昔は大にぎわいしてましたが、中央卸売市場か出来て廃れていきました。ここで今商売しているのは高齢者ばかりです。」
とカイドさん。なるほど見渡してみると、売り子はオジィとオバァばかり。戦後直ぐ闇市から発展した市場は、今も当時の建物のまま朽ちかけつつそのまま使われており、云わば生きてる昭和博物館と言ったところだ。
「この市場も再開発でもうすぐ無くなるのです」とガイドさんは心なしか寂しげに語ったが、
「でも何年も前から計画はあるのに全然実行されないのですよねぇ。」
ふふふ、てぇげぇ(いい加減)なのは沖縄の伝統か。
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さて、そんなレトロの塊である市場は関連施設だってただ者ではない。
「あそこの天ぷら屋さん、一個40円です。」と言われ、早速一つ頼もうとしたら、
「ゴメンネね、今大口の注文が入ってるから後にして」
と、お店のおばちゃん。今にも壊れかけそうな店だが意外に繁盛しているようだ。こういうお店が元気だとなんだか自分も幸せな気持ちになるから不思議なものだ。
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市場の端にはカウンターの簡易食堂があった。では朝飯でもとメニューを頼むと、
「うちはこれ一品しかないからメニューは無いよ」
と鶏肉と瓜のスープ定食が出てきた。まだ肌寒い朝に滋味たっぷりのスープは身体を芯から暖めてくれる。
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そして、不思議な空気に包まれたこの市場で、最も理解に苦しむシロモノを教えてもらった。
「この自動販売機を見てください」
「コーラ1缶70円、安いですね。」
「それよりこれです。」
「うわ、何だコレ!」
「? 甘い物 色々出ます」って、50円でいったい何が出てくる??
その自販機のディスプレイには白く塗られた缶に「 ? 甘い物 色々出ます」と下手くそな文字で殴り書きされていた。値段はたったの50円。いったいどんな甘い物が出てくるのだろう??
農連市場の謎は尽きない。
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そんな不条理に包まれた市場を後にし、帰宅の途に着く。近代的な那覇空港は自衛隊機が滑走路に同居しているのを除くと本土と何ら変わりない、と思ったのだか。。。 何だこの張り紙は!!
いったい誰が持ち込むというのだ、那覇空港株式会社。 前例でもあったのか!!
沖縄 ― そこは最後まで本土の常識を越えたワンダーランドだった。
最終更新:2016年08月24日 20:30