【日本一の村?を行く 沖縄・読谷/北谷ぶらり旅】
第5話)ライブ@カラハーイ
《沖縄本島中部西海岸旅行記|読谷|嘉手納|北谷|那覇》
読谷を後にし北谷(ちゃたん)にバスで向かった。車社会の沖縄でバスは貴重な公共交通機関だ。だが電車と違ってバスは地元民以外どこをどう走っているのか解りづらいのが難点である。
しかし、世の中進歩した。
沖縄のバスが検索できるアプリ「バスなび沖縄」が登場。これを使えば時刻表検索はもちろん、乗るべきバスが今幾つ前のバス停を通過したのかまで解るスグレモノだ。
首尾よく北谷にたどり着くと宿に荷物を下ろし、自転車でアメリカンビレッジなるエリアに向かった。ディズニーランドのような雰囲気を漂わすこの人工的な商業エリアは、どことなくバンコクのカオサン通りを薄めて広くしたような印象を与える。どちらも南国にあり、欧米人比率が高いせいであろうか(でもここの欧米人は米国軍人とその家族限定であるが)。
カオサン通りを薄めて広くしたようなアメリカンビレッジ
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北谷では友人のGさんと待ち合わせをしていた。
「少し早めの冬休みで沖縄行ってきま~す。」と宣言したら、彼もちょうど同じような日程で沖縄に来ていると言うのだ。しかも彼は自転車を積んで飛んでくる。そして那覇から北谷までチャリンコ飛ばしてやって来るというのだ。あれれGさんってそんなアクティブな人だっけ? 南国のトロビカルな風は人の行動様式まで変えてしまうのだろうか?
僕らが北谷で落ち合うことにしたのは訳があった。ここ北谷には沖縄ポップスの重鎮・りんけんバンドが本拠を構えるライブハウス、カラハーイがある。毎週土曜にそのりんけんバンドのライブがあるのだ。僕らの日程がちょうど土曜日に当てはまったのだ。
ステージ席で食事をしながら開演を待つ。いつの間にか二階席まで満員となり、ライブが始まった。
リードボーカル上原知子の伸びやかな声に、男性トリオの勇壮なエイサーの舞いが絡む。あの重い太鼓を叩きながらの演奏は相当に体力を使うはず。大したものだと感心している合間に、ナインティナインの岡村に似たフロントマンが絶妙のボケトークで会場を笑わせる。
圧巻なのは弱冠17才の天才ドラマー上原俊亮君だ。リーダーの照屋林賢曰く、
「ちょっとボストンの音楽院に短期留学してきなさい」
と送り出したら、留学後直ぐに学費が全額払い戻されたのだという。つまり、特待生扱いで学費免除。それほどの逸材なわけだ。
そのドラムソロは沖縄の海に生息するタコのごとく、手足が八本あるのではと思わせるほど複雑なポリリズムで観るものを圧倒する。
熱のこもったライブが終るとバンドメンバーは気さくにも観客との写真撮影に応じてくれた。
「なんか皆CD買ってるけど、僕らもいいんだろうか?」
「いいでしょ、並んじまいましょ」
果たして心優しい沖縄のトップスターたちは不届きな観客にもちゃんとシャッターを押してくれた。パチッ!
しかし、そこで事件が起きた。
撮った写真を確認すると、ほとんど暗闇に一筋の発光体しか写っていないではないか。
「しまった。自転車用ウェアの反射体が邪魔してしまった!」
犯人はGさんの高価なウェアにあった。が、さすがにCD買ってないくせに「もう一回シャッター押してくださ~い」とお願いする厚かましさは持ち合わせていなかった。
払うべきものはちゃんと払わないとまともなものは手に入らない。
沖縄ポップスの重鎮はそう僕らに諭していたのかもしれない。
最終更新:2016年08月24日 20:27