【新疆ウイグル★シルクロードは"知る苦"の旅??】
第8話)ウイグル流のオ・モ・テ・ナ・シ
《中国・新疆ウイグル自治区・シルクロード旅行記|ウルムチ|クチャ|カシュガル》
カシュガルでは自転車を借りて市内や郊外を回ってみた。自転車はカギを無くすと面倒なことになる。なので物を無くすことにかけては誰にも負けない自信? のある僕は、かなりカギの紛失に気を使いながら、旧市街を回った。
大きなノコギリで二人がかりで丸太を切る木工職人、銅のナベを叩いて仕上げる食器職人、ここでは家内制手工業が今も現役だ。鍛冶屋の使うハンダゴテの熱元が炭火だったのにはさすがにタマげたものだ。
チャリンコを飛ばし郊外のアパクホージャ廟まで足を延ばす。併設された歌舞茶園で民族舞踊を眺め、ショーが終るとダンサーたちが写真を撮ろうと誘ってくる。気づくとしっかり10元(約170円)取られてた自分が情けない。トホホ~
さて、そんなこんなで自転車で周っていると、何度もヒヤッとする場面に出くわした。やたらとバイクや小型三輪トラックとぶつかりそうになるのだ。
「どうして三輪トラックの存在に気づかないのだろう?」
と不思議に思いながら、とある寺院の駐車場に自転車を停めハタッと気がついた。そこに停めてあるスクーター。そこから電線が延び駐車場のコンセントにつながっている。電動なのかっ、この街のスクーターは!!
なるほど電動なら音が静かで、その存在に気がつかない。だから、ぶつかり易かったのだ!!
待てよ、ということは、至るところで走ってるあのちゃちな小型三輪トラックも電動なのか? あっ、確かに荷台にしっかりと簡体字で"电动(電動)"って書いてあるじやん。スゴいぞ、ウイグル。実はエコカー大国だったんだ!!
电动(電動)の三輪トラック。ウイグルは既にエコカー大国だった!
中国の辺境で家内制手工業の伝統とエコな最先端との奇妙な同居に出くわし、僕はちょっと興奮した。そして、その興奮がいけなかったのか、それとも自転車のカギは無くさないぞ!と過度に意識したのがまずかったのか。無事チャリンコを返し、夜のフライトで帰国するため宿をチェックアウトしようとしたその時である。
無い、無いのだ、宿のほうのカギが。
ヤバイ、弁償だ。高くつくぞ、きっと。僕は恐る恐るフロントに行く。すると、
「チェックアウトか。お前日本人だよな。」
「ええ、まあ」
「そうか、コングラッチュレーション、トーキョー」
「え゛っ」
僕はこのとき初めて2020年五輪が東京に決まった事を知った。日本中が歓喜に沸いた日から2日遅れて。
そのオリンピック効果のおかげか、無くしたカギ代はわずか20元(約340円)で済んだ。しかももともと2泊で予約していたのに夕方のチェックア ウトということで宿泊代を1泊半にしてくれ、半日分22元(約373円)を戻すという。つまり
宿代半日分返金 22元
紛失したカギ代 -20元
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返金額 2元
と、差し引き2元(約34円)が返ってきた。
何と言うウラのない扱い!! いや待て、"ウラがない"ということは "オモテもない"ということだ。つまりこれはウイグル流のオ・モ・テ・ナ・シ ??
こうして僕は新疆ウイグルを後にしたのであったが、どうやら僕は滝川クリステルに2元分(約34円)の借りを作ってしまったようだ … さて、どうやって返そうか?
最終更新:2016年08月27日 09:29