【新疆ウイグル★シルクロードは"知る苦"の旅??】
第6話)展示品一つの博物館
《中国・新疆ウイグル自治区・シルクロード旅行記|ウルムチ|クチャ|カシュガル》
正午過ぎにカシュガル駅に着きローカルバスで市街に向かうと、そこでおかしな事に気がついた。バスのなかの時計が10:00過ぎを示しているのだ。手元の時計の12:00過ぎとはきっちり2時間ずれている。
あ、これがウイグル時間か!
新疆ウイグル地区は経度で言えばインドあたりに等しい。にもかかわらず中央政府は北京時間を広大な国土の全土に採用している。それがカシュガル辺りになると、実際の生活リズムと北京時間では大きな狂いが生まれてくる。というわけで、この辺りではウイグル時間も使われているのだ。
地元の人々にとっては面倒な話なのだが、そのときの僕はなにか2時間分を得したようでちょっと嬉しかった。
カシュガルでは、バザールの屋上に建てられたホステルに泊まった。ここは安宿ではあるが、名所のエイティガール寺院にも近く、屋上からは旧市街が一望できてなかなか雰囲気がよい。
さて、昼飯でも食うかと宿を出て歩きながら、これまでウイグルで食べてきたものを思いだしてみる。
まずは主食の麺類、いろいろなバリエーションがあったなぁ。。。
◇拉面(ラグメン)= 麺に野菜や羊肉の炒め煮をかけた物、ま、スパゲッティだね。
◇炒面(サオメン)= こちらは炒めた麺、要するに焼きうどん。
◇丁丁(ティンティン)= 長さ2センチ程度の極短麺。ショートパスタといったところか?
◇曲曲(チュルチュル)= これはワンタン、餡の肉は羊だ。
と、小麦製品の種類は豊富である。しかし、困ったことが一つ。
味付けがみな同じじゃん!!
どれもこれもトマト味をベースに、羊肉とピーマンのトッピング。他に違う食材はないのか、シルクロード!!
昼飯を食いに繰り出したカシュガル旧市街は、日干し煉瓦の建物に囲まれたイスラムの空気が色濃く漂うエリアだ。家内制手工業の盛んな職人街の近くに「后宮民族美食街」なる通りを見つけた。そして店先で羊肉を炙る食堂が連なる一角にスゴい名前の店を発見した。その名も"Ramen Museum-ラーメン博物館"だ。
ここならまだ味わったことのないウイグルの味覚に出逢えるはずだ。
迷わず店に入ると店内の内装は博物館の名に恥じぬ立派なものだ。これは期待値が高いゾ!
「請給我菜単(メニューをください)」
と僕は自信を持って言える数少ない中国語のフレーズを発してみた。だが、あれれ、反応がないゾ? まだまだ僕の中国語は修行が足りないということか、といぶかしがっていると、隣のウイグル人客が「どうしたのか?」とカタコトの英語で声をかけてきた。
「メニューを見たいのですが」
「この店にメニューは無いさ、ラグメンだけだよ」
な、なんと、この博物館の展示品はたった一品!それでも博物館と名乗っていいのか?
しかしこの博物館、昼時ということもあってか次から次へと客足が絶えない。たった一つのラグメンという一杯9元也(約155円-安い!)の展示品だけでこれだけのリピーターを集客してしまうとは驚きであるが… いずれにしても、またしてもトマト味と羊肉の小麦料理がランチとなってしまった。
民族美食街の后宮拉面館の英語名はArkaorda Ramen "Museum"
食事を済ませ表に出て、ふとその店の振り返って見た。あれれ、看板の英語"Ramen Museum"の上の中国語は"拉面館"とあるゾ。これは"Ramen Shop"と訳すべきじゃないか!
単なる誤訳か、それとも言語と言語の間に横たわる深い溝のせいか。いずれにしても"一杯"食わされた、ということだ。嗚呼そろそろ豚肉が恋しくなってきたなぁ…
最終更新:2016年08月27日 09:29