沖縄本島より台湾の方が近い与那国島。かつては密貿易で栄え今はカジキ漁の盛んなこの孤島で、旅の最後に神のお告げ?を聞くことになるとは…||与那国島旅行記|久部良|祖納|比川|那覇||

【神のお告げを聞け-与那国島旅行記】
第7話)与那国島の神の声

||与那国島旅行記|久部良|祖納|比川|那覇||

祖納(そない)の民宿の食事は評判通り美味かった。ダイバー・釣り人・自転車で沖縄を回っている人など、目的の違う様々な旅人が一堂に会し、賑やかな夕食であった。

与那国島旅行記|美味しい民宿の食事
美味しい民宿の食事

さて、与那国滞在も明日の昼まで。午後には那覇にもどらねばならない。せめて最終日くらいは晴天になってくれ。小雨だった今日は、見晴らしのよいティンダハナタの崖の展望台には敢えて登らず、翌日朝の天気に賭けてみた。さぁ明日の快晴を祈って床に就こう。

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果たして翌朝、やったー快晴だ。今日は百円ポンチョ要らないぞ!! と喜んだのもつかの間、予期せぬ不幸が僕を襲った。

  グキッー 「痛い!!」

急に足首から痛みが走りだした。いや急ではない。実は昨日、ちょっと足首をひねっていた。どうせ軽い捻挫だろうとそのまま歩き回っていたのがまずかった。

一晩たって、少し急な動きをするだけで激痛が足首からズキッと全身に疾走する。

とてもじゃないが観光なんてしてる余裕はない。せっかくの晴天だがティンダハナタの崖からの見晴らしは断念。それよりも旅程の変更だ。本来なら今日このあと那覇で一泊し明日帰る予定であったが、この状態で荷物を持ち歩いて観光など到底考えられない。

まずは空港に行き、乗継の那覇=東京便を明日から今日に変えてもらい、さっさと帰宅し治療に専念せねば。

しかし、ここで大きな問題が。僕のチケットは原則4日前までしか予定変更ができないものだった。もし当日変更が認められなければ、正規料金を払わねばならない。那覇=東京のノーマル運賃は片道43,000円!!。払えるか! そんな金。

いや待てよ、旅先のケガにかかる費用なら海外旅行傷害保険で請求できるじゃないか? いや待て、海外みたいだが与那国は国内だろ<こら。それにそもそも、そんな保険に加入してないだろ、俺。

などと空港に送ってもらう道すがら、あれこれアホなことを考えるうち与那国空港に到着。

 「なんなら車椅子を頼みなさいね」

と民宿のオバちゃんも心配げに見送ってくれた。

与那国島旅行記|不安と共に与那国空港に到着
不安と共に与那国空港に到着

ここは一つ空港職員さんの心情にいかに訴えるかにかかってくる。杓子定規に「規約」を持ち出されたら勝ち目はない。

僕は痛々しげに、いや演技をしなくても十分痛いのだが、カウンターに向かった。そして、話の分かってくれそうなベテラン職員を探した。すると、いたいた、おそらく地上職員としては日本で最年長ではないかと思える頼もしいオバちゃん職員サマを発見。

その恰幅のよいお姿はいかにも島の人という雰囲気だが、そこにはある種の神々しさまで放っているかのように、そのときの僕には見えた。

 「まあ、そういう事情なら特別です。乗継便を変更しましょう」

あ、ありがたや!! もうこのときばかりは制服のボタンがはちきれんばかりに貫禄のあるこのオバちゃん職員サマが、神秘の島・与那国に舞い降りた女神さまに思えた。

これで片道43,000円だの、傷害保険の補償だの、とアホな心配から開放される。よかった~。

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 「皆様、当機はただ今、八重山諸島上空を通過しております。」

那覇に向かう機内にパイロットからのアナウンスが流れる。

与那国島旅行記|八重山諸島上空 帰るときになって、南の島は快晴に…
八重山諸島上空 帰るときになって、南の島は快晴に…

窓の下には珊瑚礁に浮かび上がる島々が見える。素晴らしい快晴だ。しかし、

  なんで帰るときになって晴れるのだ。

  なんで帰るときになって、ケガぶっこいてるのだ。

「日頃の行いを悔い改めよ」- 与那国の神は僕にそう告げていた。

(FIN)


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最終更新:2016年08月24日 20:03