【チップと値切りのエチオピア旅行】
第6話)アベベ君のお宅を家庭訪問

《エチオピア旅行記|アジスアベバ|バハルダール|タナ湖|ラリベラ》

もうすぐエチオピアのクリスマスである1月7日が近づいているためか、このエチオピア正教の聖地ラリベラには、各地からの巡礼者が集結しはじめ、近くの空き地でなんと野宿!!をしていた。

エチオピア旅行記|教会近くの空き地で野宿する巡礼者たち
教会近くの空き地で野宿する巡礼者たち

何気なく教会群近くの道路脇に広がる地元民の住居区に足を踏み込んでみる。未舗装の狭い路地には木造家屋が連なり、炭火で煮炊きをする女たちの姿が見える。居住区内まで足を運ぶ外国人観光客が珍しいのか、子供たちは僕を見るなり「ハロー、チャイナ」と騒ぎだす(チャイナじゃないゾ!)。

エチオピア旅行記|道路の向こうに広がる地元民の住居区
道路の向こうに広がる地元民の住居区

ある子供とお母さんが「うちでコーヒーを飲んでいかない?」と招いてくれた。これは興味深い!! 一般エチオピア人の暮らしが垣間見れるチャンスだ。

  「おいらの名前はアベベ。こっちだよ」

と子供が手招きをする。アベベ君の後を追うと、母子の家は粗末な二階建てだった。梯子のような階段で二階に上がる。階段はたたみ一畳程の狭いバルコニーに連なり、そこは煮炊きの場を兼ねた台所でもあった。

エチオピア旅行記|アベベ君の家
アベベ君の家

そして二階部分の一間のみが、玄関と居間と寝室と応接間を兼ねたこの家の全てであった。家財道具はベッドが一つ。ここで一家が暮らしているのか?

  「友達のゲータと弟だよ、さ、座って」

座ってといわれてもイスなどない。枕のような小さな腰掛に腰を下ろすとジーンズの上からも尻に土のザラつきを感じる。家の中なのに埃まみれだ。が、そんなものまるで気にするそぶりもなく、アベベ君一家は平然と腰を下ろしていた。

これが一般エチオビア人の生活なのか。正直な感想を言わせてもらえるならば、ここはスラムじゃないか。さすがの僕もここに住むことはできない。

エチオピア旅行記|正直言って、狭くて誇りっぽい庶民の家の中
正直言って、狭くて誇りっぽい庶民の家の中

しかし、「スラム」と感じられたとしても、彼らがすさんだ生活を送ってるわけでないことは、アベベ君たちの明るい表情を見れば明白だ。

 「日本人だね。だったらCCTV見る?」

驚いたとに、洗濯機も冷蔵庫もないこの家庭でも、TVだけはある。しかも衛星で世界中の番組が映るのだ。むしろTVに関していうなら、未だに衛星放送が見れず、しかも地デジをアナログ変換して見ている僕より、ずっ~と先端だ。

  「CCTV付けるよ」

おいおい、CCTVって中国中央電視台(テレビ局)のことだろ。

  「NHKは映らないの?」
  「NHKなにそれ? 日本人ならCCTVだろ。」

ううん、何と言うことか、草の根レベルまで中国の存在感が根付いている。

そうこうしているうちにコーヒーの準備が整った。アベベ母が「砂糖は入れる?」と尋ねるので、お願いする。アベベ君が砂糖壷を戸棚から大事そうに取り出した。そのときであった。

  「こら、ダメ!」

何事か! と思ったら、幼いアベベ弟が砂糖壷に手を突っ込んでベロベロ舐めだしたのだ。その早業といったら、100m走のピストル音に反応するウサイン・ボルト以上の電光石火だ。と同時に、一家にとって砂糖はたまにしか味わうことのできない貴重品であることを悟った。

エチオピア旅行記|エチオピア流でコーヒーをいただく
エチオピア流でコーヒーをいただく

苦くて甘いエチオピアのコーヒー。炭火で煮出した独特の風味を、小さな茶碗のようなカップでちびちびいただく。3杯もごぢそうになったところで、そろそろお暇するか。

むろんタダというわけにはいかない。果たしてチップはどのくらい置いておくべきか。まったくエチオピアではこのチップにいつも悩まされる。

普通コーヒーは街中で一杯5ブル(約24円)、山奥の観光地なら10ブル(約47円)程度だ。まあ、3杯も飲んじゃったしな。僕は50ブル(約235円)札を取り出し、アベベ母に手渡した。

 「まあ、ありがとう!!」

アベベ母は満面の笑みを浮かべていた。しまった、チップを弾みすぎた。まったくエチオピアのチップは難しい。

(続く)


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最終更新:2016年08月24日 10:02