【チップと値切りのエチオピア旅行】
第4話)3番目に大きな湖の4番目の魚
《エチオピア旅行記|アジスアベバ|バハルダール|タナ湖|ラリベラ》
バハルダール二日目はハイライトであるタナ湖クルーズに参加する。この湖上の島や半島には幾つもキリスト教修道院が建立されており、それらを巡るボートツアーが盛んだ。だが、船をチャーターしないと訪問できない。そしてギオンホテルの従業員はその売り込みに熱心だ。
「本来$140のところ$70にディスカウントだ」
$70だと、おいおい、昨日$20と言ってなかったっけ?
「高いよ!!」
「じゃ幾らだ?」
こうなることは十分予想してたので事前に手を打っておいた。昨日湖畔を散歩した際、港近くのツアー会社の料金看板をデジカメで撮影しておいた。
「マイバジェットは400ブル(約1,880円)だ。」
「そりゃ無理さ、あはは。」
「じゃこの写真は何だい?」
僕はデジカメ画像を再生して見せる。すると従業員は「マネージャーと相談してくる」と親分の元に引き下がった。
「OK、400ブルだ。あのイタリア人たちの船に同乗しろ。」
おお、やっと適正価格に収まった。宿代といい、ツアー代といい、何かと交渉・交渉でめんどくさい。
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ともかくこうしてタナ湖巡りのツアーが始まった。湖畔でのどかに洗濯に励む地元民の前を、40馬力の船外エンジンがうなりを上げ、ボートは颯爽と湖上を疾走していった。
一時間もすると半島に上陸。ツアーの一行は奥へと進んでいく。やがて、不思議な円形の修道院が現れた。
ちょっとマンガチックなタッチの宗教画が僕にはかわいらしく見えるだけだが、同行のイタリア人たちは「この絵の意味は何だ?」と執拗にガイドに質問を浴びせかけている。さすがカトリックの国の民。
半島の奥にひっそり佇むウラ・キダネ・マハレット修道院
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再び岸を離れ湖上に出た。暫くするとボートは急にスピードを緩めると、ガイドが立ち上がった。
「皆さん、タナ湖はアフリカで3番目に大きな湖です。ここには3種類の魚がいます。ティラピアとナマズとスターフィッシュです。」
おいおい、3番目に大きな湖にたった3種類しか魚類がいないなんて科学的にありえないだろ、と思いつつ無粋な質問で場の空気を壊したくなかったので黙っておく。
「ご覧ください。漁民です」
とガイトが指さす先には、ちっぽけな小船を漕ぐ漁師がゆっくりと櫂を漕いでいた。われわれのボートは静かにその小船に近づく。
わずか2m程の漁師の小船はまるで藁で包んだ納豆のような形をしている。あ、そうか、あれがパピルスだ。世界史で習った、紙の元となったナイル河原産の葦のような植物って、こんなふうに加工されて船になるんだ。
それにしてもこの沖合いにあんなちっぽけな船で繰り出すなんてスゴイ度胸だ。しかも漁師はディープなレゲエヘアで決めているからエチオピアムード満点。こうなると観光客はもう一斉にカメラを取り出し大撮影大会を始めるしかない。
調子に乗ったレゲエ漁師は得意そうに獲物の大ナマズを取り出しポーズを決める。そしてしっかり観光客からチップをかっさらっていった。
漁師にとって魚は自ら追わねばならない獲物だ。だが観光客は自ら漁師に寄ってお金を撒いてくれる楽な獲物だ。
僕は、このアフリカで3番目に大きな湖の「4番目の魚種」を発見した。それは僕ら観光客だ!!
最終更新:2016年08月24日 09:59