【チップと値切りのエチオピア旅行】
第3話)新婚さんありがとう
《エチオピア旅行記|アジスアベバ|バハルダール|タナ湖|ラリベラ》
青ナイルの滝見物とタナ湖クルーズ、これはバハルダールに来たらお約束の二大アクティビティだ。今は乾季だが、今日・日曜日はダムの放水が行われ、滝の水量が多く迫力があるというので、今日は滝に出かけることにした。
とはいえ$20も払ってツアーで行く気はさらさらない。滝のあるティシサット村へはローカルバスが出ているというので、バスターミナルへ行く。
ターミナルの雑踏を掻き分けティシサット行きのバスを発見する。それは何だか装甲車のように無骨なポロバスだった。そのオンボロでこれまたとんでもない悪路をガタガタ一時間揺られ、ティシサット村にたどり着く。行程はハードだが、そのかわり値段は13ブル(約61円)と信じられないくらいソフトだ。
村に着き管理事務所で入域料を払うと、子供や大人が「ガイドをするぞ、ガイドをするぞ」とわらわら群がってくるが、こんなハイキングコースに毛の生えた程度の場所でガイドは不要だ。
道中、丸木小屋のカフェで一服したり、ポルトガルが建てたという古い橋を渡る。しかし、そこから先は道があるようでないような、丘を登らねばならない。
滝の水音がするほうに向かって何度か道に迷う。まったくエチオピアの観光地には標識というものが一切ない。これは道に迷うようにさせてガイドに金を落とさせるための国家戦略なのかといぶかってしまうのだが、なんとか滝にたどり着いた。
広大なアフリカの大地の裂け目に向かって水の落ちていく様は、日本では見ることのできない雄大ものだった。ただ放水量を増やしているといえ、所詮乾季。これが雨季だとあたり一面が水のカーテンとなるらしいが、今はそこまでの迫力に欠けるのは仕方がない。
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見物を追え、帰路は渡し舟で近道してティシサット村に戻る。するとバハルダールに向かうバス停には地元民が溢れかえり、とんでもないカオス状態になっていた。こりゃ乗れるのかいな?。しかし午後3時にはバスはなくなってしまう。なんとか乗り込まないと、このなにもない村に取り残されてしまう。
「お前に車をアレンジしてやる。」
と声をかける輩もいるが、とんでもない金を要求されるに決まっている。それにこちらは東京の通勤地獄という修羅場を経験した身だ。えい、乗り込むゾ。
すし詰めの車内に無理やり乗り込むと驚くべきことが起きた。地元民が旅行者のために席を譲ってくれたのだ。えっ、いいのだろうか?
でもその二人がけの席には、三人で座る有様ではあるが…
その並んで座った三人のうち、残り二人は香港系の米国人カップルであった。
「私たちはNGOの仕事でアフリカで働いているの。私はコンゴ、彼はウガンダよ。」
休暇でエチオピアを訪れた彼らは、知り合いのエチオピア人夫婦とともにティシサット村を訪れていた。
「あなた、一人でエチオピアに来たの? 勇気があるわね。」
いや、勇気があるのはコンゴやウガンダで働いているあなた達の方ではないですか。
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バハルダールに戻り死ぬほど窮屈なバスから開放されると「一緒に食事しましょう。」と、NGOカップルたちとランチに向かった。
「僕たちは新婚旅行なんです。」
若いエチオピア人夫婦の方はハネムーン中だった。なるほど椰子の木が茂り、海ではないけど湖のあるバハルダールはエチオピアのハワイなのかも知れない。
そして、海なし国エチオピアで魚が食えるのはここバハルダールぐらいであろう。僕らは湖で獲れた魚のフライに舌鼓を打った。
しばし食事を楽しみ、そろそろお開きという頃になる。さてお会計と思ったらNGOカップルが、
「彼らは新婚だから僕らが払っておいた。ついでにキミの分も払っておいたよ」
ええ!! 新婚さんにあやかってオイラまで奢ってもらっていいのか。でもまあ払わんで良いというならありがたく好意に甘えてしまおう。新婚さんありがとう!!
こうして、ギオンホテルで手配したら$20(約1,700円)する青ナイルの滝ツアーの料金は、無料ランチ付きで、往復バス代と渡し舟代のわずか36ブル(約169円)で済んでしまった。ラッキー!!
狭い車内での修行に耐えた甲斐があったというものだ。
最終更新:2016年08月24日 09:58