【チップと値切りのエチオピア旅行】
第2話)ギオンホテルの攻防
《エチオピア旅行記|アジスアベバ|バハルダール|タナ湖|ラリベラ》
翌朝の早朝、国内線でアフリカで三番目に大きいタナ湖の畔の街・バハルダールを目指す。飛行機ならわずか一時間弱のこの道のりも、バスで行くとなると一日半かかるが、エチオピアの旅は空路も曲者だ。
何しろ空港検査が厳しい。空港の建物に入る前に一回、そして搭乗の際にもう一回と、二度もセキュリティーチェックが入る。それも靴は脱がせるは、ベルトを外させるはと徹底してるからやたら時間がかかる。国内線といえど出発一時間前の空港着では乗り遅れかねない。
朝まだ暗いアジス空港、建物に入る前から荷物検査で長蛇の列
そんな厳しいチェックをくぐり抜け、僕は一息入れようとリュックを探る。あっ、ミネラルウォーターがあった。そしてグビっと飲み干したところで気がついた。
むむむ、なんでここにペットボトルがあるんだ?
あんな厳しいチェックを受けたのに、没収されずここにある? エチオピアのセキュリティーチェック、それは厳しいのではなく、厳しいふりをしてるだけではないか!!
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バハルダールの空港に着き、街中までのバスを探す。しかし、駐車場にあるのは各ホテルの送迎バンばかり。乗り合いの公共交通機関というものが見当たらない。
「お前、どこに行くんだ」
「街中の安い宿まで」
「そうか、じゃ乗っていけ」
と、あるホテルの送迎車に便乗させてもらった。
湖畔に開けたバハルダールへの道は椰子並木が美しく、リゾート感に溢れ、気分がウキウキしてくる。
車は10分程走ると、ちょっと埃っぽい通りに面した、ゲストハウスの看板を掲げたビルの前に停まった。
「ここは安い、一泊400ブル(約1,880円)だ。」
400ブルはまあまあだが、ここはどこだ。ガイドブックを見てもこのゲストハウスの名前は見当たらない。街中から遠い不便な場所だったら嫌だ。そして更に、
「ここまでの車代として200ブル(約940円)!!」
なにぃ。200ブルも請求するのか、このボッタクリめ。僕は他の乗客に聞いてみた。
「皆さんはバス代をいくら払ってるのですか?」
「俺たちはこの送迎バスのホテルに泊まるからタダさ。」
なにぃ。タダだと。よし!
「分かった、じゃ僕も同じホテルに泊まるからバス代はタダにしろ!!」
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こうして、着いたのがギオンホテルであった。
実はこのホテル、今はかなりくたびれてしまったが、政府系の老舗ホテルで、各種ツアーの手配もできる。値段もそんなに高くないと聞いていたので、候補にしていた宿の一つであった。
フロントで宿泊代を聞いてみると「一泊$50(約4,250円)だよ」と、ガイドブックにある値段より相当高い金額を吹っかけてきた。
「それは高すぎる。正式な料金表を見せてくれ。」
「今はハイシーズンだ。でも$30(約2,550円)にまけてやる。」
レセプションの担当は一切料金表の類を見せることなく、依然として高い金額を主張し続ける。
こちらとしては、ここに来る前に紹介されかけたゲストハウスの400ブル(約1,880円)程度には抑えたい。かと言ってこのギオンホテルに泊まれず、車代を請求されるのも避けたいし、、、
「じゃ、一泊$25(約2,125円)で、二泊。合計$50でどうだ。」
と僕は切り出した。するとフロントはしぶしぶ伝票を切る。ふふふ、まぁ勝利といえよう。
しかし、これで勝った! と思ったのが甘かった。
「やぁ、中国人。あっ日本人か。ツアーに行こう。合計$40だ。タナ湖クルーズ$20、青ナイルの滝$20だ。お得だろ。」
まるでノルマに追われる保険や土地活用の営業マンのごとく、ことある毎にツアー勧誘が始まった。
ギオンホテルとの攻防は始まったばかりだった。
最終更新:2016年08月24日 09:57