【チップと値切りのエチオピア旅行】
第1話)Z⇒D⇒G
《エチオピア旅行記|アジスアベバ|バハルダール|タナ湖|ラリベラ》
「あれっ、迎えのゲストハウスの従業員はどこにいるのだろう?」
雪の北京を深夜に発ち、僕は早朝のアジスアベバ空港に降り立っていた。初めてのエチオピア、初日ぐらいは日本から宿を予約しておこうと、ネットで評判の良かったZゲストハウスに予約を入れた。だが満員で、代わりに紹介されたのがDゲストハウス。一泊$30(約2,550円)とエチオピアにしては割高だが、空港への送迎付だというのでそのDゲストハウスを申し込んでおいた。
到着ロビーには客の名前を書いた紙を手にした迎えのスタッフが何人もいる。しかし、僕の名前を掲げた者は一人もいない。スタッフたちは目当ての顧客を見つけると次々と空港を後にして行き、いつの間にかぼくひとりが空港ロビーに取り残されてしまった。
おかしい、なんでDゲストハウスのスタッフはいないのだ!!
一応念のため携帯は持ってきたが、海外での通話はとてつもなく高額になる。これを使うのは命に関わるような緊急時のみと決めていたので、なんとか自分の携帯を使わず電話できないかと思案をめぐらす。
おや、出口に観光案内所があるぞ。そこの電話を借りちゃえ。
事情を説明すると、職員は自分の携帯を貸してくれた(当然しっかりチップをねだられたが…)。
「今、空港なのですが、」
「分かった、すぐ行く」
とやってきたのは、Dゲストハウスではなく、Gゲストハウスのスタッフだった。
「なんでGゲストハウスなの?」
「いや~Dゲストハウスも満員なので、うちになりました。」
Zゲストハウスへの問い合わせがDゲストハウスに変わり、いつの間にかGゲストハウスにすり替わっていた。客の意向を無視して勝手に変更されてしまったが、まぁここはアフリカ、良しとしよう。
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こうして、連れて行かれたGゲストハウスは当りだった。できたばかりでとても綺麗。そして宿のあるウラエル地区は新興開発エリアとして発展しつつあり、レストランやカフェも適度にそろっている。それでいて、まだツーリスト相手にワルサを企む輩がいないのがよい。
宿に着くと古くからの繁華街・ピアッツァに出かけたのだが、そこでスリにリュックのジッパーをこっそり空けられヒヤッとしたりしたのだが、ここウラエルではその心配もない。
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夜、宿近くのレストランで名前のよく分からないエチオピア料理を頼んでみた。
「うわ、これ生肉じゃないか!!」
思わずそのユッケのような生肉料理に驚きの声をあげると、隣席のエチオピア人たちが次々に声をかけてきた。
「どうした。ああそれはクットフォだ。外国人にはだめだな。火を通してもらえ。」
「お前は日本人か? 中国人か?」
「ま、こっちに来て一緒に飲もう」
何だかワケが分からぬうちに、気づくとこのエチオピア人たちと一緒に飲み始めていた。
「お前はアジスに十年以上住んでるように見える」
何を言う、まだ十時間しか住んでいないぞ。ともかく何を話していたのかよく覚えていないが、他愛もない話題で盛り上がっていった。
しかしその中でちと気になることが…
彼らのところには入れ代わり立ち代わり友人が訪れ、ビールを引っかけ帰っていく。むむむ、ここのお勘定はどうなるんだ?グチャグチャじゃないか。最後に誰もいなくなって「じゃ、お勘定よろしく」ってな事になっちまうんじゃないだろうな!!
そんな不安を抱えつつ、ワイワイやっていた。そして、いよいよお開きとなった段階で、伝票を渡された。
「あっ、それお前の分」
おやっ、渡された伝票はきっちり僕が飲み食いした分だけだ。意外にちゃんとしているではないか!! エチオピア人。
これは旅の初日から良いスタートだ。明日からの旅にもさらに期待が持てそう。ヨシヨシ。
最終更新:2016年08月24日 09:56