【台湾の中心で、暑いと叫ぶ―南投県の夏旅】
第6話)レベルの低い達成感
||台湾|日月潭|慈恩堂|の旅行記||
清境農場(チンジンノンチャン)で無残な敗北を喫した翌日、レイクリゾートの日月潭(リーユエタン)に向かった。今日は台湾随一の景勝地でいい思いをして昨日のリベンジをしてやる。
「湖畔にある慈恩堂(ツーエンタン)という塔からの見晴らしが最高です。ちょっと歩きますが、ぜひお勧めします。」
とゲストハウスのオーナーは穴場スポットを教えてくれた。なんだか楽しみである。
レイクリゾート日月潭(リーユエタン)の水社(シュイシェ)地区
埔里(プーリー)からのバスは30分程で日月潭(リーユエタン)の中心地・水社(シュイシェ)に到着。辺りはホテルや土産物屋が立ち並び、なるほどオイラの懐に見合った激安宿がないのも納得だ。
まずは湖畔で遊覧船のチケットを買う。ルートは、原住民部落である伊達邵(イターサオ)地区、眺めが良いと薦められた塔への入り口となっている玄光寺(シュェンクゥァンスー)地区と周って、水社(シュイシェ)に戻ってくる。
さっそく船に乗り込み伊達邵(イーターサオ)で下船。ここには原住民文化のテーマパーク・九族文化村に向かうロープウェイ乗り場もある。しかし夏休みのせいかロープウェイは長蛇の列で、しかも料金が700元(約2,000円)近くもする。高い!! なのであっさり諦め、原住民料理店でランチをとった後、再び船に。
ロープウェイは諦め、原住民ランチを-伊達邵(イーターサオ)
船上からは、ゲストハウスオーナーお勧めの塔とその手前の通過点となる寺院が山中に小さく見えた。ありゃりゃ、あそこまで歩いて登るのは結構大変そうだゾ。
玄光寺(シュェンクゥァンスー)地区に着くと、寺のお堂は船着場の目の前なので大勢の観光客でごった返していたが、ここから山道を登り、慈恩堂(ツーエンタン)の塔を目指すツーリストは殆どいない。
塔にたどり着くためには、まずは山腹にある寺院に登らねばならない。時折小雨がちらつく登山道は、雨が止むと真夏の太陽の照り返しが地面の水分を強烈に蒸発させ、異様に蒸し暑い。やっとのことで山腹の寺院・玄奘寺(シュェンサンスー)にたどり着くともう汗でドロドロだ。
だがしかし、ここはまだまだ通過点。さらに気合を振り絞り、最終目的地の慈恩堂(ツーエンタン)に向かって、またもや急な山道を登って行く。
あれれ、土砂崩れだ。
何だこの道は、観光客に全然やさしくないゾ!!
と、かれこれ一時間あまり大汗かいて山頂の慈恩堂(ツーエンタン)にたどり着くと、聳え立つ見事な塔にしばし感動。そして最後の気力を振り絞って塔内部の階段を登り切る。するとどうだろう、見事な日月潭(リーユエタン)湖畔の絶景が目の前に。
「ここからの眺めは最高です」と勧めてくれたゲストハウス・オーナーの言葉は本当だった。
慈恩堂(ツーエンタン)とそこからの日月潭(リーユエタン)湖畔の絶景
しかし、それ以上に心が震えたものがある。塔内の鐘である。苦労して塔の天井まで登った者のみ鐘が突ける。僕はゆっくりと鐘突き棒の綱を引き、鐘に当ててみた。すると、
グワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワ~ン
鐘の音の衝撃波が塔内に響き、反射した細かい振動が僕の体をビリビリ揺さぶってくる。今、僕は音を「聞く」のでなく「体感」している。こんな神々しい経験は初めてだ。苦労してこまで昇ってきた甲斐があったというものだ。そして妙な達成感から思わず「超気持ちイ~」と感じてしまった。
だが待てよ。
「超気持ちイ~」は、某・五輪金メダリストが偉業を達成した際に発した名言だ。それと同じ感覚を、たかが塔に登ったくらいで感じてしまうなんて、、、 オイラの達成感のハードルはなんと低レベルなのだ!!
最終更新:2016年08月27日 00:22