【世界経済を回せ!―復興祈念? 台湾の旅】
第3話)冷たい温泉
||台湾|台北|蘇澳|平溪|十分|九份|の旅行記||
南方澳で腹ごしらえを済ませ、蘇澳に戻る。蘇澳には世にも珍しい温泉が存在することで有名だ。その奇泉とは何と「冷たい温泉=冷泉」である。「冷たい温泉」とは存在そのものが矛盾を感じるが、要は温泉の効能成分を含んだ泉が約22度と冷たい状態で湧き出しているということだ。
当然、街はこの冷泉を観光の目玉として売り出しており、市街には冷泉公園なる屋外プールのような施設を構え、煉瓦作りのレトロな入り口が情緒を醸しだしている。
4月~10月がシーズンであると事前に調べてあったので、GWの今は問題なく冷泉浴が楽しめると期待していたのだが、日頃の行いが悪いせいであろうか、今日は小雨交じりの曇天であった(というか、今回の台湾滞在中は毎日がこんな天気だった…泣)。
せめて公園内部の写真でも撮っておこうと進入を試みるも「入場料を払いなさい」と係員に注意されてしまう。
こんなくそ寒い日に冷泉に浸かる気など起こるわけがない。せっかく蘇澳くんだりまで来て、残念ではあるが風邪をひいてはたまらないので諦めることにした。
で、しばし蘇澳の街を探索するのだが、冷泉がなければここは何の変哲もない田舎街。冷泉に次ぐ名物としてはこの鉱泉を利用した天然ラムネ「弾球汽水」があるくらいだ。
因みにこの天然ラムネ、日本時代からの名物で戦前の「"日本"全国博覧会」で銀賞を授賞したのだという。とりあえず飲んでみたがおいらの違いの解らない舌ではどこが銀賞なのかさっぱりわからなかった。まぁ気分、気分。
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しかし、せっかくここまで来たのだから、やはり冷泉に入らないのは何かに敗北したようで悔しい。取りあえずちょっとだけでも浸かってみようと、海パンを持って再び冷泉公園に向かってみる。
すると先ほどは誰もいなかった公園に、今度は何人かが足先だけ浸かって楽しんでいるではないか。これはとても心強い。こんな寒い日に金を払って冷たい水にたった1人で身を浸すなんてバカとしか言いようがない。
そんなバカが自分だけでないと分かると、自分の行為は間違ってないと勇気みたいな気持ちが起きてくるから不思議だ。
僕も取りあえず足先だけ水に浸けてみる。
ギョエー、冷たっ!
やはりバカな行為はバカであった。全くわざわざ台湾まで何しに来たんだ、僕は。
よく見ると冷泉からはボコッボコッと炭酸の泡がところどころから吹き上がっている。ガイドブックによれば、初めは冷たく感じるが、我慢して浸かるうちに温まってくるのだという。ウソつけ、誰もこんな冷たい泉になんか浸かってないじゃないか!
いや、浸かっていた。
泉の奥の方で中国語の会話が聞こえた。近づいてみると台湾のオバチャンが二人、大胆にも全身泉に浸かって水着ではしゃいでいるではないか。
ええい、こうなったらオイラも参戦だ。
心臓マヒにならないよう、ちょっとずつ水に浸かる。ひえ~、全然寒いじゃん。でも待て、世の中には正月の海に飛び込んで身を清めるおめでたい人や、氷の張るロシアの湖で寒中水泳するバカ者だっているのだ。水温22度なんてかわいいものだ、と自分を奮いたたせ何とか肩まで浸かる。
すると泉の炭酸成分の効能であろうか、慣れてくると確かにそんなに冷たく感じない。否、冷たく感じないと信じたい。だってせっかくここまで来たのだから。
でも、ホントに冷たくなかったのかといえば、それは、鳥肌立ちまくりの僕の皮膚が真実を語っていた。 ハックション!
最終更新:2016年08月27日 00:49