【世界経済を回せ!―復興祈念? 台湾の旅】
第2話)代客料理ってナンだ?
||台湾|台北|蘇澳|平溪|十分|九份|の旅行記||
翌朝、台湾北東部の蘇澳を目指しバスに乗り込む。蘇澳にはちょっと珍しい温泉があるのと、台湾最大級の魚業の街・南方澳が近く、海鮮が楽しめるというので行ってみることにした。
近年、この地方と台北をつなぐ自動車トンネルが完成し、それまでの山を迂回する電車にくらぺてグッとアクセスが楽になったそうだ。そのトンネルを抜けると車窓は水田地帯に一変し、時折カラフルなカカシの群れが表れ、旅人の目を楽しませてくれるが、あいにく天気が小雨交じりなのが残念だ。予報では僕の滞在中、ずっとこんな天気だという。
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発達した台湾の交通網のおかげで、ともかく昼過ぎにはもう蘇澳に到着してしまった。とりあえず駅前の宿に荷を下ろし、海鮮を目指し、ローカルバスで南方澳へ向かう。
「トゥエンティ スリー(23元)」
と、英語で運転手は中国語の解らない僕に運賃を告げたので、25元を料金箱に投げ込む。すると、、、、お釣りが出てこない。
「ノー チェンジ」
あちゃー、お釣りが出ないのか、台湾のバスは。
しかし、料金箱の周辺をよく見ると悠遊卡のマークが!
ここ台湾でもICカードの電子マネーが普及していて、台北地下鉄の悠遊卡は、国鉄やコンビニでも使える。なので空港に着くなりすぐさまそれを調達しておいたのだが、蘇澳のローカルバスでも使えるとは知らなかった。お釣りが出ないなら悠遊卡を使ったのにぃ!
少し運転手に掛け合ってみたがお釣りは戻らず、結局2元(約6円)の損失である。まあ良い、それだけ余分に世界経済を回したと思うことにしよう。
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南方澳は凹字型に港を囲んで街が発展している。港の両岸には海鮮の店が軒を連ね、どことなく南仏のマルセイユを思わせないこともない。
しかし、南仏と決定的に違うのは、海鮮レストランと漁具の修理店が混在している点だ。芳しいシーフードの香りの隣で、船舶エンジンのオイル臭が漂ってくる。それはあたかも、この街は軟弱なツーリズムだけでなく本気で魚業で生きているんだぞ、と力強く宣言しているようにも感じられた。
港の端に魚市場を見つけた。太刀魚、平目、イカ、鱸、おやっサメだ、あっ、これはマンボウではないか! ---さすが台湾一の漁港、活気があって楽しい。
そんな市場の端の「代客料理」なる看板を掲げた屋台街の一角にいつしか迷い込んでいた。
「タベル、サカナ、オイシイ」
と、屋台の親父に誘われ、並んだ魚を選べという。
僕は、形は鯵だが色が鯛のように綺麗な魚を選んだ。2匹で200元(約600円)、1匹で150元(約450円)というので奮発して2匹頼んでみる。調理方法はスープにするという。
すると、待つことしばし現れたのは、なんと味噌汁!
外国のローカルレストランで味噌汁が出てくるとは想定外であったが、これも台湾ならでは。日本時代のDNAが残っているのだ。
新鮮な魚が2匹丸ごと入った味噌汁は味もボリュームも満点。しかも2匹は、それぞれ1匹が子持ち、もう1匹は白子と、見えないところで芸の細かい味を楽しませてくれた。この市場の屋台街はクリーンヒットである。
しかし看板の「代客料理」って何だったのだろう。帰国してから調べてみると、それは客に代わって料理すること。すなわち、市場で買った魚を持ち込んで食べられるシステムがあったということだ。
だったら、マンボウでも持ち込んで試してみればよかったと少々後悔するが、そもそも漁師と値段交渉できる中国語力が僕にはないし、第一1人でマンボウ1匹食べきれるわけがない。
せっかくのシステムではあるが、残念ながら初めからオイラには縁のない代物であった。
最終更新:2016年08月27日 00:47