【突然、南の島!-石垣・竹富いきなり旅行】
第3話)水牛の一生

||沖縄旅行記|石垣島|竹富島||

翌日、竹富島に向った。竹富は石垣から船でわずか10分で行ける小さな島だ。あまりの近さゆえ観光客のほとんどが石垣から日帰りで訪れるのだが、敢えて僕は一泊してみることにした。

竹富港
竹富港に到着

島の民宿に予め連絡しておいたので船の到着に合わせ迎えの車が来てくれていた。5分とたたぬ内に島中央部の集落に着く。

竹富は石垣と較べるべくもなく小さな島だ。とある民家に「島の人口347、犬29、水牛25、山羊35、牧場牛363」などと生き物の数が掲げられていた。この島でもし牛が選挙に立候補したら、人間は負けてしまうということだ。

竹富島の状況
竹富島の状況、2010


赤瓦の平屋家屋が立ち並ぶ集落を散策していると、なにやら動物臭が立ち込めてきた。おや、椰子の木陰にビーチパラソルが並ぶ広場があるぞ! あ!水牛だ! 水牛がパラソルの下で寝そべっている! 沖縄観光の案内で見かけるあの牛車引きの水牛だ。それが何頭も寝そべっている! ここは水牛車の機関庫か、壮観だなぁ。

水牛ステーション
水牛ステーション

これはお約束として乗らずにはいられまい。受付で切符を買うと、観光客8人を乗せ水牛車による集落一周の旅が始まった。

 「皆様ようこそ竹富島へ。これから水牛の満作(マンサク)君が皆様に島をご案内します。」

と水牛ドライバー兼ガイド氏が挨拶を始める。しかしこの満作(マンサク)君、今日は機嫌が悪いのか動きがかなり遅い。

 「どうした、満作(マンサク)君。ちゃんと進みなさ~い!」 
 「満作(マンサク)君、もしかしてオシッコか。ちょっと待て」

 「満作(マンサク)君はオスですから、時々こうしてマーキングをするんですよ。」

とガイド氏は牛車備え付けのバケツを我らが排気ガス0のエコエンジン・満作(マンサク)君の下に置いた。人の住んでる集落を巡る竹富島では、いくらエコでも垂れ流しはご法度なのだ。

 ジョボ ジョボ ジョボー

出すものを出しスッキリした満作(マンサク)君はのっしのっしと快調に牛車を引き始めた。

水牛車 水牛車
水牛車が長閑に集落を進む

 「皆さん、竹富島を散策して道に迷いませんでしたか?」

確かに竹富島は小さな集落なのにあるはずの場所に思うようにたどり着きにくい。それは何故なのだ?

 「この集落の道は風水に基づいて、微妙に曲がって作られています。地図では省略
 して直線で描かれてますが、実際には曲がりくねってるから、迷うのですよ。」

竹富島にはその昔、八重山を管轄する琉球王朝の出張所が設けられ、敵からの侵入に対抗するためこのような道作りが行われたのだという。これでは道に迷うわけだ。


 「この島の集落は保存地区に指定されています。そのため赤い瓦・木目調の壁・平
 屋建ての家、石垣の壁、砂の道が義務付けられています。」

 なるほど!見事に調和の取れた集落の景観はこうして守られているのか。

赤瓦の家屋 赤瓦の家屋
伝統的な赤瓦の家屋は、沖縄の原風景

ガイドの説明は、牛車の歩むような速さで聞くとより一層理解が深まり、面白い。

 「農耕用の水牛の寿命は15年ですが、ここの水牛は30年生きます。一日中農作
 業で酷使されるのに比べ、牛車で一日数回人を運ぶことなんて、水牛にとっては楽
 な仕事なのです。」

一見きつそうに見える牛車引きであるが、後で無人の牛車を引かせてもらったら、平地なら僕でも動かせた。これなら水牛にとってヌルい仕事なのも道理だ。

もし僕が水牛として生まれてくるなら、絶対に竹富の水牛となって"牛"生を全うしたいものだ。

 ♪シャンカ シャンカ シャンカ シャンカ

説明の合間にガイド氏は三線を奏でる。咲き誇る南国の花に陽の光が降り注ぎ、長閑な昼下がりが続いていった。


(続く)


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最終更新:2016年08月24日 19:36