【非常事★タイの、泰国東海岸】
第7話)陸の孤島
《タイ旅行記|パタヤー|チャンタブリー|ラヨーン|スワンナプーム》
今回は駆け足の旅である。明日はもう帰国日、フライトは朝10:20発だ。となると前日にはバンコクに宿を取っておいた方がよい。だが例の赤シャツ騒動で物騒な市内に泊まるのは難しい。そこで空港近くの宿を探してみた。
スワンナプーム空港にはNボテルという一泊1万5千円もする、文字どおり"ボッテル"ホテルしかないが、無論そんな所に泊まるわけがない。
いろいろ検索してみると、空港から車で5分のところにグレート・レジデンスという1800円で泊まれるホテルを発見。空港送迎も無料ということなので予約しておいた。
パタヤー11時発のベルトラベルのバスで出発すると、12時半には空港に着いてしまった。そして我がグレート・レジデンス・ホテルは、沼地をはさんで空港のフェンス越しにたたずんでいた。こりゃまるで金網越しに米軍基地と隣接する普天間第二小学校のようなロケーションだ。
そんなわけだからホテルの周りは何もない。あと半日どうやって過ごそうか? バンコク市内に遊びに行ってみたいという欲望の芽が頭をもたげたてくる。しかし、空港付近に配置された戦車を見るとそれも萎えてしまう。昨日まで旅した東海岸ではデモによる緊張など微塵も感じなかったのになぁ。
そもそもパタヤーから空港まで1時間半で到着できると分かっていれば、パタヤーにもう一泊しておく手もあった。だって、朝6時発のバスなら7時半には空港に着くから10:20発のフライトなんて楽勝だったのだ。
ああ、なんかもう考えるのが一挙に面倒くさくなってしまった!
おや、このホテル、プールがあるじゃないか! そういえばプール付きホテルって生まれて初めて泊まるような気がする(泊まったことあるのかも知れないが遠い忘却のかなたの話だ)。よし、今日はもうプールサイドで一日中昼寝だぁ。
1800円でプール付きならトランジットホテルとしては申し分ない。しかし昼間から泊まるとなると、ここは陸の孤島。観光客としては監獄にぶち込まれた気分だ。その監獄フィーリングをわずかに解消してくれるのがこのプール。もしこのホテルにプールが無かったら僕は発狂していたかも知れない。
ここは辺りに何もない陸の孤島。だったら発想を変えて「"ワン・アイランド ワン・ホテル"のモルジブみたいなリゾートだ!」と思えばいいじゃないか! そうだ、そう思い込もう・・・・(でも、それはかなり無理過ぎるアイデアであったが、、、)
プールサイドには同じようにヒマをもてあました外人が甲羅を干していた。僕はFさんからもらった文庫を読みながら時間を過ごしつつ、ホテル周辺を眺めていた。時折飛行機が空をかすめる以外、何もない田園地帯だ。
おや? プール脇の沼地に変なものがあるぞ。
恐る恐る近づいてみると、それは沼に仕掛けたフィッシングネットであった。オイオイ、こんなドロ~んとした沼で魚を捕るのかいな。それに、この魚網の仕掛け位置、ホテルのレストランの勝手口に異様に近くないか?
何故か沼に仕掛けられた、ホテルのフィッシングネット
もしかしたらこのレストラン、「捕れたての魚のフライ」なんてメニューがあるのかもしれない。
真相の程は定かでないが、ともかくその日の夕食に魚料理を注文する勇気は、さすがの僕も持ち合わせていなかった。
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ともかく、せっかく海外旅行に来たのに、今日は一日、空港脇のホテルで過ごさねばならなかった。もったいなかったなぁ。
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翌朝、無料送迎車で空港に向かう。僕は何気なくタイ人の運転手に拙いタイ語で聞いて見た。
「ในกรุงเทพฯ เสื้อแดง ยั้วเยี้ย ใช่ไหม่?」(バンコクは赤シャツでいっぱいでしょ?)
「โอ้ กลับบ้าน」(いや、家に帰ったよ。)
えって!「กลับบ้าน」(家に帰った)だと!
そういえば数日前に首相がなにやらテレビ演説していたが、あれでカタが付いちゃたってことか(※)。だったら昨日、バンコク市内に遊びに行けたじゃん。
と悔やんでも後の祭りであった。もう僕に残された最後のバカンスの楽しみは、1杯30バーツ(90円)のクワイティアオ(タイ・ソバ)を空港1階の従業員用食堂で賞味することだけであった。
トホホ~。
※ 後に詳しく調べたところ、5月3日の一斉放送を通じた首相提案を赤シャツ幹部は大筋で容認したものの、運転手と会話した5月6日時点に於いて、デモ隊は未だバンコクに残っていました。赤シャツ隊は「家に帰った」わけではなく、その後事態はさらに悪化、多くの死傷者を出してしまいます。微笑みの国にスマイルが戻ることを願って止みません。
最終更新:2016年08月26日 21:08