【メコン左岸にて-ラオス中南部の旅】
第7話)恐竜博物館
《ラオス旅行記|ビエンチャン|ヴァンビエン|ターケーク|サワナケート》
ターケークから更に南下ってサワナケートへ向かう。3時間ほどの気楽なバス旅と思ってターミナルに向かうが、様子がおかしい。バスっぽい車が見当たらない。おかしい!ここはバスターミナルなはずなのに。
「どこへ行くのだ。」
「サワナケートです。」
「そうか、じゃこれだ。」
と押し込まれたのがミニバン。そうこれがバスなのである。この手の交通機関は乗客が集まらないと出発しない。だが、15人乗りのバンはすぐに満員になった。ちと窮屈だなぁと思いつつしばらく走ると、急に停車した。何とこのバン、途中でさらに乗客を拾ってゆく。狭い車内はさらに狭くなる。結局停まっては拾ってを繰り返して、最終的には15人乗りのバンに24人が乗車していた。むろん3人掛けのシートに4人掛けは当たり前。中にはドア横の小箱に腰掛けざるを得ない気の毒の人も。
やっとの思いで、サワナケートに到着すると又も雨が降っていた。
この街もタ-ケーク同様、メコン川をはさんでタイのムクダハーンと接する国境の街であるが、近年メコン川をわたる第二国境橋が開通して、発展が期待される街だという。
しかし「発展」は期待に過ぎないことは、街を歩くとすぐに分かった。賑わっているのは、他のラオスのメコン川沿いの街同様、川岸のままごとレストランのみである。
とはいえ、この街にはユニークな観光施設が存在した。「恐竜博物館」である。「SCIENCE,TECHNOLOGY AND ENVIRONMENT AGENCY(科学技術環境庁)」なる名前だけは大変大きな建物に、それはそれはささやかにたたずんでいるのが「恐竜博物館」である。
博物館の玄関を開けると、案の定誰もいない。恐る恐る中扉を開けて展示室に入ろうとすると、「20バーツ!」と声がかかった。何だ営業してるんじゃん。
展示室に入るとそこには僕一人しかいなかった。脇の事務室には4~5人の職員が、遊んでるのか働いているのか分からんが、ともかくヒマそうに実存していた。
僅か1部屋の展示室には、恐竜の化石のかけらが展示され、あとは百科事典の挿絵を子供が描いたようなシュールな図があるくらい。すると、
「ウエルカム!」
と、いきなり偉そうな親父が表れ、頼みもしないのにあれこれ展示物の説明を始めた。どうやら館長様がヒマをもてあましてお相手を買って出てきたようだ。「No Open」と書かれた引き出しを開け「これはこうで、あれはああで」と館長様は得意げだが、僕は特段恐竜や化石に興味があるわけでもなくテキトーに相槌を打つ。
このままでは威厳が保てないと感じたのか、科学技術環境庁の館長様は奥の手とばかりに、とある電気のスイッチを押した。するとどうだろう。化石の周りに張り巡らされた電球が点灯し、恐竜のアウトラインが浮かび上がった。何だこの仕掛け!高校の学園祭の科学部レベルの展示じゃないか。
ラオスの科学技術環境庁はローテクで勝負!なのだ。
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最終更新:2016年08月27日 18:55