【お気楽ウズベキスタン旅行】
第6話)シュールな鉄道博物館

《ウズベキスタン旅行記|タシケント|サマルカンド|シャフリサーブス》

サマルカンドには4日連続で滞在したので、近郊も含めて見所はほとんど周ってしまった。なので、S木さんやU飼ちんより一足早くタシケントに戻ることにした。行きはバスでえらく時間がかかったから、帰りはすこし奮発して乗り合いタクシーを使った。今度はガイドブックどおり4時間程のイージードライブ。しかもホテル前まで行ってくれるので楽なことこのうえなし。

さて、ウズベキスタンの首都タシケントであるが、この街はとりえといえば馬鹿広いだけで、旧市街のバザールを除くとこれと言った見所に乏しい。とりあえず僕はトラムに乗ってタシケント中央駅に向かってみた。駅前ならいろいろ活気に満ちて面白いものがあるに違いないと思ったからだ。

タシケント タシケント市内a
これと言った見所に乏しいタシケント。

はたして中央駅付近は多くの人々が集まってはいるものの、それはそこが単にバスや地下鉄が交差するからで行き交う人も乗換え客ばかり。駅前はひたすら広いバスターミナルに過ぎない。こりゃがっかりだ。

それではこの先どうするかと、ガイドブックを取り出してみると「鉄道博物館」なるものが駅のはずれにあるようだ。子供のころ東京神田の交通博物館に祖父に連れて行ってもらったことを思い出した。あのときは館内のフロアいっぱいに敷き詰められた模型のジオラマにびっくりしたっけ。ではウズベキの博物館の方をちょっくらのぞいてみるか。

大通りをはさんで駅の反対側に車庫のような広場が見える。あれが博物館なのだろうか? 半信半疑で歩みを進めると、線路の上に野ざらしの機関車が沢山放置されていた。この状態を「博物館」と呼んでいいのであろうか? 

ともかくチケットを買って中に入ってみる。するとあるわあるわ、巨大な鉄の塊が 無造作に何両も。中には機関車というよりスクラップに近いようなものもあるが、いずれにしてもこんなレアなところを訪れる者など皆無に等しく、僕以外には親子連れが2、3組いるだけだ。

これがオババの我が家?-タシケント 放置された車両が鉄道博物館-タシケント
電車が放置されてるのではない。"博物館" なのだ。

人気のない線路脇を進んでいくと、一人のウスベク系オババが現れた。小柄なオババは手に箒を持って一台の客車の周りだけを掃いていた、まるでそこが我が家の庭であるかのごとく、、、。よく見るとその客車にだけ中古のエアコンが取り付けられ、ブンブンと鈍い唸り声を響かせていた。えっ、まさかオババよ、あんたこの博物館の客車に住み付いちゃ ってるの? なんともおおらかと言うか、、、、

こちらに気づいたオババが何やら現地語でまくし立てる。が、何を言ってるのか僕にはさっぱり分からない。ともかく客車に上がれと言ってるようだ。そこまでいう ならオババの「我が家」訪問といこうではないか。

脚立のような階段を登って、客車の中に入る。すると何のことはない。そこはオババの自宅などではなく、博物館の展示室兼事務所であった。そして奥の事務机には、小錦クラスのでっぷり太ったロシア系大オババが鎮座していた。

「おや、まあ。客が入ってきたわ、珍しい」といった顔の大オババはよほど暇をもてあましていたのだろう。格好の暇つぶしが舞い込んできたわいと得意げに展示パネルの一枚一枚をロシア語で説明し始める。説明してくれるのはいいのだが、こちらはロシア語のロの字も分からない。何を言っているのかさっぱり分からないのだが、分かったフリをしておかないとこの大オババ、大変不機嫌な顔をして最初から説明を始めなおすから始末に終えない。

やっとのことで大オババの説明攻撃を切り抜け外に出た。するとガサッガサッと木の葉の揺れる音がする。何だろうと目を凝らすと、先ほどのウズベク小オババが、線路脇の木を揺すって果実を振り落としていた。得体の知れない小粒の実がパラパ ラと地面に落ちる。

「ほら、あんた食べなさい」とオババは果実を拾ってくれた。すっぱいラズベリーのような味だった。でも博物館の内で勝手に「収穫」しちゃっていいのだろうか。なんだかとてもシュールな博物館であった。

(続く)


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最終更新:2016年08月27日 09:33